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「こんな時だからこそ安定したサービスを」――ライブドアの技術者魂

» 2006年02月07日 17時29分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ライブドアが証券取引法違反の疑いで家宅捜索を受けてから3週間、同社の堀江貴文元社長が逮捕されてから2週間が経った。「こういう時だからこそ、品質を落とさないよう踏ん張りたい」――同社の技術に誇りを持つ、ネットサービス事業部システム開発グループの谷口公一テクニカルディレクターは、静かにこう話す。

 あの事件をきっかけに、マスコミは一斉に同社を叩いた。同社のサービスすべてを「虚業」と呼び、「技術がない」と決めつける一部の報道に、地道に技術を磨いてきた同社の技術者はやるせない思いをため込んできた。「一番ひどかったのは、ワイドショーでした。コメンテーターが『ライブドアのすべてが虚業だ』と、すごい勢いで叩かれて……」

 コメンテーターがライブドアを叩いていたその瞬間も、ポータル「livedoor」は動いていた。ポータルは連日のテレビ報道の影響でアクセス数が急増。想定アクセスをはるかに上回った日もあったが、同社の技術は負荷をさばき切った。ブログやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)など他サービスも、事件前・事件後とも変わらず、安定運用を続けている。

ポータルサイト「livedoor」

 はてなの最高技術責任者・伊藤直也氏はブログで「連日のテレビ放映による影響でも落ちないサイトを維持し、オープンソースの自社製フレームワークで大規模なサイトを超短期で構築して自分たちで運用している(中略)。ライブドアはそういう技術的な側面を持っている企業です」と評価する。

 ライブドアの前身、オン・ザ・エッヂ元取締役の小飼弾氏もブログで「少なくとも『東証は止まったけどうちのサービスは止まりませんでしたよ』ぐらいは、言う資格があると思う」と指摘している。

「技術のライブドア」復権へ

 “技術の会社”としてのライブドアのイメージがここ最近薄れていたことは、谷口さんも認める。プロ野球参入にテレビ局買収騒動、選挙出馬――地道なネット技術よりもずっと派手なニュースが、世間の耳目を集めた。

 知名度が上がることは悪くない。しかし、派手なニュースに技術が埋もれてしまうことを、谷口さんは以前から危ぐしていたという「『ライブドアに入りたい』と言ってくれる技術者が少なくて」

 ライブドアのサービスは、OSからサーバアプリ、開発環境までほとんどがオープンソースベース。使用言語は、技術者の就職先として人気のはてなや、日本最大のSNSとして存在感を高めているミクシィとほとんど同じだ。「ライブドアが(技術とは)違う目立ち方をしちゃったせいで、この2社と並んで紹介されることは、ほとんどなくなってしまいましたが」

ライブドアの技術者にとっての魅力は「滝のようにログが流れるサービスを、自分の力で作れること」と谷口さん。技術者20人ほどでポータルの全サービスを作っており、誰がどのサービスに意見を出してもいい自由な体制という

 昨年末に開いた「ライブドア次世代テクノロジーセミナー」は、そんな状況への打開策の1つ。買収や選挙など、派手なイメージに覆い隠されてきたライブドアの技術に改めて光を当てるのが狙いの1つだった。このセミナーがきっかけで入社を決めた技術者も複数おり、セミナー後の2次会で合流したある技術者は、強制捜査後の2月1日、同社に入社した。

今だからこそ、高品質のサービスを

 強制捜査の当日は、電話がひっきりなしに鳴り、PCを全く使えない状況になった。しかしそれ以降の業務は普段通り。あえて変化を探すなら、連日の報道でアクセスが集中したサイトへの技術対応が少し増えたくらいだ。

 「ライブドアのサービスは、多くのユーザーさんに使っていただいているので、それを止めることが一番怖い。いつも以上に神経質に対応していきたい」と谷口さんは話す。

 通常通り業務を続ける谷口さんのようなスタッフがいる一方で、事件をきっかけに担当サービスの停止を余儀なくされるなどし、絶望感にうちひしがれて精神を病むスタッフもいるという。みんなで励まし合いながら、この状況を乗り越えて行きたい――谷口さんはそう考えている。

 「こういう時期だからこそ品質を落とさず、ユーザーや株主の信用を失わないよう、みんなで励まし合って、踏ん張っていかなきゃいけないと思ってます。スタッフ1人1人がコンテンツを支える貴重な存在。1人でも絶望し、仕事が手につかなくなると、サービスの品質にも影響が出てしまいますから」

 ライブドアは、先週から今週にかけてブログ検索の新機能や、ブログポータルの都道府県別表示などといった新サービスをリリースしている。一斉に過熱し、一斉に落ち着いた報道の波をよそに、技術陣は今日も、地道な仕事を積み重ねている。

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