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アナリストが指摘するeBay-Skypeの懸念

» 2005年09月13日 13時53分 公開
[IDG Japan]
IDG

 オンラインオークションサイトの米eBayは9月12日、インターネット電話会社Skype Technologiesを26億ドルで買収すると発表した(関連記事参照)

 この取引は、eBayにとっては新しいビジネス分野に進出する後押しになり、Skypeにとっては顧客基盤の拡大につながると両社は述べている。

 例えば、現行の取引手数料に加え、eBayはSkypeを介した通話から料金を徴収できる。一方Skypeは、利用者がeBayの電子決済サービス「PayPal」を使ってもっと簡単に料金を払えるようにできる。

 Skypeは現在225カ国に5400万人の利用者を有し、新規ユーザーは1日15万人のペースで増えている。

 同社は2年前、ファイル交換サービスKazaaの開発で有名になったスカンジナビア出身のニクラス・ゼンストロム氏とヤヌス・フリス氏により設立された。

 先月、フリス氏はIDG News Serviceの取材に対し、同氏もゼンストロム氏も「(Skypeを)自立するよう築いた」と語っていた。このコメントが出たのは、SkypeがNews Corp.、Yahoo!、Microsoftなど複数の企業と買収交渉を持った後のことだった。

 Microsoftはその後、VoIP企業のTeleoを買収した(8月31日の記事参照)

 ゼンストロム氏もフリス氏も、eBayの幹部チーム内でポストを得る予定だとeBayの社長兼CEO(最高経営責任者)メグ・ホイットマン氏は電話会見で語った。

 Skype買収により、eBayは売り手と買い手が話せるようにして、より的確に意思の疎通ができるようにしたい考えだと発表文には記されている。買い手は、簡単に売り手と話をして買いたい商品の情報を得られるようになる。売り手も、顧客との関係を構築して取引をすることでメリットを得られるという。

 「われわれはかねてから、電子商取引における摩擦を減らそうとしてきた」とホイットマン氏は語り、買い手がより簡単に、安全にお金を払う手段としてPayPalを買収したことに触れた。

 eBayはSkype買収により、複雑すぎて電子メールやインスタントメッセージング(IM)では伝えられないことを利用者が話し合えるようにすることで、オンラインオークションサービスの摩擦をさらに減らそうと考えていると同氏。

 しかし一部のアナリストは、リアルタイムのコミュニケーションは、オンラインオークションを強化するよりも、むしろ妨げる可能性があると警告している。

 「特に欧州では、言語スキルが問題になるかもしれない」とJupiter Researchのアナリスト、イアン・フォグ氏。「外国語、例えば英語を使って電子メールで自己表現をすることと、外国語を使ってリアルタイムで電話で話すことはまったく別物だ」

 同氏はまた、こうした形のコミュニケーションをユーザーに奨励するために、eBayが傘下にVoIP企業を持つ必要があるのかと疑問を呈し、提携で十分だと示唆した。

 さらに別の面では、Skype買収は、eBayの中国における事業拡大計画を複雑にする可能性がある。中国では最近、ライバルのYahoo!がオンラインオークション事業者Alibaba.comの株式の40%を買収した(8月11日の記事参照)

 中国主要キャリア2社のうち1社China Telecomは先週、SkypeのSkypeOutサービスを使って国際通話をかける中国南部のユーザーを遮断し始めた(9月10日の記事参照)。同国の既存の規制の下では、免許を持った通信事業者しかコンピュータと電話をつなぐVoIPサービスの提供を認められていない。

 Skype買収により、eBayはこの問題に対処しなければならなくなり、China TelecomによるSkypeOut遮断の政治的影響にも直面することになる。「プラスにならない方向で、eBayの知名度を上げることになるだろう」とBDA Chinaのマネージングディレクター、ダンカン・クラーク氏は語る。

 ホイットマン氏はこの中国の一件を、米国でVoIPサービスに911(緊急通報番号)への対応が義務づけられたことや、インターネット電話への課税に関する議論などの規制問題と同様に一蹴した。

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