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» 2005年05月19日 17時02分 UPDATE

「儲からなくても、誰かがやらないと」――ITで障害者支援

「指点字」で会話できる機器やLAN経由で遠隔操作できる医療向けロボット。障害者や医療を支援する地道な取り組みが進んでいる。

[岡田有花,ITmedia]

 「障害者向け機器は、儲からないからどこもやらない。でも、誰かがやらないと、少数派が生きやすい社会にならない」――視聴覚障害者向けの文字入力システム「ユビツキィ」を開発した、日本エコロジーの横田和博社長は話す。

 同社は独立行政法人・情報処理機構(IPA)からユビツキィ開発の支援を受けており、IPAが研究成果などを発表するイベント「IPAX 2005」(東京ビッグサイト、5月20日まで)にユビツキィを出展。ビジネスの可能性を探っている。

yu_bizshow01_01.jpg ユビツキィ。赤外線でPCと通信する。「ユビキタスコンピューティング」と「指点字」から命名した

 ユビツキィは、視覚と聴覚両方に障害がある人がコミュニケーションするための端末だ。「指点字」という手指を使ったコミュニケーションを、機械を介して行うことができる。

 指点字は、2人で両手指を重ね、左右3本の指を打つことで点字を表現して意思を伝達するもので、通常の会話と同程度のスピードでコミュニケーションできるのが特徴だ。ただ1対1での対話しかできないのが難点。指点字を知らない相手とは、通訳者を介して対話するしかないが、通訳者は全国に数十人しかいない。

yu_bizshow01_02.jpg 指点字でコミュニケーションしている様子。6点から成る点字を、指で再現する

 ユビツキィを介せば、通訳者なしで視聴覚障害者と健常者が簡単にコミュニケーションできる。左手用・右手用端末それぞれに、4個のボタンとエンターキーを装備。「あ」を入力する場合は左手人差し指のボタンを押すなど、指点字のルールに従って各ボタンを押すと、赤外線でPCにデータを送信。入力した文字をPC上に表示したり、音声で読み上げられる。

 ユビツキィ同士の通信も可能だ。ユビツキィで文字を入力すれば、赤外線を通じて近くにある別のユビツキィのボタンが入力時と同じ強さと順番で震え、文字を伝えてくれる。Webサイトの文字を指点字化してユビツキィに送信するソフトも開発。指点字でWebサイトが読める。

yu_bizshow_01_03.jpg 操作は数時間で覚えられるという

 視聴覚障害者は全国に1万3000人いると言われている。専用商品の市場は非常に小さく「商売として見ると、製品化は不可能」(横田社長)と分かっていながら、5年かけて開発を続けてきた。

 もともと都市開発のコンサルタントをしていた横田社長。福祉機器とは無縁だったが、都市開発の仕事をするうち「行政の政策はいつも多数派向けで、少数派が無視されている」と痛感。ちょうどその頃、千葉大学で福祉工学を研究する市川熹教授に「視聴覚障害者向けの情報通信装置を開発して欲しい」と頼まれ、開発を始めたという。

 機器はまだ手作りでコストがかかるが、市場が小さいため量産設備を作る訳にもいかないのが悩みだ。ゲーム向けなど他分野での活用も検討しているが「なかなか難しい」(横田社長)。

「テプラ」で点字印刷 PC用プリンタと差別化

 IPAXと同時開催している「ビジネスシヨウ2005」(東京ビッグサイト、20日まで)のキングジムのブースでは、ラベルライター「テプラ」に点字印刷機能が付いた新製品「SR6700D」をアピールしている。

 テプラの最上位機の機能に、点字印刷機能を追加した。入力した文字を、点字に翻訳して印刷できる。

yu_bizshow_01_04.jpg SR6700D,,文字を入力し、右上にある点字印刷機に専用テープを挿入すれば、点字を印刷できる

 点字印刷機は10万円程度で市販されているが、SR6700Dは4万5150円(税込み)。「本体だけでは利益が出ない」(説明員)が、ラベル販売から利益を得る計画。点字対応ラベルは通常ラベルの約5割増しの価格で販売する。

 テプラで点字印刷したいという声は従来からあったというが、このタイミングで製品化したのは「今、社会が急速にノーマライゼーションに向かっていて、需要が高まっている」(説明員)ため。PC用プリンタと競合し、5年ほど前から頭打ちになっているというテプラの売り上げテコ入れを図る。

医師が家から患者対応 ロボットで遠隔医療を

 ビジネスシヨウ会場で、大人の女性ほどの大きさのロボットが動き回っている。ケーテック販売する米国製ロボット「InTouch Health RP-6」で、頭部のカメラ、ディスプレイと、マイクや赤外線センサー付きボディ、車輪部から成る。ディスプレイ部は左右に回転可能。本体下部にPCをまるごと内蔵しており、外部のPCと無線/有線LAN接続して遠隔操作できる。

yu_bizshow_01_05.jpg PCに接続したジョイスティックで操作する

 医師が自宅PCから入院患者の様子を見たり、看護師に治療方針を伝えるために開発された。「米国は、医師の家から病院まで車で何十分もかかかるのが普通。夜中に急患が出た時でも、家にいながらナースに指示を出せる」(説明員)。米国では病院での実証実験も始まっている。

 国内では、病院や原子力施設の監視用途などの需要を期待する。価格は操作用PCとセットで1000万円程度。

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