作家の室井佑月さんは、メールが大の苦手だ。タイピングは超高速だがメールは書けない――というより書かない。
「だって文章をお金にしてるから。お金にならない文章は1行も書きたくない。息子の保育園の日誌でさえ、1回も自分で書いたことがないくらいよ」
これも本音だが、理由はもう1つある。“思い”を込めないメールは意味がない、と思っているから、いい加減な気持ちでは書けないのだ。
「メールは手紙と一緒で、誰かに思いを届けるためのもの。思いがこもってない手紙は、走り書きと同じよ」
届いたメールもほとんど読まない。「編集者とかからメール来るじゃない。面倒くさいから開けたことないの。それで、タイトルだけで想像する。『これはこういうことが書いてあるのだろうな』と」。仕事のメールは秘書が処理する。
小説やエッセイの原稿送信はメールだ。「アドレス入力の仕方とかわかんないから、何回やっても新しいところには送れないの」
機械オンチを自認する室井さんだが、初めてネットに触れたのは1997年ごろと意外に早い。
作家になったばかりの当時。「ワープロより形がかっこいいから」とMacノートを買った。Web検索にハマり、「変態」や「でん部」などのキーワードで検索していたという。
「検索結果に“変態”がバーッといっぱい出てくるのが面白くてハマってた。でも編集さんから『ネットをやるな』と言われて」――編集者は、室井さんがネット上の素人の文章を読みすぎたせいで文章が下手になってきたと感じ、“禁止令”を出した。
それ以来Macは原稿書き専用機に。新機種が出るたびに買い足し、今は6台ほど持っている。「色の付いた四角いの(iMac)も持ってた」
毎日長時間利用するから、手の腹が当たる部分が変形しているという。「原稿を書いているうちに変な液体が自分から出るみたいで、手のところが溶けちゃってギザギザになっちゃう」
ブログを書いてみないか――ネットから離れて長く経った2004年、そんな話が来た。ブログが何かはよく分からなかったが、「付録(フロク)みたいで、最初はなんか嫌だなと思った」という。
以前ネットに息子の悪口を書かれたこともあり、イメージは悪い。文章は紙媒体で読みたいと思うタイプだから、ディスプレイに載せることにも抵抗があった。
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