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「手がきブログ」が人気 本文もコメントも手書き 「ユーザーは遊びの天才」

» 2008年03月28日 15時39分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像 手書きブログ

 Webブラウザ上で文字やイラストを手書きし、記事やコメントを投稿できる「手がきブログ」が、公開から4カ月で約5万のユーザーを集める人気サイトになっている。投稿数は51万を超え、1日当たりのページビューは最大206万に上るという。

 ユーザーごとの専用ページがあり、投稿が公開されていく仕組みは一般のブログと同じ。違うのは内容の入力方法で、キーボードから打ち込むテキスト入力機能はない。本文やコメント、さらに投稿記事を分類するもタグもすべて、マウスなどで手書きして投稿するのが最大の特徴だ。

 イラストや絵日記の投稿が多く、中には漫画を連載しているブログもあるほか、コメント欄でしりとりをしたりといった楽しみ方も。「ユーザーは遊びの天才」──想定外の使い方に、開発者の川合和寛さん(34)は驚いている。

メニューアイコンも手書き

画像 広いフォームに自由に手書きできる。メニューアイコンも手描きだ

 白いフォームに16色のペンで絵や文字を描いて投稿でき、線の太さも6種類から選べる。投稿を見たユーザーはコメントを付けられるが、コメント欄も手書きフォームになっている。

 タグも手書きだ。正方形のフォームに絵や文字を描いてアイコンのようなタグを作ることができる。ほかのユーザーが作成したタグを利用することも可能だ。

 「RSS」「ブログ一覧」「プロフィール」などマイページのメニューアイコンも、ユーザーが手書きで自由に変えられる。「手書きにできるところは全て手書きにしようと思っている。遊び心を大事にしたい」と川合さんは言う。

ユーザーは遊びの天才

画像 コメント欄も手書き

 昨年11月末の開設当初は「小学生のようなイタズラ描きと文字の日記の投稿がほとんどだった」が、ユーザーが増えるにつれイラストが急増。川合さんが想定していなかった使い方も生まれている。

 手がきブログのコメント数ランキング上位には、漫画の投稿も多い。漫画には「続きが気になる!」「いつも楽しみにしています」「毎日こっそり見ています」といったコメントが手書きで寄せられている。コメント欄を横断してあみだくじを書いたり、しりとりをするユーザーもいる。

 「上半身のイラストに、コメント欄で下半身のイラストばかり投稿するユーザーもいた。ユーザーはみんな、遊びの天才。上半身を描いたユーザーからは、50件ほど苦情が来たが……」

人気ブログで紹介されユーザー急増

 ユーザーが増えたきっかけは、人気ブログ「IDEA*IDEA」(田口元さんが運営)で昨年12月に実施された「歯磨きせずにはいられない歯ブラシ!」のアイデアをブログで投稿するコンテストに、川合さんが手がきブログを使って応募したことだ。

 「使っていると毛が削れて、当たりが出る歯ブラシ」――こんなアイデアで川合さんはコンテストの1位に。アイデアとあわせて手がきブログが紹介されたことでユーザーが増え、アニメ風のイラストなどの投稿が増えていった。

画像 タグ一覧

 「アニメや漫画に詳しくないので、どんな人が使ってくれているのかはよく分からない。同人サークルで漫画を描いている人がいたり、息抜きにイラストを描いているプロの漫画家もいるみたいなんですが……。女性ユーザーが多い印象だが、それもなぜかは分からない」

 1月末にタグ機能を追加したのも、アニメや漫画に詳しくなかったせいという。投稿数が増えたためジャンルで分けたいと考えたが、どんなジャンルでカテゴライズすればいいかが分からない。

 「『文字』『イラスト』という2つのジャンルしか思いつかなかった。タグ機能を付ければ、きっと絵のうまいユーザーが魅力的なタグを書いてくれるんじゃないかと考えた」

手紙の“味”に感動して

 SEとしてIT企業に勤めていた昨年11月末に個人で開設した。山形県の親戚からもらった手紙の“手書きの味”に感動したのが開発のきっかけだ。「本当の日記ってこういうものだよなって思った。似たサイトはなかったので、自分用に作ってみた」という。

 ユーザーも増え、サイトの設備を増強する必要もあったため、資金調達しやすいよう、1円起業で「株式会社pipa.jp」を1月に設立。勤めていた会社を辞め、pipa.jpのサービスとして手がきブログを運営している。社員は川合さん1人だ。

アートかそれともアダルトか

画像 「いまだにペンタブレットを持っていないんです。漫画やアニメも詳しくないので、まずはガンダムを勉強中です」と川合さん

 手がきブログには機能説明がなく、利用規約もシンプルで短い。「ユーザーには好きなことを自由に表現する権利がある。細かなルールを作ってしばるのは違う」との思いからで「サイトをどう使うかはユーザーが自由に決めてほしい」と話す。

 規約の禁止事項には「第三者の権利を侵害し、またはこれらの者に損害、迷惑もしくは不利益等を与える行為」「未成年に悪影響を及ぼす全ての行為」などと定めているが、2次創作やアダルト作品、残酷なイラストなどを投稿するユーザーもいる。

 著作権者から通報を受け、権利を侵害していると確認できれば削除するという方針だ。対応が難しいのはアダルト作品という。

 「アダルトや残酷なイラストは、アートと捉える人もいるかもしれないから判断が難しい。性器が見えているような、子どもに悪影響を与えるよっぽどひどい作品は、削除したり、ほかのユーザーの目に触れにくくなるような対策を施すが、できるだけ規制はしたくない」

画像 利用規約

 ユーザーの自由に任せておくことで“学級委員長”のようなユーザーが現れて、ルールが作られていくのが理想という。実際に「タグの使い方」「手がきブログでのマナー」など、サイトの使い方やルールを提案するユーザーも現れ始めた。

 「手がきブログを始めてから『2ちゃんねる』をチェックするようになった。それまでは匿名で言いたい放題のサイトかと思っていたが、良識を持って制御するユーザーがいるということが分かった。手がきブログもユーザーの良心に賭けて運営していきたい」

 4月から本格的に広告枠の販売を始め、収益化を図っていく考え。携帯電話版(閲覧のみ)の開設も検討していく。

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