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高画素・フルカラー化も――曲がるカラー電子ペーパー

» 2005年07月13日 17時52分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 富士通グループ3社が7月13日に発表した、液晶技術を使った世界初の曲がるカラー電子ペーパー試作品が「富士通フォーラム2005」(東京国際フォーラム、7月14、15日)で展示されている。試作品は512色表示だが、近いうちにフルカラー表示も可能になりそうという。高画素化も容易で、説明員は「カラーの電子ペーパーはこれしか生き残らないだろう」と自信を見せた。

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 新開発の電子ペーパーは、電源を切っても表示を維持できる「コレステリック液晶」の技術を活用した。赤、青、緑のフィルムを2枚ずつ重ね合わせ、間に液晶を挟み込んで積層する。自発色なため偏光板やカラーフィルター、バックライトなどは不要。視野角は180度に近い。液晶の挟み方などを工夫し、曲げたり押したりしても、表示が保てるようにした。

 試作品は512色表示が可能で、サイズは3.8インチ、解像度は320×240ピクセル表示(105ppi)で薄さ0.8ミリ。画素ごとのトランジスタが不要な単純マトリックス駆動のため解像度の向上が容易で、300ppi程度まで高解像度化できるという。表示色数を増やすのも簡単といい、既に実験段階では512色を超える表示が可能になっているという。説明員は「フルカラー化にもそれほど時間がかからないだろう」との見通しを示した。

photo 単色表示なら薄さ0.25ミリ

 512色表示の場合は書き換えに約3秒かかるが、単色表示なら1秒で書き換えられる。10分に1回書き換えた場合、消費電力は従来の液晶の数万分の1。静止画表示専用に開発を進めており、動画表示に対応する予定はない。寿命は「一般的な液晶と同じくらい」(説明員)としている。

photo 書き換え中の画面。左側の画素から順に書き換わる

 実用化目標は2006年度。表示のメモリ性やカラー表示を生かし、スーパーの電子値札や、列車内の中づり広告などで採用を目指す。フォーラムに出展した試作品は、「タイムサービス」や「処分品」と書かれた画像を表示し、スーパーでの利用を提案していた。

 カラーの電子ペーパーは、米E-Inkと凸版印刷が共同で開発中だが、富士通の製品は「カラー版E-Inkの3倍くらい明るい」(説明員)という。E-Inkは、電源を切ってしばらくすると表示がずれることがあるというが、富士通の製品は表示を完全に保持できる。ただ「白黒表示はE-Inkの方が美しい」(説明員)ため、電子書籍への採用は難しそうだ。

電子ペーパーのバス停も

 イベントでは、ガラス基板にA4サイズの電子ペーパーを搭載したバス停表示器の試作品も展示している。電子ぺーパーに時刻表や広告を表示し、バスが遅れると自動的に時刻表を修正したり、時間によって広告を変えたりといったことが可能だ。

 デモでは、無線通信機能付き端末を持った女性が近づくと、広告表示が女性向けに変わったり、端末にあらかじめ入力しておいた女性のスケジュールと、バス停が発信するバスの遅延情報を端末が付き合わせ、「バスを待っていると遅れる」としてタクシーを呼んでくれる――といった未来像を見せていた。

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