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Vistaがβ2までに解決すべき3つの問題

» 2006年05月23日 17時26分 公開
[Mary Jo Foley,eWEEK]
eWEEK

 Windows Vistaと向き合うべき時が来た。開発着手から5年、幾度もの軌道修正やつまずき、多数のβ版とCTPビルド(コミュニティー技術プレビュー)のリリースを経て、米Microsoftはようやく200万人のβテスター向けにVistaビルドを公開する準備を整えた。Microsoftに近い情報筋によれば、早ければ同社は5月23日にシアトルで開幕するWinHECにおいて、このビルドをリリースする見通し。このビルドは、コンシューマー向けVista CTP、Vista Beta 2など、幾つかの名称で呼ばれている。さらにMicrosoftは同社の次世代デスクトップスイートの次なるマイルストーンとなるOffice 2007 Beta 2を、Vistaビルドのリリースとほぼ同時期にリリースすると見られている。

 正確なリリース日は流動的だが、1つ確かなのは「このVistaビルドは、Microsoftがこの1年間に提供してきたどのビルドよりも安定したものでなければならない」という点だ。βテスター8名に取材したところ、TAP(Technology Adoption Program)パートナーと呼ばれる精鋭βテスターグループを対象にここ数カ月間に配布された暫定版の2つのCTPも含め、Vistaのビルドはここ最近のものですら、性能と互換性をめぐるさまざまな問題を含んでいたという。

 オレゴン州ポートランドのVistaテスターで、MSTechToday.comなど多数のWindowsコミュニティーサイトに投稿しているブランドン・ルブラン氏は次のように語っている。「ビルドごとに性能にバラツキがあり過ぎる。Microsoftはこの期に及んでいまだに変更を加えており、そのせいで性能がひどく混乱している。本来なら、Beta 2までにはそうした段階を終えているはずだ」

 こうした問題がVistaの次のビルドで大幅に改善されていないようであれば、Microsoftは3月下旬に発表したスケジュールの概略を守りづらくなるだろう、とテスターらは指摘している。Microsoftの現行のタイムラインでは、同社はVistaの最終コードを今夏か今秋に製造工程向けにリリースし、ボリュームライセンス顧客が11月までにVistaの最終コードを入手できるようにする必要がある。Microsoft幹部は、VistaとOffice 2007を2007年1月に同時リリースし、その時点で両製品のコードがすべての顧客に提供されるようにするとの方針を変えていない。

 実際には、Microsoftがこのタイムラインを守れないだろうと考える向きは少なくない。Gartnerは5月に発表した調査ノートで、Vistaのリリースは最大で3カ月間遅れる可能性があると指摘している

 Directions on Microsoftのアナリスト、マイケル・チェリー氏は次のように語っている。「ビルドをBeta 2と呼ぶためには次の点が絶対条件となる。そのビルドは、テスターが日常業務を実行できるほどの十分な安定性を備えていなければならないという点だ。日常の使用に耐えられる安定性を備えていなければ、テストは遅れることになる。そして、結果的には、テスターがバグを発見するのも遅れることになる」

 これは簡単なことのように聞こえるかもしれない。だが、VistaをメインOSとして実行しているMicrosoft社員やコーポレートテスターらは、同製品は「製品化の準備は整っていない」と報告している。Microsoft社内の開発者やテスターだけでなく、同社製品の複雑さを知っている古くからのVistaテスターやWindowsコミュニティーのメンバーですら、最近のビルドで問題に遭遇している。

 コードベースの規模や複雑さの違いを考えれば、2001年のWindows XPとWindows Vistaを比較するのには若干無理があるかもしれないが、テスターによれば、Vistaは安定性や製品化準備の点でWindows XPのBeta 2の段階よりも劣っているという。

 ソフトウェアベンダー、Stardockの社長兼CEOブラッド・ウォーデル氏は次のように語っている。「Whistler(Windows XP)のときは、基本的には、近く製品化予定のOSとして実行できた。だがWindows Vistaでは、ネットワーキングや性能、互換性などの問題があり、ユーザーは同OSをメインのOSとしては利用できない」

