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» 2005年10月20日 13時10分 UPDATE

岩手発:最新技術を地元の人に――岩手放送が描く、ネット時代の地方局

岩手放送はネットサービスで“業界初”を生み続けている。地元情報のポッドキャスト番組など、ローカルコンテンツを最新技術に載せて発信。「すごい技術を簡単なものに“見せかける”のが放送局の役割」

[岡田有花,ITmedia]

 楽天が東京放送(TBS)株式を買い集め、ネットと放送の融合がやや強引に進められつつある中、ITと放送コンテンツを自然に融合させ、最新技術を生かしたネットサービスを発信し続けている地方局がある。TBS系列の岩手放送(IBC、盛岡市)だ。

 岩手放送は、テレビ局初の独自ツールバー配布、AM局初のポッドキャスティング参入、国内初の携帯電話向け長時間動画配信など「業界初」を立て続けに生んできた。ツールバーは岩手を飛び出し、読売新聞社など都内の企業も採用。「新技術が“なぜか”岩手県から」というインパクトを武器に、東北からネット時代の放送局の姿を発信する。

「新技術を簡単に見せる」――放送局の役割

 同局のネット関連新サービスは、技術局 デジタル推進部の上路(じょうじ)健介さんの頭の中から生まれる。「1つリリースしたときには、次の次くらいまでの計画が決まっています。面白ければ何でもやりますよ」――彼のアンテナに触れたものが、次々と新サービスになる。

photo 「究極のWebサービスを作ります」と上路さん

 上路さんは2003年2月、趣味で鍛えたFlashの腕を生かしてブロードバンドコンテンツサイト「CIAO’S SPOT」を構築(関連記事参照)。同5月には地元IT企業プラスプラスと共同で、サーバ側からデザイン変更可能なニュース配信機能付き多機能ツールバー「IBCツールバー」を開発した。

photo ツールバーは2004年に「いわてポータルバー」と名称を変更。岩手県と提携し、サイドブラウザに県からの情報を表示する機能を追加した。サイドブラウザはRSSリーダーにもなる

 2004年11月には、東北地方のテレビ局5社連動で、携帯電話を利用した視聴者参加型双方向クイズ番組を放送。パケット定額制時代を見据え、携帯電話向けニュースの動画配信も今年7月に始めた。8月にはポッドキャスティングにも参入。新技術への対応スピードはキー局顔負けだ。

 「小さい地方局だからこそ、素早く対応できるのだと思います」と上路さんは謙そんするが、新技術をむやみに追いかけているわけではない。「次々に出てくるすごい技術を簡単なものに“見せかけて”、一般の人にも使ってもらえるようにするのがテレビ局の役割」

 岩手県は高齢化が進み、県民のインターネット利用率も低い。上路さんは、ネットが得意でない県民にも便利に利用してもらえそうな技術を厳選。インタフェースや説明を分かりやすくし、テレビ番組と連動したコンテンツにして、身近に利用してもらいたい考えだ。

 「ネットだけでやってしまえば、とっつきにくくて難しそうなものでも、テレビと絡めれば、『岩手放送がやるなら使ってみようか』と思ってもらえますから」。テレビの情報伝達力と、ネットの新技術を組み合わせて“最強のメディア”を形作っていく。

 地元のIT企業とも積極的に提携。優れた技術に放送局のぼう大なコンテンツと信頼性を付加し、世に送り出す。

人手をかけずにIT化――地方局の課題

 「地方局はどこも人手不足に悩んでいます。そこに歯向かう方向では伸びていけません」――上路さんは新サービスを作る際、人手をかけずに済むよう工夫する。例えば、IBCツールバーへのニュースの見出し配信は、ニュース原稿管理システムと直結させ、独自定義したXMLで自動的に吐き出すシステムにした。RSSがなかった当時にRSSに似た仕組みを作り、すべて自動化した。

 ポッドキャスティングのコンテンツ作りも自動化に向けて準備中だ。音楽入りラジオ番組をネット配信する際、著作権の関係で、音楽の部分を手作業で抜く必要があり、ぼう大な手間がかかっていた。現在、音楽以外の音源だけを拾ってサーバに蓄積するシステムを構築中。完成すれば、ラジオ番組を無加工でポッドキャスト配信でき、番組数を一気に増やせる。

岩手放送から他局へ、そして全国へ

 新技術への素早い対応が「岩手放送はネットに強い」という評判を呼び、新しいビジネスにつながる。同社へ広告出稿を考える顧客の多くが、テレビやラジオとネットを連動させた企画を期待するという。例えば東北電力は、PC向けWebサイトとポッドキャスティング、携帯電話まで含めた広告企画を展開している。

 岩手放送のサービスは、県境や放送局の壁を飛び越えた。IPポータルバーは、「岩手県にとどめていてはもったいない」と上路さん自ら都内に営業に出向き、富士通FIPがサービスとして採用。読売新聞社や日経BP社が導入した。上路さん自身も、他系列にネット関連サービスの講師として招かれることが少なくない。

 最近になって、キー局が相次いでネットによる番組配信を開始を決めるなど、放送と通信の融合が急速に進んできた。岩手放送が一足先に蓄積してきたノウハウは、ネット時代の武器になる。「『岩手放送なら新技術に素早く対応してくれる』という印象をつけ、いつ、どんな話が来ても対応できるようにしておきたい」

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