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100ドルノートPCは子どもを救うだけではない(1/3 ページ)

» 2006年06月28日 10時18分 公開
[Jim Rapoza,eWEEK]
eWEEK

 最近、ボストンで開かれたテクノロジーアワードの授賞式に参加したが、そのイベントで「One Laptop Per Child」創設者にして会長のニコラス・ネグロポンテ氏が100ドルノートPCのワーキングモデルを披露した。

 人道的な観点から見て、このプロジェクトには好ましい点が多数ある。ノートPCのような強力なツールを貧しい子どもたちに与えることは、彼らが自分自身を磨き、地域社会を向上させるチャンスを増やす上で大いに役立つ可能性がある。このコンセプトは基本的には、「(人に魚を与えればその日の糧となるが)魚の釣り方を教えれば一生の糧になる」という古い格言を教育に応用したものだ。

 だが100ドルノートPC(最初は135ドルになる可能性が高い。数年のうちに50ドルノートPCになるかもしれない)には、わたしのオタク的な面にも訴えるものがある。明るいオレンジ色とFisher Price(玩具メーカー)のようなスタイルさえ克服すれば、これは非常にクールなマシンだ。

 ハードウェアスペック――500MHz CPU、128MバイトRAM、512Mバイトフラッシュメモリ――はおそらく皆さんを感動させるほどではないだろう。だが、100ドルノートPCはビジネス指向ノートPCのベンダーに教訓を与えるかもしれない。

 1つ目の教訓は消費電力だ。100ドルノートPCは消費電力が2ワットを切るよう設計されており、電源ユニットにつながれたクランクを回したり、ペダルを踏んで発電して動かすことができる。これに対して最新のノートPCは、消費電力は通常20〜25ワットだ。

 クランクとフットペダルをさておいても、標準的なノートPCバッテリーに接続した100ドルノートPCは、1回の充電で一般的なノートPCより10倍長く動く可能性がある。

 100ドルノートPCには、ノートPC同士を接続できる無線メッシュネットワーキングなど、ほかにも興味深い機能が搭載されている。しかも電源が入っていないときにもワイヤレスメッシュルータとして作動し続けられるという。

 100ドルノートPCは折りたたんでボード型にすることもでき、頑丈で携帯しやすいように設計されている。ディスプレイは直射日光の下でも見える(どうしてそんなノートPCが見つからないんだろう)。

 皆さんはおそらく、これらの特長はどれもほとんどのビジネス向けの用途に関係ないと思うだろう。だが、考えてみてほしい。One Laptop Per Childは現在、7カ国を数える政府と協力し、各国で100ドルノートPCを導入しようとしている。ネグロポンテ氏は最初の1年で1億台を導入すると見込んでいる。

 だが、この予測が大きく外れたら? 導入数がその半分だったら? それでも5000万台というのは、1年間のノートPCの販売台数よりもずっと大きい。

 わたしに言わせれば、どんな製品でも5000万〜1億台となれば大きな影響力を持つ。Microsoftは公には100ドルノートPCを批判しているが、このノートPCで動くバージョンのWindowsを開発しているとも伝えられている。このシステムがより安いコストで導入できてより効率が高いと購入者コミュニティーが理解したら、ノートPCメーカーにも同様のもの――特に消費電力に関して――を提供しなければならないという圧力がかかるだろう。

 100ドルノートPCのシンプルな利用範囲は、メーカーがわたしたちに提供するオプションに影響するだろう。

 確かに、ハードウェアスペックは控えめだが、100ドルノートPCではユーザーがWebサーフィンや電子メール、オフィスの作業を簡単にこなせる――つまり、ノートPCプラットフォームを必要とする人の99%の作業をカバーする。多数の企業とビジネスモバイラーは頑丈で省電力、ポータブルで500ドルを切るコンピューティングシステムに関心を持つだろう。

 わたしも、100ドルノートPCほど効率的に作られたシステムがあったら興味を持つと思う。正直なところ、企業にとっては折り紙でできた白鳥のように役に立たない見せかけの携帯ゲーム・エンターテインメントシステムよりも、100ドルノートPCの方がわたしにはずっと便利に、魅力的に思える。

 わたしたち企業向けITの世界に関わる者は、One Laptop Per Childプロジェクトを歓迎し、支持するべきだ――その慈善的な側面(この計画が進む中で、ITコミュニティーが寄付や支援をする機会がきっとあるはずだ)と、この計画がもたらす技術的な変化の両方において。

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