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» 2007年04月06日 17時26分 UPDATE

「ダラダラ長いからCD売れない」――丸山茂雄“47秒・着うた専用曲”の必要性を語る (1/2)

「最近の音楽は“素人芸”。ダラダラ長過ぎて面白くないからCDが売れない。ビートルズの時代のように、ワンコーラス1分以内で作り、着うた配信すれば売れるはず」――SME元社長の丸山茂雄氏が流行歌の現状と、次世代の音楽を語る。

[岡田有花,ITmedia]

 「最近の音楽は面白くない」――に・よん・なな・みゅーじっく代表取締役の丸山茂雄氏は、こう断言する。

 丸山氏はEPICソニー創業者で、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)社長を務めた経験を持つ。2005年にインディーズ音楽を無料配信するベンチャー「に・よん・なな・みゅーじっく」を設立。配信サイト「mf247」で音楽に関わるうち、最近の音楽が昔に比べてつまらなくなっている、と感じ始めた。

 なぜつまらないのか――考えた末思い当たったのは、1曲が長すぎる、とことだ。「昔に比べると1曲がやたら長くて、印象に残るのはサビだけ。言い方は悪いが、サビ以外は付け足しみたいなものだ」

画像 丸山氏=に・よん・なな・ミュージックのオフィスで

 今の流行曲は1曲おおむね5分前後で、サビで最も盛り上がる。丸山氏が高く評価している60〜70年代の音楽が2分半〜3分ほどで、Aメロ・Bメロで終わっていたことを考えると、確かに長い。

 CD市場が低迷を続けているのは、曲が長すぎることが原因の1つだと、丸山氏は分析する。「ミュージシャンはCDで長い曲を聴いてほしいと思っているけど、お客さんはシングルを買わず、着うたのサビだけで十分と思ってる」

 一方で、1曲1分以内で楽曲のサビだけを配信する着うた市場は伸びている。つまりユーザーは、1曲が長すぎるCDを拒否し、短い着うたを求めている――丸山氏はこう考え、47秒で完結する音楽を専門に販売する携帯サイト「47」(ヨンナナ)をこのほどオープンした。

 流行のJ-POPやラップの着うたのように、キャッチーなサビだけを都合良く切り取って配信するのではない。ロックミュージシャンやシンガーソングライターなどに、短いながらも密度の濃い曲を作ってもらい、着うたリスナーに届けたいという。

 「CDショップのCDシングル売場のお客さんは減っている。つまり池の中に魚がいない。だが『着うた』という池には魚がたくさんいることが分かってる。ロック系、シンガー・ソング・ライター系の好きなユーザーはサビだけじゃ釣れないが、必殺のAメロ・Bメロだったら釣れると思う(笑)」

 だが丸山氏のこの思いは、ミュージシャンに十分理解してもらえず苦戦中だ。「今は長い音楽全盛。みんな流行に乗っていて、人と違うことをしようとするミュージシャンがいない」ためという。

 「人のものまねばかりして、それでクリエイターといえるのか? とおれ個人的には思うよ。直接は言えないけど」

 音楽に限らず、新しいチャレンジができる環境は数十年前よりもずっと整っている。だがチャレンジする人がいない――丸山氏はそう言って残念がる。

なぜ楽曲は長くなったか

 そもそもなぜ、楽曲は長くなったのだろうか。理由はいくつかある。

 第1の理由はハードの変化だ。レコード時代、1曲をまるまる高音質に収めるには、2分30秒前後がちょうどよかった。また、当時流行していたジュークボックスで回転率を高めたり、ラジオで何曲もかけるためには、短い曲のほうが歓迎されたという事情もあった。

 1980年代にCDが登場し、4〜5分の楽曲でも音質劣化なしに記録することができるようになる。短い曲ばかりだった当時、一部アーティストが長い曲を作って個性を主張。やがて誰もが長い曲を作るようになり「長くて当たり前」になっていく。

