ITmedia NEWS >

「テラワロス」も現代用語――はてなキーワードと流行語の接点(2/2 ページ)

» 2005年11月04日 13時59分 公開
[岡田有花,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 現代用語の基礎知識の読者層は、学生から高齢者まで幅広い。「テラワロス」のようにネット界では当たり前でも一般の人が知らない言葉なら、辞書に載せる意義はあり、流行語の種にもなりうるという。

 その業界では古い言葉が、新語となって一般に流通する例は実際にある。例えば「BSE」(牛海綿状脳症)。1980年代からあった言葉だが、日本で初の感染牛が出た2001年に一気に一般化。今を表す欠かせないキーワードになった。

 一度は完全に過去のものになった言葉でも、最近復活し、一般化する可能性を持つ言葉も取り入れた。「ささやき戦術」がその例だ。東北楽天イーグルスの野村克也新監督が現役時代に得意とした戦術で、1960〜70年代に流行した言葉。弟子のヤクルトスワローズ・古田敦也選手兼監督へと受け継がれ、復活の兆しを見せている。

 一般名詞でも、定義のニュアンスにリズムの良さや現代性を感じさせた用語は掲載した。例えば「くちびる」。はてなダイアリーキーワードの定義は「口のふちの、薄い皮でおおわれた、やわらかい部分。かんだり、盗んだり、盗まれたり、奪ったり、奪われたりするモノ」などとあり、一般の辞書にはない独特のニュアンスが含まれている。

 除雪用具「ママさんダンプ」など、既存のどの辞書も取りこぼしてきたと考えられる、地域性の濃い用語も選んだ。

 はてなダイアリーに埋まっていた用語は予想よりも幅広くて深かったため、当初の予定だったネット用語以外の言葉も多く選ばれたという。「紙幅の限られた辞書と違い、ネットは言葉をプールする機能が異常に大きい」

「アクが強すぎて」一般語と別掲載

 はてなダイアリーキーワードから抽出した言葉は、「社会風俗」「オタクの文化」「思想と病理」など6項目に分け、関連分野に20程度ずつまとめて入っている。

 当初は、各項目の編集記事の中に1語ずつ自然に入れ込むつもりだったが「アクが強すぎたので」あきらめたという。確かに「哲学思想」の項目で「フランクフルト学派」と「中二病」が同列に並ぶのは、かなり違和感がある。

 「一般のボキャブラリーと専門分野のボキャブラリーは、みんなが思っているほど同じではない」と長沖編集長は言う。ネットに詳しい人はWeb用語だけで、そうでない人は紙の用語だけで満足しているかもしれない。しかし両者の間には異なる雰囲気があり、特徴がある。現代用語の基礎知識 2006で、一般用語とはてなダイアリーキーワードの項を比べて眺めると、その違いが感じ取れる。

紙の辞典の存在意義

 日常生活で分からない用語に出くわしても、辞書に当たらずネットで検索すればいいと考える人が増えてきた。しかし紙の辞典として現代用語の基礎知識が存在し続ける意味はあると、長沖編集長は話す。

 「ググっても、その言葉の正しい意味にすぐに行き着けるかどうかは分かりません。紙の辞書なら、語義の検証が終わった用語をすぐに見つけられます」

 はてなダイアリーキーワードは、来年以降も掲載を続けたい考え。流行語大賞がはてなダイアリーキーワードから生まれる可能性は、十分にある。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.