 Microsoftが次期ビルドで解消すべき問題点には、以下のようなものがある。

ネットワーキング

 Vistaのネットワーキングは、ウォーデル氏だけでなくMicrosoftの多くの常連テスターにとって頭の痛い問題となっている。Microsoftは同製品の多くの側面を管理者ではなくユーザー向けに調整しており、特にセキュリティとシステム管理に関してはそれが顕著になっている。

 WindowsコミュニティーサイトPlanetX64とPlanetAMD64のサイト運営者兼編集長、カルロス・エチェニケ氏は次のように語っている。「何か少し複雑なことをしようという場合、ネットワークのコントロールパネルは悪夢のような存在となる。このコントロールパネルはシンプルな設定には申し分ないが、それなりのトラブルシューティングをしなければならないパワーユーザーにとっては、切腹しかねない状況をもたらすだろう」

 ウォーデル氏もこの意見に同意し、次のように語っている。「Windows Vistaのこれまでのβ版には、ネットワークの安定をめぐる問題がいろいろとあった。最新OSの基本的な機能が機能しないようでは、誰も実行してみようとは思わないだろう。つまり、フィードバックも減ることになる」

ドライバとアプリケーションの互換性

 多くのテスターにとって、互換性はBeta 2に関するウィッシュリストの最優先項目となっている。

 システムとネットワークのセキュリティを専門とするソリューションプロバイダー、Logikworxの業務執行社員兼CTOを務めるジョン・オベト氏は、「アプリケーションの互換性に関しては、市場に出回っている少なくとも上位500個のアプリケーションに対して必要だ」と語っている。同氏はAbsoluteVistaコミュニティーサイトを運営しており、Vistaのテスターでもある。

 コミュニティーサイトHardwareGeeks.comの責任者マイケル・レイズ氏は次のように語っている。「私個人としては、Vistaの問題の大半はドライバに関するものだ。サウンドスタックやビデオドライバを編集しなければならないだけでなく、ドライバライブラリの多くは非常に粗く、しばしばハングアップの原因となる」

メモリの上限とハンドル

 ウォーデル氏によれば、同氏にとってVistaの主要な2つの問題はメモリの容量とメモリによる「ハンドル」の扱い方だという。ハンドルとは、電子メールやデスクトップ検索など多様なプログラムが使用するコンピュータリソースのこと。

 ウォーデル氏はメモリの問題について、メモリを追加して性能を強化するというやり方は徐々に難しくなりつつあると語っている。「われわれは現在、2Gバイトの限界にぶつかろうとしている」と同氏は語り、Vistaがハイレベルでの動作にそれ以上のメモリを必要とするようなら問題が生じるだろうと指摘している。同氏は2Gバイトという限界について、32ビットプロセッサは理論上1プロセス当たり4Gバイトのメモリにアクセスできるが、通常、上部の2Gバイトは取っておかれる、と指摘している。

 「Windows VistaはWindows XPよりもはるかに多くのメモリを使う。ほぼ2倍だ。リリース時までに、この量が大きく変わるとは考えにくい。現実的に言って、64ビットマシンが標準となるまでには、2Gバイトというメモリの上限が問題になるだろう」とウォーデル氏。

 ハンドルの問題も重要なポイントとなるかもしれない。ウォーデル氏によれば、Windows XPは約3000のハンドルを使用して起動するが、Vistaの場合はハンドルの数は1万5000となる見通し。同氏によれば、ハンドルが1万5000、2万5000になるとWindowsは減速するという。

 MicrosoftがBeta 2ビルドのリリースまでにこれらの修正や調整を行えたかどうかは、近く明らかになるだろう。だがチェリー氏によれば、Vistaは同社が開発プロセス全体を見直す必要性を示唆しているのかもしれない。

 「目下Microsoftが抱えている問題は、もっと早期の段階で機能を完全な状態にしておかなかったことに因るものだと私は思う。プロセスのかなり終盤に入っても、Microsoftはまだ変更や新たな追加を受け入れていたようだ」と同氏は語っている。

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