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サンフランシスコ市の無線インターネットサービス計画、Google案の内容は?

» 2005年10月20日 17時25分 公開
[IDG Japan]
IDG

 サンフランシスコ市全域に無料の無線インターネット接続サービスを提供するという米Googleの提案が10月17日、Webで公開された。この提案において、同社はWi-Fiの重要性を力説しているが、その一方で、自社がインターネットサービスの提供で果たす役割については控えめに述べるに留まっている。

 Googleの提案は、サンフランシスコ市が同市全域に無線インターネットサービスを提供するというアイデアに関して情報と意見を募り、それに対して関係各社26社が寄せた提案の1つ。Googleの提案では、同社がサンフランシスコ市の全住民と訪問者向けに無料のWi-Fiサービスを提供することになっている。Googleによれば、このプロジェクトはユーザーの位置情報に基づくターゲットを絞った広告の収入でまかなわれ、また、インターネットサービスプロバイダー(ISP)各社はアクセスを卸売り価格で購入し、エンドユーザー向けに特別なサービスを販売できることになる。

 Googleの提案書には次のように記されている。「ユビキタスで手頃な価格のインターネットアクセスは、人類社会の社会的、経済的発展にとって非常に重要な側面であり、無料Wi-Fiの供給に取り組むことはそうした方向に向けた大きな一歩だと当社は考える。ただし、オンライン接続が1つの形式のみで提供されたり、接続を提供する企業が1社に限られたりといったことには決してならないはずだ」

 最近、一部の報道では、Googleが光ファイバーを使って全国規模のバックボーンネットワークを構築し、広範囲に及ぶ無料の無線インターネットアクセスを介して、既存のブローバンドプロバイダーの縄張りに割り込む可能性が騒がれている。17日に掲載された提案書では、Googleは光ファイバーネットワークに言及はしているものの、その内容は抑えたものとなっている。

 Googleは提案書で次のように述べている。「世界中の検索クエリーに瞬時に応じるためには、何千台ものコンピュータと何マイルもの光ファイバーケーブルが必要となる。私たちは、サンフランシスコ市向けにWi-Fiの世界でも当社のインフラの成功を繰り返せるものと確信している」

 またGoogleは、サンフランシスコ市はWi-Fiを介して提供される位置情報ベースのアプリケーションやサービスの試験の場となるだろう、と記している。実際、既にGoogleはパートナー企業と協力して同市の一部エリアに無料Wi-Fiを提供する取り組みを進めており、カリフォルニア州マウンテンビューの同社本社近くの数カ所で既にアクセスを提供している。

 サンフランシスコ市のソフトウェア企業Feevaは今回の同市の要請に独自の提案を提出しているが、同社は今年3月、2つの無料の市営無線ネットワークの構築でGoogleと同市の取り組みに加わっている。提案書によれば、Feevaのソフトは無線ネットワークの利用者の位置情報や、アクセスに使われているデバイス、ユーザーが提供する嗜好データを認識できる。ユーザーの匿名性は守りながらも、そうしたデータを広告主に提供することで、サービス・プロバイダーはネットワークのコストをカバーするだけの十分な収益を上げられる、とFeevaは説明している。

 Googleはサンフランシスコ市全域に、1Mbps以上のデータ転送速度を提供するIEEE 802.11b/g Wi-Fiメッシュネットワークを構築すると提案している。同市内の誰もが、最大300Kbpsのデータ転送速度のアクセスを無料で利用でき、Googleかサードパーティ各社は、おそらく最大3Mbpsまでの高速アクセスを有料で提供することになる。300Kbpsの無料サービスは街中のほか、家庭や企業の表側の部屋、およびビルの地上数階で利用できる。ホームユーザー向けには、室内での受信状態を改善するための家屋用機器の設置が奨励されるもよう。またサンフランシスコ市は、アクセスポイント設置のためにGoogleに約1900本の街頭の利用を許可する。一部のアクセスポイントはビルに設置されることになる。

 さらにGoogleは、サービスを確実に提供し、ふくそうを緩和できるよう、市の行政機関のトラフィック向けに別途VLAN(仮想LAN)を提供し、300Kbpsのデータ転送速度で無料アクセスを提供する計画だ。

 Googleの提案によれば、ネットワークの設計と導入はサンディエゴのエンジニアリング/ネットワークサービス/技術アウトソーシング企業のWireless Facilitiesが担当する。また同ネットワークは最終的には802.11nをサポートすることになる。802.11nは100Mbps以上のスループットの実現を目指し、現在策定中の無線LAN規格だ。

 サンフランシスコ市は先月、サービスの構築とオペレーターの候補企業による情報のほか、一般からの意見も募った。同市のギャビン・ニューサム市長は今月に入り、寄せられた意見については担当委員会が約3週間かけて検討し、その結果報告を受けることになっていると説明している。同市はその上で、サービス提供のための実際の計画と入札を要請することになる。同市はどれか1社の提案を採用するか、あるいは数件の提案を組み合わせて独自の計画にまとめることになる。政治的な手続きがスムーズに進めば、サービスは5〜6カ月後には提供できるだろう、とニューサム市長は語っている。

 いちばん注目を集めたのはGoogleの提案だったが、17日には、そのほかにも大手各社の提案が公表された。

EarthLink

 EarthLinkは最近、フィラデルフィア市の市営無線ネットワークを提供する契約を勝ち取っている。今回の同社の提案は、月額20ドル以下で1Mbpsの居住者用ブロードバンド接続を提供し、低所得者層にはさらに低料金でサービスを提供するというもの。ネットワークの資金調達、所有、導入、運営はEarthLinkが担当し、サードパーティーのプロバイダー各社には卸売り価格でアクセスが販売される。

MetroFi

 MetroFiの提案は、広告ベースの無料のベストエフォート型(サービス品質保証がない)の公衆サービスと、月額19ドル95セントの1Mbpsのシンメトリックな居住者用ブロードバンドサービスを提供するためのWi-Fiメッシュネットワークを構築するというもの。企業向けには、Pre-WiMAXのメッシュネットワークにより、最大3Mbpsの接続サービスを提供する。どちらのネットワークも市の負担はなしで構築される。

Motorola

 Motorolaは、公共安全向けに認可された周波数帯域に加え、一般ユーザーや公用サービス向けに免許不要で提供されている周波帯域でWi-Fiを用いる。公共安全向け周波数帯域では、時速100マイル以上で走行する自動車でも利用できる。

SFLan

 SFLanは、1998年以来、サンフランシスコ市で無料のWi-Fiを提供しているInternet Archiveの非営利プロジェクト。SFLanの提案は、エンドユーザーにサービスを提供する多数の無線ISPとコミュニティー組織を相互接続するための「交換局」を同市が構築するというもの。SFLanによれば、市全域をカバーするローカルネットワークは、無線バックボーン接続を備えた太陽電池式のアクセスポイントにより、災害時にも抑えた速度で稼働し続けられるようになる。市による交換局ネットワークの構築資金は、一般資金と債券によってまかなわれる。SFLanによれば、同市の95%をカバーするインフラに掛かるコストは100万ドル以内に収まる。SFLanはVoIPやビデオカメラなど、Web以外の用途も構想しているため、ネットワークへのサインオンに商業ポータルを利用することには反対している。

 各社の提案に関する情報は、サンフランシスコ市のWebサイトで入手できる。

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