 「みんなが短かった時にちょっと長いのを作ると格好いいと思われる。その長い曲を聞いた人は『おっ、格好いいな』とまた長い曲を作り、曲はどんどん長くなっていった。流行ってのは、そうやってできる」

 それはスカート丈の長さや髪の長さの流行と同じ。「人がやっているから自分もやる」というだけで、クリエイティブではないと丸山氏は批判する。

着うたのヒットは、長すぎる曲への拒絶反応

画像 携帯は最近持ち始めたという丸山氏。いつもサイレントモードだから着うたは利用していないが、初めて着うたを聞いたときは「意外といい音だ」と驚いたという

 長くなりすぎた楽曲を、ユーザーは拒否し始めたと丸山氏は見ている。

 「長くしたら今度は、すいぶん“タルく”なっちゃった。だから(短いフレーズで盛り上がる)“サビ”というのを作ろうか、ということになり、サビが発達した。その結果だんだんサビ以外が“付け足し”みたいになってきた。それが顕著になったのが最近で、その典型がラップ」

 「ラップは“ずんだらくんだらうんだらくんだら”と単調で、何言ってるか分からない。サビで突然『ラララララー』とメロディーが付き、みんな手を振ってそこだけ歌う。そしてまた“うんたらくんたら”……。音楽があるのはララララーだけ。だからみんなサビしか覚えられないし、カラオケで歌うときも、みんな『ラララー』を待ってそこだけ歌うわけ」

 覚えて歌いたいと思うのがサビだけなら、CDは不要。着うたでサビだけ聞けばいいということになる。だからシングルCDは売れず、着うた市場が伸びている――これが丸山氏が分析した今の状況で、「CDシングルの次のメディアは着うただ」と断言する。

“次のメディア”はユーザーが決めた

 音楽を送り出す“業界人”としては、CDを売りたい気持ちがある。だがユーザーが求めているのがCDではない以上、ユーザーのニーズに合わせなくては生き残れないと丸山氏は語る。

 「レコード会社はみんなCD工場を持ってるから、みんなCDを売りたいと思ってる。レコード店とも仲良しだから、レコード店の売り上げが下がるのは気の毒だと思ってる」

 「アーティストはお金かけて高音質でレコーディングしてるから、ユーザーにも高音質なCDで、ジャケットも見てもらって楽しんで欲しいとも思ってる。でもそういうおれたちの気持ちと、ユーザーの聴く態度がズレてる」

 「ユーザーは簡単に聞けるほうがいいし、技術もそっちにどんどん行っている。ウォークマン、iPod、携帯と、基本的に音はどんどん悪くなっていっている。でもユーザーがそれがいいというんだから、仕方ない」

 「次の音楽メディアが何になるかという答えは、レコード業界が決めたんじゃなくてユーザーが決めた。だったらそのメディアに音楽を載せるしかないじゃない。音楽業界が生き残るにはそれしかない」

ロック受難の時代?

 Jポップやラップには、しっかりした“サビ”があるため着うたで売りやすいが、ロックやシンガーソングライター系の曲はそうもいかない。「彼らの曲はサビがそんなにえぐくない。サビだけキャッチーなのをやったら、よく分からないものになってしまう」

 「J-POPはカステラの台があって生クリームとイチゴがあってろうそくが立っていていい。でもロックは渋い料理。サビのところだけ生クリームが置いてあっても料理にならないし、ロックミュージシャンはそんなこと恥ずかしいからやらない。結果、曲が地味になって着うたに負ける」

 ロックミュージシャンやシンガーソングライターが着うたで勝負するには、質の高いAメロ・Bメロを作り、ワンコーラスまるまる着うたの長さに収めてしまえばいいというのが、「47」のアイデアだ。

“素人芸”だと長すぎる曲ができる

 楽曲が長くなった背景には、アーティストの“素人化”もあるという。

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