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「スタトレ」のような通信のビジョンを描くNVIDIA CEO

» 2005年11月02日 19時14分 公開
[IDG Japan]
IDG

 ワイヤレス通信の未来は、携帯電話のない世界かもしれない。胸ポケットの折り返しに取り付けられたチップからの音声コマンドをWi-Fi信号が拾い、VoIPがその音声信号をデータに変換して、インターネット経由で強力なサーバに送る。サーバは発信者の声を特定して、すぐに彼らが探している相手につなげる――そんな世界になるかもしれない。

 こうしたシームレスな音声通信のアイデアは新しいものではない。これは「スタートレック」をベースにしており、今日の優れた技術のほとんどはこのドラマから生まれたとシリコンバレーのベテランでNVIDIAのCEO(最高経営責任者)、ジェン−スン・ホアン氏は11月2日、台北のFabless Semiconductor Associationでの講演で語った。

 大手グラフィックスチップメーカーのトップが音声通信の革新を予測するのは奇妙に思えるかもしれない。だがホアン氏は、同氏は単にWi-Fi、VoIP、音声認識ソフトなど今既にある技術を基に起こり得る革新を予測しているだけだと語った。

 同氏は、グラフィックス業界の革新についての予測も示した。1993年のNVIDIA設立以来、コンピュータグラフィックスがどれだけ進歩したかを示すビデオクリップを上映した後、「10年以内に、ビデオゲームと映画の区別が付かなくなるだろう」と同氏は語った。

 映画「スパイダーマン」のワンフレームをスライドで見せながら、同氏は、現行の技術では、このような高画質のグラフィックスをレンダリングするのに長い時間がかかると話した。しかし、10年のうちに、このようなレンダリングがリアルタイムで行われるようになると同氏は述べた。

 そうした処理に必要なチップは、数十億個のトランジスタを必要とするだろう。同氏によると、NVIDIAは同社GPU(Graphics Processing Unit)のトランジスタ集積数が、2008年頃には10億個を超えると見込んでいる。これに対し、同社の最新GPU「GeForce 7」は3億200万個、1993年の最初の製品「NV1」には100万個のトランジスタしか載っていなかった。

 NVIDIAのGPUのトランジスタ集積数は、2013年までに54億個に拡大するかもしれないが、半導体業界は1個のシリコンにそれだけの数のトランジスタを載せるために、チップの消費電力削減に取り組まなければならないと同氏。

 数億個のトランジスタを載せた最新チップは熱くなりすぎると同氏は指摘し、「われわれは、こうしたチップを冷やすためのデバイスを作らなくてはならない」と語った。デュアルコアやトランジスタの低速化など、電流リークを減らすために企業が採用している方法は幾つかあると同氏は語り、半導体業界はこれからも新しい方法を発見し続けると確信していると付け加えた。

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