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» 2005年06月07日 15時42分 UPDATE

ジョブズ氏はなぜ「Intel Inside」を選択したのか?

WWDCでの基調講演の後、ジョブズCEOはインタビューに応じ、IBMとの関係やIntelとの製品開発の可能性について語った。

[John G. Spooner,eWEEK]
eWEEK

 Appleは6月6日、Intelプロセッサへの移行を発表し、世界中の注目を集めた。

 米Apple Computerの最高経営責任者(CEO)スティーブ・ジョブズ氏は6日、サンフランシスコで開幕した同社のWorldwide Developer Conference(WWDC)の基調講演で、2006年までに自社システムのIntelプロセッサへの移行を開始し、2007年までに移行を完了すると発表した。

 同氏は基調講演で、開発者やApple支持者らを前に、3.6GHzのIntel Pentium 4を搭載するPower MacでAppleの各種アプリケーションを動作させてみたり、Wolfram ResearchのMathematicaの移植の様子を披露してみせた。

 今回の移行は、Appleがしばらく前から秘密裏に進めてきた取り組みによって実現する。ジョブズ氏が基調講演で語ったところによれば、AppleのMac OS Xはこれまで秘密の二重生活を続けており、IntelとPowerPCの両プロセッサ向けにコンパイルされてきたという。PowerPCはAppleがMacに採用しているプロセッサ。現在はIBMのPowerPC 970FXが採用されている。同社は、まだしばらくはPowerPCの採用を続ける方針という。

 AppleはRosettaと呼ばれるダイナミック変換ソフト(ロゼッタストーンにちなんで命名された)を使って、PowerPCプロセッサ向けに設計されたアプリケーションをIntelプロセッサ搭載の各種Apple製品で動作できるようにする計画だ。

 またジョブズ氏は今回の決定の重要性をアピールすべく、Intel搭載のAppleシステムでAdobe SystemsのPhotoshopが稼働する様子や、MicrosoftのWordやExcelのファイルを開いた様子などを披露した。壇上には、AdobeとIntelのCEOも加わり、ジョブズ氏との関係をアピールした。

 Intel CEOのポール・オッテリーニ氏が「30年がかりで、ようやくAppleとIntelが手を結んだ」と語ると、Adobe CEOのブルース・チゼン氏は冗談めかして、なぜそんなに時間がかかったのかと尋ねてみせた。

 Intelプロセッサへの移行はAppleにとって180度の方向転換となるが、この移行により、Appleは自社の前進にとって必要な選択肢を得られることになる。そして結局、Appleはハードウェア関連の取り組みをしゃれたデザインの設計に集中させ、同時に、売り上げも拡大できるだろう。

 今回の決定に関して、ジョブズ氏はどのように説明しているのだろう? 同氏によれば、IBMのPowerPCプロセッサでは、電力消費の問題があり、望みどおりのマシンを構築できない。電力の点で、Intelが勝ったのだ、と同氏は説明している。Appleはしばらく前から、コードネームでMarklarと呼ばれる、Mac OS XのIntelプロセッサ向けバージョンの開発を秘密裏で続けている。

 ジョブズ氏は基調講演のあと、CNBC放送のインタビューに応じ、次のように語っている。「当社とIBMの関係は良好だ。IBMには製品ロードマップがある。今現在、当社は非常に優れた製品を提供している。だが将来的には、まだ幾つか開発したい素晴らしい製品構想がある。Intelプロセッサのロードマップは、そうした当社のビジョンに、ほかのどの会社のものよりもマッチしている」

 ジョブズ氏は具体的にどのような新製品を考えているかについては語らなかったものの、同氏のコメントからは、IBMのPowerPCロードマップでは、ノートPCや小型デスクトップPC向けのAppleのニーズに応えられないという考えが読み取れる。ノートPCと小型デスクトップPCでは、どちらも電力消費と放熱が重要なポイントとなる。

