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Intel、デスクトップ用チップセットの生産を一時縮小

» 2005年08月04日 15時29分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米Intelはしばらく、ハイエンドのチップセット市場に専念しなければならなくなりそうだ。PCの需要が予想よりも旺盛なことから、同社の工場がほとんどフル稼働状態となり、生産能力が圧迫されているためだ。

 Intelの広報担当者ビル・キルコス氏は8月3日、同社がローエンドチップセット事業からの完全撤退を計画しているとする、かねてからの報道は否定したが、その一方で、「生産能力が圧迫される中、特定の種類のチップセットにフォーカスするため、製造スケジュールに優先順位を付ける方針だ」と語った。同氏はそうした調整の影響を受ける製品の特定を断ったが、Intelの計画に詳しい情報筋によれば、今回の決定で影響が及ぶのはローエンドPC向けの各種チップセットとなる見通し。

 Intelの最高財務責任者(CFO)アンディ・ブライアント氏は先月、記者と金融アナリストに対し、Intelが今年下半期にチップセットの供給で問題に直面する可能性を警告している。今年これまでのところ、PC需要はIDCやGartnerなどの市場調査会社の予測よりもはるかに好調で、Intelの工場は今年4月〜6月期にもフル稼働した。通常、4月〜6月期はPCやチップメーカーにとって最も不景気な四半期だ。

 キルコス氏によれば、IntelはPCメーカーとのこれまでの供給契約は果たせるが、これから予想される需要過剰のすべてを満たすことはできないという。

 Intelが昨年、ノートPC向けのCentrinoプロセッサで開拓した「プラットフォーム」という概念をほかの製品にも拡大して以来、同社の戦略にとって、チップセットはこれまでよりもはるかに重要な要素となっている。チップセットとは、PCまたはサーバのメインプロセッサをシステムメモリ、I/O、ストレージなどのコンポーネントに接続するチップの集まりのこと。IntelのPentium Mプロセッサと各モバイルチップセットはCentrinoパッケージの一環として、省電力と性能向上を念頭に設計されており、Intelは今後、PC向けの主要なセールスポイントとして、仮想化技術などのチップセット機能を強調していく方針だ。

 だが工場がほぼフル稼働状態となる中、Intelは顧客の需要を満たすために製造ラインを調整する必要があった、とキルコス氏。現在、需要はCentrinoなどのモバイル製品が最も旺盛という。

 Insight 64の主任アナリスト、ネイザン・ブルックウッド氏によれば、PCベンダーは、Intelが彼らの需要を満たせるだけの十分なモバイルチップセットを製造することによって恩恵を受ける。IntelのCentrinoマーケティングプログラムでは、Centrinoパッケージの3つの要素(Pentium M、Intelのモバイルチップセットのいずれか1つ、およびIntelのワイヤレスチップ)をすべて採用する場合には、PCベンダーはIntelから販売助成金を受け取ることになっている。

 また同氏によれば、IntelはローエンドのデスクトップPC向けチップセットよりも、モバイルチップセットの販売でより多くの利益を上げている。PCベンダーにも同じことが当てはまり、ノートPCの利益幅はデスクトップPCの利益幅よりも高いという。

 だがキルコス氏によれば、Intelは今後もチップセット市場全体をカバーする意向だ。同社は、より大きなシリコンウエハーに対応できるよう、アリゾナの既存の製造工場を年内に改築することになっており、生産能力の増強を見込める(7月26日の記事参照)。また来年には、アイルランドで新しい工場が稼働する予定だ。なお、Intelは台湾積体電路製造(TSMC)やUnited Microelectronicsなどのファウンダリや請負のチップ製造メーカーに追加の製造を委託することは考えていないという。

 ブルックウッド氏によれば、これにより、古い製造設備の生産能力がチップセットの製造のために開放されることになる。Intelの最優先事項は当然ながら、プロセッサ製造であり、同社のプロセッサは常にプロセッサ業界の最新かつ最高レベルの機器で製造されている。だがチップセットは高度な製造能力を必要としないため、Intelは、そうでなければ遊んでいたり、リプレースされていたであろう古い工場から収益を上げられる。

 一方、デスクトップ用チップセットの製造の縮小分は、Via TechnologiesやSilicon Integrated Systems、ATI Technologies、NVIDIAなどの企業によって補充されることになる。

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