東芝は9月18日、映像事業の新戦略を発表した。次世代DVD戦争でBlu-ray Discに敗北し、HD DVD事業からの撤退を発表して7カ月。今後はコンテンツの大容量化とネットワーク化が加速すると見て、HDDやNANDフラッシュなど、東芝のデバイスや技術を活用した新コンセプトのデジタル製品を展開していく。次世代DVD戦争を戦った藤井美英上席常務は、「東芝の強みを束ねることで断トツに差異化していきたい」と意気込む(東芝、“超解像”テレビを発表)。
「Blu-rayはまだ高いね」「これからはダウンロードコンテンツが普及していくだろう」──東京で開いた発表会の冒頭に流れた7分程度のビデオ。日米でユーザーにインタビューし、HDD内蔵テレビやTiVo、AppleTVとホームサーバなどを使いこなすケースを紹介する内容だ。
HD DVD撤退を発表したのは今年2月19日。以来、藤井上席常務は「ポストDVDの戦略立案に時間を費やしてきた」という。「何百億円も損を出して、その後市場調査をやったたまもの」として得た結論から、消費者のニーズは“コンテンツをたっぷりためることができて、それをすばやく簡単に取り出せて、しかも高画質”──という3つにあると判断。記録メディアに依存しない、「Media Independent」というコンセプトを打ち出した。
新戦略の「三本の矢」となるのは、「新高画質」「新機能」「新ストレージ」。高画質化技術と新機能、それを実現する半導体技術、HDD、NANDフラッシュという、東芝の強みを組み合わせる。
液晶テレビ「REGZA」の新製品では、液晶テレビとしては世界初となる超解像技術「レゾリューションプラス」を採用したほか、レコーダー「VARDIA」新製品には、DVDをHD品質で見られる独自のアップスケール技術「XDE」を搭載する。来年発売予定のCellプロセッサ搭載テレビでは、見たいシーンを一発で検索できるなどの新機能を搭載する予定だ。米IntelとYahoo!が提唱した、ウィジェットを活用してテレビでネットコンテンツを表示できるようにする「Widget Channel」に対応した製品の開発も進めている。
ストレージの本命はHDDとNANDフラッシュメモリに定める。REGZA新製品20機種のうち、15機種でHDD内蔵などによる録画機能に対応。将来はHDDを換装可能なレコーダーを商品化する計画だ。HDDに蓄積したコンテンツを、SDメモリーカードで簡単に持ち出せるような製品も開発する。「ユーザーニーズの断トツ1番は記録容量。HDDとNANDを組み合わせるのが東芝の戦略だ。HDDに蓄積し、SDに移動してPCでも見られるといった世界を1日も早く普及させたい」(藤井上席常務)
コンテンツ販売の「Media Independent」にも乗り出す。米国のベンチャー・MODと組み、店頭端末とSDカードによるコンテンツのダウンロード販売も展開する計画だ。
「HD DVDがなくなったせいもあるが、光ディスクはないほうがいいんじゃないか。なんで光ディスクをネットワークにつなげなきゃならないんだという声もあった」と話す藤井上席常務。「未練を断ち切って、HDDとNANDを使った応用製品を出していきたい」と意気込む。
BD製品はレコーダー、プレーヤーとも当面計画はなし。DVDは新興国マーケットなどで今後も十分な需要が見込めるとし、「DVDでしばらく生き延びたい」という。BDに対しては「ノーサイド。負けは認めており、恨みは一切ない。BDには成功してほしい」としつつ、「しばらくはやってももうかる気がしない」と静観の構え。特にレコーダーはほとんどが日本市場向けという特殊な製品のため、ボリュームが見込めない限りは手を出しづらいという。ただ、「東芝はすぐ変わるので、もうかると判断すればいつやってもおかしくない」と含みも持たせた。
2008年下期の「REGZA」は、既に発表済みの製品も含め6シリーズ20機種。そのうち15機種でHDD録画に対応したほか、液晶テレビとしては初となる超解像技術を搭載したのが特徴。10月中旬から順次発売する。
液晶テレビ事業は堅調だ。2007年度実績は出荷500万台・4800億円。2008年度は800万台を計画し、世界シェアは約8%になる見込み。国内液晶テレビ市場シェアは20%が目標だ。2010年には「生き残りの最低条件」として世界シェア10%以上を目指す。
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