子供の頃、家族で遊んだ「人生ゲーム」などを覚えているだろうか。コンソールゲーム機やPCのネットゲームが登場する以前、ゲームといえば4〜5人が集まってワイワイガヤガヤと楽しむボードゲームだった。そんなボードゲームが昨今、大人も楽しめる遊びとして静かなブームになっている。
ボードゲームブームの日本での仕掛け人の1人が、バンダイの高橋晋平氏だ。7月15日に、「ドイツゲーム大賞」を受賞した「チケットトゥライド」を発売し、日本でのボードゲーム普及を目指す。
ネット時代らしい仕掛けの1つが、無料のオンライン対戦サイトの開設だ。メールアドレスを登録するだけでログインでき、世界各国の人々とWebブラウザ上でチケットトゥライドをプレイできる。
「ネットでゲームを遊べるようにして、まずは面白さを知ってもらう。そして家族で遊んでもらうときには、ボード自体を買ってもらう。そんな流れにつなげたい」と高橋氏は狙いを話す。
ボードゲームを単に発売するだけでなく、ネットを使って販促を行う──。この手法は、高橋氏が開発したゲーム「シンペイ」での成功に基づいている。
シンペイは高橋氏が学生時代に考案したボードゲームで、シンプルで数分で勝負がつくのが特徴。2005年にYahoo!ゲームに無料ゲームとしての提供を始め、そこから販売に火がついた。Webブラウザ上で手軽に遊べ、数分で決着がつくこともあって、当時で1日20万を越えるアクセスがあった。アンケートによると、ネットでシンペイを知って購入した人は20%に上り、既に10万個近くを売り上げているという。
「ネットゲーム」と「家族でのコミュニケーション」は、最も遠いもののように思われがちだ。しかし、子供も大人も楽しめるボードゲームであれば、ネットで知った、ネットで遊んだことがきっかけとなり、実際の商品購入につながる。元々が集まって対面で遊ぶことを前提としたゲームだけに、ネットゲームとしても面白ければ、実際のボードもほしくなるのは当然だ。
「子供の頃、家族で遊んだボードゲーム、父親と将棋をやった楽しさ──親から子に教えて遊んでいける楽しさを廃れさせないようにしたい」と、高橋氏。ネットゲームが家族のコミュニケーションにつながる。そんな流れができようとしている。
ボードゲーム──というと、子供の遊びと思う方もいるかもしれない。しかし昨今の海外製ボードゲームは、大人がマジメに楽しめることが人気のポイントになっている。真剣に考えて戦略を練るのだが、それでも子供に負けてしまったりする。しかし、運の要素が強いわけではなく、勝ったときには自分の実力の気がする……。こんな絶妙なバランスが、海外ボードゲームの魅力だ。
海外ボードゲームの本場はドイツ。今回日本語版が発売になる「チケットトゥライド」は2004年に、ボードゲーム界の最高権威である「ドイツゲーム大賞」(DSP)を受賞した名作だ。
最初に目的地カードを渡され、そこには「ワシントンからシアトル」など2つの都市の名前が書いてある。自分の電車を地図上の線路に置いていって、目標の都市をつなげるのがゲームの流れ。ただし、電車を置くのは一筋縄ではいかない。
1つの線路には、1人か2人しか電車を置くことができず、埋まってしまったら迂回しなくてはならない。線路には比較的電車を置きやすい短いものから、置くのが難しい長いものまであり、短い線路は奪い合いになるし、長い線路は置くまでに時間がかかる。ほかのプレーヤーの目的地を推理しながら、うまく自分なりの線路をつなげていかなくてはならないのだ。
かなり考えさせるゲームでありながら、直感でプレイした子供に負けてしまったりするのが面白い。「最後の最後まで、勝負が分からない」「誰とプレイしても、きわどい勝負になる」という非常にバランスに優れたゲームだ。
オリジナルは英語版のため入手が少々難しかったが、バンダイから日本語版が発売されることで、街のおもちゃ屋さんでも購入できるようになる。オンラインゲームで腕を磨いたら、夏休みに集まって、友人や子供と楽しんでみてはいかがだろうか。
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