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“Googlezon”時代のビジネスモデルとは

» 2005年07月06日 21時06分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 Googlezon時代、ネット企業の二極分化が進む――野村総合研究所(NRI)がこんな見解を示した。Googlezonとは、GoogleとAmazonを統合した架空の企業で、個人情報をがっちりつかみ、ユーザーの窓口になる有名企業だ。集客力を持たない企業は、Googlezonにサービスを提供する「イネーブラー(Enabler)型」となり、ポイント制を活用してGooglezonと連携していくという。

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 Googlezonは、2004年にWeb上でジョークムービーが公開されて話題になった架空の会社。「2015年までにGoogleとAmazonが合併して“Googlezon”となり、個別にカスタマイズしたニュースを配信してNew York Timesを追い散らす」というストーリーで、マスメディアの終えんと次世代メディアの可能性を示唆している。

 「GoogleとAmazonが一緒になると、個人の行動が過去から将来まで見渡せる」とNRI情報・通信コンサルティング部の吉川尚宏部長は話す。Amazonからは購買履歴や買い物のクセという過去が、Googleの検索ワードからは、ユーザーが今何に興味を持ち、何をしようとしているかが読み取れるという訳だ。「例えば私が『愛知万博』を検索すれば、この週末にでも愛知万博に行こうとしていると分かる」(吉川部長)。

 Googlezon型は、ユーザーの個人情報をつかみ、ユーザーと定期的に接点を持っている企業。例えば、携帯電話会社や電力会社、マイレージ会員を抱える航空会社、Yahoo!や楽天といったポータルサイト、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)などはすべてGooglezon型になりうる。

 イネーブラー型は、Googlezon型のバックエンドでサービスを提供して利益を得る。製造業でいうOEMのような役割だ。

 全日本空輸(ANA)のWebサイト上で住宅ローンを販売するスルガ銀行はイネーブラー型の典型例だ。ANAサイト上の「スルガ銀行ANA支店」は、ANAと提携したキャッシュカードを発行したり、マイレージが貯まる住宅ローンなどをWebサイト上などで提供してきた。

photo スルガ銀行ANA支店

 吉川部長によると、スルガ銀行は実店舗では西を静岡銀行に、東を横浜銀行に押さえられ、顧客基盤の拡大が難しくなっていた、という。ネットに活路を求めたものの、独自サイトにはなかなか人が集まらなかった。ANAと提携してブランド力やサイト集客力を活用し、顧客数拡大に成功したという。

 ネット単体のビジネスで成功するには、プロモーションに莫大な費用が必要なことが多い。プロモーションにあまりお金をかけられない中小企業がイネーブラー型に次々と変わっていくのではと、吉川部長は予測する。

photo ネット直販で成功しているデルは、プロモーションに平均の10倍程度の費用をかけている

 Googlezonとイネーブラーをつなぐキーとなるのが「企業通貨」――ポイントやマイレージだ。ANAとスルガ銀行の場合は、ANAが発行するマイレージをスルガ銀行が買い取り、スルガ銀行のユーザーに特典として付与している。

 ポイント制も同じ仕組みだ。Googlezonがポイントを発行し、イネーブラーが買い取って顧客に付与する。イネーブラーは、有名企業のポイントを付与することで、ブランド感やユーザーのおトク感を高める。

photo マイレージは、ユーザーにとっての価値と原価の差が特に大きいため、ポイントビジネスが有効に作用するという

 企業通貨には複数企業が参入し、囲い込みが進んでいる。マイレージならANAやJAL、ポイントなら楽天やヤフー、TSUTAYAなど、それぞれがデファクトスタンダードを目指して領土を広げている段階だ。

 これまで広告代理店が一括徴収していた広告宣伝費や、メーカーが流通業者に支払っていた販促費が、ポイントやマイレージに形を変えて個人ユーザーの手元に環流してくる――ネット利用やECが活発化するなか、こんな流れが見えつつあるようだ。

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