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» 2005年11月25日 15時49分 UPDATE

「ソレハ イキモノ?」――ブログが鍛えた人工知能「20Q」

目標は10万人分。しかし集まったデータは3万人弱、残り時間は少ない――人工知能のテストデータ集めに苦悩する担当者を救ったのは、ブログが広げた口コミだった。

[岡田有花,ITmedia]

 「まさか」――バンダイの担当者は驚いた。それまで1日に3000件程度が関の山だったWebテストを、たった2日で10万人以上が利用していた。間違いだろうと何度も確認した。間違いではない。“黒幕”は、ブログだった。

 今年5月。バンダイは、米国からライセンス提供を受けた「20Q」(トゥエンティーキュー)の日本語版の商品化に向け、頭を悩ませていた。20Qは「はい」「いいえ」で答えられる質問――「ソレハ イキモノ?」「ボタンガ タクサン ツイテマスカ?」など――を20前後ユーザーに投げかけ、その答えから、ユーザーが思い浮かべたものを当てるおもちゃだ。

photo 20Q日本語版。「ソレハ イキモノ?」「アヒルヨリ オモタイモノ デスカ?」などといった質問を投げかけてくる

 米国製の人工知能をそのまま日本語で利用した場合、正答率は4割程度。製品化するにはこれを6割以上に高める必要がある。

 20Qの人工知能は、回答データを学習するほど賢くなっていく。正答率を6割に上げるのに必要なのは、10万人分の回答データ。しかし、データ集めに使える時間は1カ月もない。

 データを集める手っ取り早い方法はないか――担当者は、ネットに賭けることにした。20Qの人工知能を使ってユーザーが考えたことを当てるWebテストを構築。懸賞サイトに登録し、5月19日に公開した。

photo 20Qの人工知能を使ったWebテスト

 当初の10日間で集まったデータは3万弱。あと10日あまりで7万以上集めなくてはならない。アルバイトを雇ってテストを受けてもらうか、Yahoo!JAPANのトップにバナー広告でも出すか――しかし数千万から数億円もかかってしまう――悩んでいた矢先、冒頭のような不思議な現象が起き、データが面白いほど集まった。

 調べてみるとどうやら、影響力の大きいブログで紹介され、トラックバックや「2ちゃんねる」を通じて広まっていったことが分かった。「予期せぬところで盛り上がった」と、開発したバンダイトイホビーカンパニープレイトイ事業部コミュニケーショントイチームの武士俣尚也さんは振り返る。

 その日を境に1日あたり12万〜13万人分がテストを受け、6月4日までに100万以上のテスト結果が集まった。人工知能の正答率は78.5%に上昇。米国版の6割を大きく上回った。

 「『何だろう感』が良かったのかもしれません」と武士俣さんは振り返る。テストサイトは、バンダイのドメイン下に置いてはいたが、テストの目的は明記していなかった。そのためネットユーザー間で憶測を呼び、「バンダイがこれを使ったおもちゃを開発するのでは?」「ハロに人工知能を入れるのでは」などとうわさが広まっていった。

 データ集めにお金をかけずに済んだため、3000円程度になるはずだった価格も、税込み2100円に収まった。

売り場でも広がる口コミ

 開発元の米国では2003年末に発売され、累計200万個が売れた20Q。米国にはもともと、人が考えたことを当てる「20questions」というゲームがあり、文化的にも受け入れられやすかったという。しかし日本にはその文化がない。

 日本では、口コミを中心に販促していく。「ブログでの盛り上がりを見て、口コミはいけると思いました」――11月12日の発売以来、ネットの口コミに加え、売り場でも口コミで広まっているという。

 メディアの紹介やブログなどで発売を知った人が試遊機目当てに店にやってきて実際に遊び、「当たった!」などと声をあげると、周りの人も気になって寄ってくる――こんな口コミサイクルができあがっていると、売り場をいくつか見に行った武士俣さんは話す。

 ネットと売り場の口コミ効果が相まって売れ行きは好調。1日で250個売れて「売れ行きはたまごっち以上」と話す店もあったという。

謎のヒーロー「20Q仮面」

 今後は「20Q仮面」を中心に、口コミを広げていく考えだ。20Q仮面は、20Q型の頭にヒーロースーツとマントをつけたキャラクター。20Qを腰に下げ、繁華街を練り歩く。目的は「女子高生に写メールで20Q仮面を広めてもらうこと」。チラシを配り歩いたり、広告のぼりを持たせたりはしない。

photo 渋谷の交差点でキャラバンする20Q仮面。ブログでは、見ると幸せになれるという噂も立っているという
photo 明治神宮で必勝?祈願する20Q仮面

 「チラシを配らせてみたこともあったんですが、配り始めた瞬間興味を失い、受け取ってくれなくなりました」――宣伝だと知った瞬間に嫌悪感を持ち、引いてしまう人は多い。ただ不思議な格好で歩いて「何だろう」と思わせ、うわさしてもらう。「満腹ではなく、6割くらいにとどめておくのが大事」。その上でテレビの紹介や雑誌記事などで「これだったんだ!」と知ってもらって購買につなげる作戦だ。

 20Q仮面には、20Qのイメージの伝道者という役割もある。「20Qは意外とシュールなんです」。例えば、部下を思い浮かべながら20Qで遊ぶと「ニート」と答えたり、彼女を思い浮かべて遊ぶと「母親」と答えたり――そんな、深層心理を浮き彫りにするようなブラックな遊び方も可能だ。

 20Qの面白い遊び方をユーザーに考えてもらうサイトの構築も検討中。今後もユーザーを巻き込んだマーケティングを展開していく考えだ。

photo 同社社長室広報チームの中西香澄さん(左)と武士俣さん

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