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補償金はDRM強化よりまし?――私的録音録画小委員会で議論

» 2007年09月05日 18時22分 公開
[宮本真希,ITmedia]
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 「私的録音録画補償金」制度の見直しを検討するため、文化庁文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」の2007年第11回会合が9月5日開かれ、補償金制度を維持する必要性があるとした場合、制度がどうあるべきかを議論した。

 補償金は、MDやCD-Rなどデジタルメディアの販売価格に上乗せして徴収されている。これまで委員会で権利者側は、PCなど録音・録画が主な用途ではない汎用的な機器も課金対象にすべきだと主張してきた。

 しかし対象を広げれば、その機器を使って録音や録画を行っていない多くのユーザーから、補償金を徴収することになる。機器を著作権の複製に使っていないことが証明できれば、ユーザーが補償金の返還を請求できる制度もあるが、返還額は小額で実効性がないなど問題点が多い(関連記事参照)

 これまで同委員会では、補償金をユーザーではなく機器メーカーから徴収すればいいとの意見も出されていた。ただこの意見に対しては「補償金がコストとして機器の価格に反映される可能性が高く、ユーザーの負担は変わらない」との反論も。「ユーザーから直接補償金を徴収しないため、補償金の返還制度を利用する権利が奪われる」との意見もあった。

 IT・音楽ジャーナリストの津田大介さんは「録音・録画に使わない機器からも補償金を徴収されるのは、消費者として納得できない」とし、もし徴収するのなら実効性のある返還制度が必要と主張する。さらに「補償金制度の維持・拡大が避けられないなら、機器1台当たり十円など消費者に負担感がないほど安価に設定した上で、家庭内の私的複製が現在と同様、自由に行えることが必須」と主張。「補償金制度がなくなったら、DRMやコピーガードが強化される可能性がある。DRMが強化されるか、安価な補償金を支払う代わりに自由に私的複製できる状況を取るかの2択なら、補償金を支払う方を選ぶ」とも語った。

 加えて「違法ダウンロードが犯罪化するのであれば、そもそも補償金払うことはできない」と、違法ダウンロードを私的複製の範囲から外して犯罪化しようという著作権法改正の動きを踏まえて釘を刺した。

初出時、津田大介さんの発言について説明不足の記述がありました。お詫びして訂正します。

 主婦連合会副常任理事委員の河村真紀子さんは「そもそも補償金があるから私的録音録画が自由にできるというのはおかしい。なぜ消費者は補償金を支払わなければならないのかをもっと議論するべき」と話した。

 9月26日に開かれる小委員会で中間整理案をまとめ、パブリックコメントを募集する。最終的な報告書は来年1月にまとめ、2月までに文化審議会著作権分科会に提出する予定。

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