“落ちる”のはOSだけじゃない──ネットワーク時代に増大する雷リスク
「カミナリ様の付け入るスキが増している」――社会のIT化・ネットワーク化が進むにつれ、雷による異常電圧「雷サージ」の侵入経路が増え、被害は複雑で深刻になっている。対策は必須だが、100%安全と言い切れる対策はないのが現状だ。
国土交通省が所轄する「雷害リスク低減コンソーシアム」がこのほど、「雷害リスク低減普及セミナー」を秋葉原クロスフィールドで開き、雷害の実態と対策を話し合った。
雷による被害は、減った分野と増えた分野がある。減った分野は、電源だけで作動する家電などだ。メーカーによる機器側の雷対策が進んだ上、電力会社の対策も進化し、落雷による停電の回数も減ってきた。
被害が増えているのは、電話やファクス、ネットにつないだPCといったネットワーク機器だ。電源線と通信線につながっており、片方で対策をしていてももう片方からサージが入り込んで壊れてしまうことが多いという。IT化が進み、ネットにつながる機器が増えれば、被害の拡大も予想される。
PCなど精密なコンピュータは、雷サージに特に弱い。わずか20ミリ秒、30%の電圧変動が命取りになると言われており、ちょっとした雷でも故障したりデータが飛んでしまう危険性がある。企業や公的機関の基幹コンピュータなら、1台の故障がシステム全体に悪影響を及ぼすこともあり、対策は必須だ。
「『雷で停電したから、宿題ができなかった』程度の被害で済んだ時代ではなくなっている。雷対策はリスクマネジメントの視点で考えるべき」――妹尾堅一郎東京大学特任教授は、雷も経営リスクと指摘する。
「対策に100%はない」
雷の実態は分からないことが多く、“雷予報”も難しい。気象庁予報部の高瀬邦夫主任予報官によると、気象庁は雷を起こしやすい強い積乱雲の動きを追うことで、1時間後までの雷を予測している。しかし普通の雲も10分程度で積乱雲に変化するほか、積乱雲以外も雷を起こすといわれており、予測は困難だ。
完璧な雷対策も存在しないのが実情だ。対策機器を上手に選べば、90%程度までの対策は可能というものの「『これを使えば被害を100%防げます』という雷害対策機器のセールスマンがいたら、疑ってかかったほうがいい」と横山茂・九州大学大学院総合理工学研究院教授は話す。
雷は季節や地域によって差があり、それぞれの特性に合った対策が必要になる。また、弱い雷と強い雷の電流差は100倍もあり、中程度の雷にあわせた対策をしても強い雷には対応できない。どこまでの対策が必要か考えた上で機器を選ぶことが重要という。
雷の侵入経路を管轄する省庁がそれぞれ異なり、包括的な対策基準作りも難しい。通信なら総務省、電源設備なら経済産業省、避雷針接地基準なら国土交通省の管轄だが「雷は省庁ごとに分けて侵入してくれない」(佐藤秀隆NTTファシリティーズ研究開発本部R&Dストラテジー部門部長)ため、省庁を横断した対策作りが必要となりそうだ。
「『自分だけは大丈夫』と思わないこと」――他の災害対策と同様に、雷対策も普段からの心がけと準備が必要と、高瀬主任予報官は語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
肖像画をChatGPTに読み込ませて出力→加工して納品 委託先による著作権侵害で、小学館「サライ.jp」が謝罪
-
2
Googleの「Gemini」も能力テスト中に実在企業3社に侵入──WSJ報道
-
3
新作「鬼武者」にハマったマンガ家が熱弁する、他とは違う“パリィ”の魅力とは?
-
4
経営「AIでラクして早く帰って」→社員「帰らない」 工数最大9割減のDeNAも悩むAI効率化の壁
-
5
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
6
“自動で耳コピ”アプリ、ヤマハが無料公開 音源読み込み→3分でピアノ譜に
-
7
メインで使うスマホ、Androidが54.1%でiPhoneを上回る 40代以上の最多シリーズは「AQUOS」
-
8
YouTube、収益化基準を2027年に大幅引き上げへ 新規参加条件が従来の2倍に
-
9
「iPhone Duo」実機をマニアック目線でチェック かな入力の分割不可、ケース装着時だけの隠し設定など
-
10
「労働時間を長くしたい」男性3%・女性6%……どんな人? 東大が調査
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR