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クローン猫のGenetic Savings、次はクローン犬

» 2005年06月28日 13時59分 公開
[IDG Japan]
IDG

 市場に製品を出していない、というのが先駆的なバイオテクノロジー企業に関してよく聞かれる不満だが、カリフォルニア州ソーサリトに本拠を置くGenetic Savings & Cloneは、なでるとのどを鳴らす炭素ベースの製品を販売している。同社のロウ・ホーソンCEO(最高経営責任者)によると、次の製品はほえるそうだ。

 「犬のクローン作成は、うまくいけばわれわれの2005年の最大のブレークスルーとなる」と話すホーソン氏は、昨年クローン犬を完成させたかったと認めた。「われわれは毎週胚を作り、代理母が用意できたときにそれを移植している」

 ホーソン氏は富豪のジョン・スパーリンガム氏とパートナーを組み、同氏から1500万ドルの投資を受けている。自社サービスにクローン犬を加えられれば、IPO(新規株式公開)の可能性もあるという。

 Genetic Savingsはコンシューマー市場にクローン技術を応用していることから、かなりの物議を醸している。同社は、顧客のお気に入りのペットのクローン(つまり「遅く生まれた双子」だ。クローンは時折こう表される)を作るために、「数百匹の」猫と犬の生体組織を冷凍保存している。

 「ジーンバンクの犬のほとんどは雑種だ。飼い主は自分の犬がどの種に由来しているのか知らないことが多い。血統書付きの犬の遺伝子を保存して発生させるのがより簡単で信頼できる伝統的な方法だ」と同社コミュニケーション担当副社長ベン・カールソン氏。

復活ではない

 動物の遺伝物質を保存するために、獣医は皮膚と口内の細胞のサンプルを採取する。その動物が死んでいる場合、生きた有機組織から採取した生体組織なら何でも利用できる。冷凍保存されたサンプルは、ウィスコンシンにあるGenetic Savingsの研究所に送られる。顧客は前金として295〜1395ドルを支払い、年間100〜150ドルの保管料を払う。クローン猫の作成が成功した場合のコストは3万2000ドルだが、犬の場合はもっと高くなるかもしれない。「2〜3回実施するまでは、コストは分からない」とホーソン氏。

 もちろん、クローンは死んだペットと同じ性格ではないし、記憶も共有しない。「永遠の生命や復活を提供するものではない」とカールソン氏は語り、ロサンゼルスのPerPETuateや破綻したLazaron BioTechnologies(この社名は聖書のラザロの復活に由来する)などの現あるいは元ライバルがあおった誤解についてほのめかした。

 しかしGenetic Savingsは、ペットの死を嘆く顧客への接し方について獣医向けに提供している情報の中で、永遠の生命を求める思いについて記している。「たとえ(顧客が)クローンを作らないと決めた場合でも、一部の顧客にとっては、遺伝子の保存が心の平穏をもたらす」と同社のWebサイトにはある。

倫理の問題

 同社は2001年、初のクローン猫を生み出し、ニュースの見出しを飾った。テキサスA&M大学の提携研究者は、メディアの注目に恐れをなして逃げてしまった(ただし、同校の研究者は2005年4月にコンサルタントとして馬のクローン作成に参加した)。現在、同社は独力でウィスコンシンのクローン施設を所有・管理している。

 最初のクローン猫は、テキサスA&M大学で(クローン羊のドリーと同じ)核移植法を使って作られたが、ウィスコンシン研究所ではクロマチン移植法を用い、動物の細胞に前処理を施して細胞分化に関連した分子を除去している。

 同社はまた、卵子と胚の評価技術を使い、生存可能な最適な発育ポイントでクローン犬の胚から細胞を取り出している。ホーソン氏は、「これらの技術でより高品質な胚を生み出せる。自力で生きられない胚を代理母に移植するのではないため、効率が高まる。これは倫理的にもビジネス的にもプラスになる」と話す。

 ペットクローン事業の唯一の生き残りであることから、Genetic Savingsはペットクローンに反対する団体やメディアから非難を受けている。同社はそうした批判をそらし、倫理に関するディスカッションフォーラムを設置し、映画「シックスデイ」「クローンズ」に言及したり、独自のバイオ倫理規範を提示している。

 ホーソン氏は、こうした初期の批判の一部を受け入れている。同氏は、「われわれは批判を聞き入れ、ポリシーとメッセージの両方を変えている」として、代理母を卵子提供者としている点を例に挙げた。「今年は体外受精卵へと全面的に切り替えているところだ」。これらの卵子は不妊手術を行う病院から購入する。こうした手術ではたいてい卵子を捨ててしまう。

 先だっては、カリフォルニア州でのクローンペットの販売・譲渡を禁止する法案(AB1428)が無効になったときに、Genetic Savingsがソーサリトに本拠を置いていることに厳しい目が向けられた。批判派は、毎年多数の動物が安楽死させられる世の中において、ペットのクローン作成は不必要な科学領域に踏み込むものだと批判している。この法案は来年また提出されるだろう。

 同社は、第3の種の商用クローンを年内に披露すると話している。ホーソン氏はそれについて固く口を閉ざし、「場合によってはペットにもなる種だ――わたしにはそれだけしか言えない」と語った。

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