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「変化が激しすぎるかも」――急成長「pixiv」の1年を追う(1/2 ページ)

» 2008年12月25日 14時37分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像 上谷さん(左)と片桐社長

 「呼吸している時間すべてがpixivだった」――ピクシブの片桐孝憲社長は、イラストSNS「pixiv」運営のため、寝る間も惜しんで働いた2008年をこう振り返る。

 「変化が激しすぎるかも」。pixivの1年は片桐社長のこの一言に尽きる。昨年9月にオープンし、1年3カ月で月間ページビュー(PV)は4億、会員数は40万に増えた。開設当初サーバは10台ほどだったが、今は100台になった。

 社員は半年間で倍増し、15人に。オフィス(120平方メートル)は3社でシェアしていたが、サーバと社員が増えたことでスペースが足りなくなり、ピクシブ以外の2社は引っ越し。pixivと並行して続けてきた受託開発は止め、これからはpixiv1本でやっていくことを決めている。

 この1年、pixivでは一体何が起こっていたのだろうか、今後も成長は続くのか、運営していて大変なことは何か、来年の目標とは――急成長するpixivの“ゆく年くる年”。

米国の男性からメール「ピクシブで働きたい」

画像 pixiv

 pixivは、自分で描いたイラストを投稿したり、投稿されたイラストに評価・コメントを付けられるサービス。イラスト専門の同人作家だった同社の上谷隆宏さんが「Flickrのイラスト版を作れば、みんなのイラストを探すのが楽」と考え、開発した。

 ユーザーの声を拾い、細かい要望に応えることを心掛け、機能開発を進めてきたという。「開発中に、別のほうが良いと思ったらすぐそっちをやる。あんまり戦略なんてないから1カ月先のことも分からない」(片桐社長)

 会員数は、今年1月時点では5万だったが、現在はその8倍に増えた。5%は海外のユーザー。韓国のユーザーから「登録させてくれてありがとう。今後ともよろしく」とメールが届いたり、米国の10代の男性から「ピクシブで働きたい」とメールが送られてきたこともある。

 「pixiv」のロゴをデザインしたストラップを自作し、送ってくれたユーザーもいた。同社の社員が家電量販店でビデオカメラを買おうとした際、不意にかばんから、そのストラップを付けたバイクの鍵を取り出したところ、それを見た店員が「pixivの方ですか? 毎日イラスト投稿してます」と話しかけてきたこともあったという。

 今年9月、pixiv1周年を記念し、pixivを擬人化したキャラ「ピクシブたん」のイラストを投稿するコンテストを開催したときは、3000作以上が集まった。「いっぱい投稿されたことがうれしくて、そればっかり見ていた」(片桐社長)

画像 「pixivで学ぶイラストテクニック集」を見て盛り上がる上谷さん(左)と片桐社長。「チョビ(ピクシブの社員犬)も紹介されてる」(片桐社長)

 「pixivで学ぶイラストテクニック集」――pixiv人気にあやかった本も今月、晋遊舎から出版された。pixivユーザーがイラストの描き方を紹介する内容だ。片桐社長は「親に自慢できる」と、本の出版をうれしそうに話す。

 このまま会員は増え続けるだろうか。片桐社長は「増えていくとは思うが、何百万にはならないだろう。多くて150万くらいかな」と見る。「100万会員突破したら、うれしくて(ピクシブのオフィスがある)代々木じゅうを駆け回りそう」(片桐社長)

 目標は300万会員。国内と海外のユーザーを150万会員ずつ獲得したい考えだ。「国内で会員が増えなくなれば、海外に出て行く。人が増えると、影響力が上がっている感じがして面白い」(片桐社長)

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