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» 2009年09月03日 21時37分 UPDATE

「ポートピア」は「ドラクエ」の前フリだった 堀井雄二氏のゲーム哲学 (1/2)

「ポートピア連続殺人事件」は、RPGのコマンド操作の練習をしてもらうために発売したという。「ドラクエは常に初心者に親切でありたい」と堀井雄二さんは話す。

[岡田有花,ITmedia]

 「RPGは難しいから、まずはアドベンチャーゲームで慣れてもらおうと思った」――ドラゴンクエストシリーズのゲームデザイナー・堀井雄二さんが9月3日、ゲーム開発者向けイベント「CESA Developers Conference 2009」(CEDEC 2009、パシフィコ横浜)の基調講演で、ファミコン向け「ポートピア連続殺人事件」開発の理由をこう述べた。

 講演で堀井さんは、ポートピアに始まる、自身の“ゲーム開発哲学”を披露。常に初心者に分かりやすいゲームを作っていきたいと話し、「ドラクエは、漫画家さんで言えば、手塚治虫さんより藤子不二雄さんを目指す」と述べた(売れ続ける「ドラクエIX」の作り方 堀井雄二氏らが語る、開発の思想とこれから)。

「RPGは難しいから」まずポートピア

画像 堀井さん

 堀井さんはドラクエ開発以前、PCで米国のRPG「ウルティマ」「ウィザードリィ」などをプレイし、「ファミコンならRPGが作れるのでは」と考えたという。当時流行していたゲームセンターでは短時間で終わるアクションゲームが主流だったが、ファミコンなら家でゆっくりダラダラとプレイできるためだ。

 だが当時は、ファミコンゲームもアクションが主流。「文字が出てきて、自分が動けて……というRPGを出しても、何をどうしていいか分からないだろう」――アクションゲームしか知らないユーザーに、RPGは難しいと考えた。

 アドベンチャーゲーム「ポートピア連続殺人事件」ファミコン版は、初代ドラクエ発売の前段階として、ファミコンユーザーに、「文字が出るゲーム」に慣れてもらおうと作ったものだったという。

 ポートピアは、「言葉(コマンド)を選べばすぐに答えが返ってくる」ゲーム。アクションゲームとは操作法が大きく異なるが、キャラクターがフィールド上を移動したり、戦闘するといったことがないため、いきなりRPGを出すよりは取っつきやすいと考えた。

ポートピアPC版、ユーザーの行動が「想定外」だった

 ポートピアは、PC向けゲームをファミコンに移植したものだ。PC版は、堀井さんが「自分でプログラムして、絵も描いて」1983年に発売した。

 ユーザーインタフェースは、当時のアドベンチャーゲームで主流だったコマンド入力式。主人公が行動を選ぶ際は、「とる」「あける」「いく」などテキストを入力する必要があった。

 だが「ゲームが発売され、PCショップでデモを見たら、僕が想定してない言葉をみなさんが入れていて、プログラムが反応しなかった」という。「それがすごくいやで」コマンドのテキスト入力方式を捨て、コマンドを選ぶだけで進めるようにした。

 「コマンド選択式だとボタンを押すだけで進めるようになってしまい、簡単でゲームにならないのではと思っていたが、意外とゲームになった」――その経験をもとに移植したファミコン版は、もちろんコマンド選択式だ。

 ファミコン版ポートピア発売の翌年・1986年に、初代ドラクエを発売。コマンド選択式のインタフェースは、ドラクエにも取り入れた。

「マニュアルは読まないから」プレイで覚えられるように

 初代ドラクエは、マニュアルなしでプレイできるようにも工夫した。「僕はPCを覚えた時もゲーム遊ぶ時も、マニュアルは読まない。RPGのユーザーもマニュアルは読まないだろうから、読まなくても分かるようにしようと」

 いきなりパーティプレイは難しいだろうと、勇者1人だけの冒険にし、ラダトーム城内の「王様の部屋」という小さな部屋からスタートすることにした。

 この部屋は、「はなす」「しらべる」「とびら」といった基本操作を覚えれば出られる仕組み。マニュアル不要で操作法を体得してもらうためだった。

 「はなす」「しらべる」といったコマンドは、歴代ドラクエシリーズに受け継がれている。「ある意味ドラゴンクエストの文法だと思う。文法さえ覚えてくれれば多少応用があっても、予測もできる」

 ゲーム内で使う言葉も「すごく選んだ」という。「ぶきや」(武器屋)、「ぼうぐや」(防具屋)、「どうぐや」(道具屋)など、ダイレクトで分かりやすい言葉を考えた。「今でこそ『どうぐや』は普通だが、現代の世の中には『道具屋』という店はない」

一番恐いのは、黙って去って行かれること

 最近のドラクエシリーズでも、序盤の分かりやすさには気を配っているという。

 「何していいか分からないのが一番つらい。序盤に分からないと、人はダレちゃうが、分かれば、『こうしたらこうなる』とユーザーに期待が生まれ、そうなると自ら能動的に遊んでくれる。能動的になれれば、どんなゲームも面白い」と考えてるためだ。

 「ゲームをやってくれた上で文句を言う人はまだいいが、一番恐いのは、やり方が分からず、『わたしはゲームに合わない、向いてないんだ』と黙って去っていって、二度と戻ってくれない人。そういう人を増やしちゃいけないと思う」

 「逆に言うと、話題のゲームをやってみて、『あ、わたしでも遊べるゲームがあったんだ』と思えるのは、その人にとってはうれしいこと。そうやってはまっていってると思う」

初代は64Kバイト ドラクエは、ハードとともに進化した

 ドラクエは、初代から最新作「IX」までシリーズを通してヒットし続けている。「シリーズ物の難題は、1が面白いと2はより面白く、と期待値が上がっていくこと。同じぐらいの面白さだと『つまらなくなった』と言われる」(堀井さん)

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