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「Blue」と「Purple」、強力スーパーコンピュータが本格稼働

» 2005年10月25日 12時29分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米国立ローレンス・リバモア研究所は今や、世界で最も強力なコンピュータの本拠地となっている。ASC Purpleと、世界で最も高性能なBlue Gene/Lだ。3年の開発を経て、これらシステムの完成版は数カ月前から稼働しており、10月27日の同研究所の式典で除幕式が行われる。

 これら2台のシステムへの取り組みは2002年、IBMが米エネルギー省からスーパーコンピュータ構築の契約を獲得したときに始まった。このシステムは、高性能コンピューティングの分野で米国の優位を取り戻すことを目指したものだった。13万個のプロセッサを搭載したBlue Gene/Lは分子の動きや振る舞いの研究に利用され、1万2000プロセッサのASC Purpleは核兵器シミュレーション向けだ。

 ローレンス・リバモア研究所はこれらシステムの縮小版を動かしてきたが、ここ数カ月前でこれらを完全に稼働できる状態に持ってきたと米国家核安全保障庁(NNSA)の高度シミュレーション・コンピューティング(ASC)プログラムマネジャー、ロビン・ゴールドストーン氏は話す。同プログラムは米国立研究所におけるコンピューティングの監督にあたっている。

 同研究所は9月末にBlue Gene/L完全版の納入を受けたとゴールドストーン氏。「このシステムは稼働している。ほかのシステムと同様に、解決しなくてはならないことはほとんどない。これは基本的にNNSAのために科学的問題を解明するのに使われる」

 同研究所は現在、ASC Purpleを多数の「受け入れテスト」を通じて走らせているところで、正式な受け入れは年内の見込みだという。

 世界で最も強力なスーパーコンピュータのうち2台を同時に稼働させることは、大きな技術的成果だったとゴールドストーン氏は言う。「これらマシンのうち1台を統合するとしても大きな課題になっただろう。2台を同時に稼働させるのは驚くべき偉業だ」

 Blue Gene/LとASC Purpleの今のベンチマークスコアは得られていないが、世界で最も強力なスーパーコンピュータのリストで上位に入るだろう。

 Blue Gene/Lは理論上のピーク性能は367TFLOPS。しかし実際の性能はもっと低いと見られる。IBMは、このシステムが270T〜280TFLOPSの性能を発揮すると予測している。今の半分のサイズで構築された初期版のBlue Gene/Lは、6月に世界で最も強力なスーパーコンピュータの座を獲得した(6月22日の記事参照)。このときの性能は136.8TFLOPSだった。

 ASC Purpleの理論上のピーク性能は93TFLOPS。6月に第3位にランクインしたNASA(米航空宇宙局)の「Columbia」(SGI製)よりも約50%高性能だ。9480プロセッサ搭載の初期版ASC Purpleは、7月にベンチマークで60TFLOPSを記録したとIBMは述べている。

 次の世界スーパーコンピュータランキング(「Top500 List」と呼ばれる)は11月12日にシアトルのスーパーコンピューティングカンファレンスで発表される。

 Blue Geneはもともと、ペタFLOPS級スーパーコンピュータに利用されるかもしれない新しいコンピュータ設計を模索する方法としてシンプルに設計されたものだが、多数の科学的な用途があることが判明したと、ローレンス・リバモア研究所広報官ドン・ジョンソン氏は語る。「もとは『研究マシン』と呼ばれるものだった。だがわれわれの観点から見ると、これは今、確かにプロダクションマシンと言える」

 昨年、IBMはBlue Geneを研究開発部門から出して「eServer Blue Gene」というブランド名で販売開始した。これらのサーバはメイヨー医科大学院や米国立大気研究センターなど各種の研究機関で使われている。価格は5.7TFLOPSのシステムで150万ドルから。

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