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W3C、米著作権局の計画に異議

» 2005年08月25日 14時47分 公開
[IDG Japan]
IDG

 World Wide Web Consortium(W3C)は米著作権局のある提案をめぐり、一時的とはいえ、MicrosoftのInternet Explorer(IE)ブラウザかNetscapeのブラウザを使ってでなければオンラインフォームを提出できなくなる点に異議を申し立てている。

 W3Cのディレクターであるティム・バーナーズ=リー氏と、W3Cのテクノロジー&ソサエティードメインのリーダーであるダニエル・ワイツナー氏は、同局に宛てた文書で次のように訴えている。「提案されているシステムは、少なくとも、2002年電子政府法(E-Government Act of 2002)で採択された連邦政府の情報政策の精神に反するものだ」

 著作権局の提案は、同局に提出される著作権請求の予備登録に関するもの。

 著作権局の最高執行責任者(COO)ジュリア・ハフ氏によれば、同局ではNetscape 7.2、Firefox 1.0.3、Mozilla 1.7.7のサポートを計画しているが、当初のサポートはIEとNetscapeに限られる。

 「Family Entertainment and Copyright Act of 2005(映画館内で上映中の映画を録画する行為を違法としている)により、我々は一部の作品向けに予備登録システムを構築するよう義務付けられており、そうしたシステムを10月24日までに稼働させなければならない。我々が現在構築中のシステムには、Siebel Systemsの商用の既製ソフトを使っている。Siebelは既にこのソフトをIEとNetscapeではテスト済みで、こうしたブラウザについては動作が確認されている。ほかのブラウザでも問題なく機能するのだろうが、我々が現在使用しているバージョンのSiebelソフトでは、そうしたブラウザとのテストがまだ行われていない」と同氏。

 ハフ氏によれば、著作権局は来年、Siebelのソフトを、Netscapeの新版やFireFox、Mozillaをサポートする新版に切り替える計画という。

 「我々は実際、Apple ComputerのSafariブラウザで既に幾つか予備的なテストを行っており、1点を除いてうまく機能している。少し設定を行えば、ほかのブラウザでも使えるのだろうが、保証はできない。今はIEとNetscapeへの対応だけで、事を進める必要がある。登録システム全体の開発が進むまでは、Siebelの新版への移行は行わないからだ。登録システムは2007年初頭に始動させる予定だ」と同氏。

 ハフ氏によれば、著作権局も、登録システムはできる限り多くのブラウザに対応させ、できるだけ多くのユーザーが利用できるようにしたいと考えているが、今は時間的な制約が厳しい。「補足調査を行ったのは、紙ベースの申請にも対応させる必要があるかどうかを見極めるためだ。できれば、したくないことだが」と同氏。

 W3C幹部は、IEを批判しているわけではないという点を強調しつつも、著作権局の提案は互換性のないブラウザを使っているかもしれないMac OSやLinux、UNIXのユーザーに制限を課すことになると指摘している。携帯電話ユーザーやPDAユーザー、身体に不自由のあるユーザーにも影響が及ぶかもしれない、とバーナーズ=リー氏は指摘している。

 W3Cの幹部らは、「実際のところ、ベンダーが制限されれば、広範な分野の著作権付き作品の作者が皆、予備登録を行えるようにするというメリットが打ち消されることになる」と語っている。

 さらにW3C幹部は、「Webが生まれ、普及するようになったのは、ベンダー中立のオープンな標準が使われていたからこそだ」と語っている。

 著作権局は自分たちの計画に関するコメントを22日まで受け付けていた。提出された意見に対する追加のコメントは、9月7日まで受け付けられる。コメントの提出に関する情報は、オンラインで提供されている。

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