 ただしAppleは、長期的なプロセッサアーキテクチャの移行を計画している。同社はまだしばらくは、PowerPC搭載システムの提供を継続する方針だ。実際、ジョブズ氏によれば、Appleは近く、IBMの新しいPowerPCプロセッサを搭載した新しいMacを投入する計画という。

 eWEEK編集部はIBMにメールと電話で問い合わせたが、返答は得られなかった。

 アナリストによれば、IntelはAppleに、デュアルコアデスクトップPCプロセッサや、Pentium Mラインの低電力高性能プロセッサといった広範なプロセッサだけでなく、チップセットなど、各種のコンポーネントも提供できる。

 Mercury Researchのアナリスト、ディーン・マッキャロン氏は、「PowerBookラインの軽量薄型ノートPCや、Mac miniなどの小型デスクトップPCのような製品では、Pentium MがAppleの方針に最も合致する」と指摘している。

 Pentium Mは、Pentium 4やIBMのPowerPC 970FXほど高速には動作しない。だが、Intelのモバイルプロセッサは、使用する電力量当たりのパフォーマンスが優れている。Intelによれば、さらに来年には、デュアルコアバージョンの「Yonah」が登場し、Pentium Mラインの性能は一層向上する見通しという。

 今回の移行は、Appleにコスト削減をもたらす可能性もある。なぜなら、IntelがAppleにプロセッサを割引で提供すれば、Appleにとってはプロセッサコストを下げられることになるからだ。またIntelやそのパートナー企業は、チップセットなど各種の付随製品も提供できるため、Appleの設計コストの削減にもつながる、とアナリストは指摘している。

 さらにジョブズ氏はCNBCのインタビューで、両社が新種のコンピュータ製品の開発で提携する可能性もほのめかした。Intelは、例えばAppleの音楽プレーヤーiPodラインに採用し得る広範なプロセッサを販売している。

 開発者の間に不安を生じさせる可能性はあるものの、結局のところ、「Appleの1台のマシンを介して販売しているのは、プロセッサだけではない」とマッキャロン氏は指摘している。「どのような方法を使うのであれ、それなりのパフォーマンスが提供される限りは、問題は生じないだろう」と同氏。

 実際、ジョブズ氏は基調講演で「Macの真髄はOSにある」と語っている。

 ただしアナリストは、同社はその真髄を失わないよう注意すべきだと警告している。

 The NPD Groupのアナリスト、スティーブ・ベイカー氏は次のように語っている。「多くのAppleユーザーは非常に眼が肥えており、コンピュータの動作に敏感だ」

 「そうしたユーザーにとって、Appleは単なるコンピュータではない。誰もHPに夢中になったりはしないが、AppleユーザーはAppleに夢中なのだ。ほかのマシンと同じ3.6GHzプロセッサを搭載するつもりなら、Appleはハードウェアのアイデンティティーを失わないよう、慎重であるべきだ」と同氏。

 Intelプロセッサへの移行によって、Appleがより多くのビジネスユーザーにアピールできるかどうかも、現時点では不明だ。

 「この1年半の実際の状況はと言えば、Appleには、iPodや製品のデザインといった観点からの方が、より多くの注目が集まっている。Appleが新規顧客にアピールするためには、そうした姿勢を維持しなければならない」とベイカー氏は指摘している。

 「今回の移行により、ハードウェアに関しては、PowerPCへのフォーカスや、Apple製品とそのほか多数の製品との違いが薄れ、今後はソフトウェアにおける違いに、より大きなフォーカスが置かれることになる。ハードウェアに対する関心をOS対OSという状況に変えられるのであれば、Appleにとっては市場シェア拡大の格好のチャンスとなるかもしれない」とさらに同氏は続けている。

 Appleは今後、開発者に、両プロセッサに対応したユニバーサルバイナリ形式のOS Xアプリケーションの開発に取り組んでもらうことになる。

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