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商店街がなぜつぶやくのか “Twitter商店街”の先駆け・高円寺ルックに聞く(1/2 ページ)

» 2010年02月19日 17時35分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像 高円寺ルック商店街のTwitter

 「これはもう始めないとダメだから。帰ったらすぐにやってみて!」――商店街のTwitter活用が進んでいる。東京都杉並区では、さきがけとなった高円寺ルック商店街が、近隣の商店街にも勧め、Twitterの輪がどんどん広がり始めた。

 「巨大自動販売機のようなAmazonと競争しても、品ぞろえや値段で勝てない。違う切り口でお客さんに喜んでもらえるような仕掛けを」と、高円寺ルック商店街のTwitterアカウント「@koenjilook」の“中の人”中澤一也さん(36)は語る。

 Twitterでは、店のPRにこだわりすぎず、「商店街」や「高円寺」の話題を盛り上げることを意識しているという。例えばフォロワーが「バイトの女の子がめちゃめちゃ可愛い」と高円寺駅近くのカフェの評判をつぶやけば、「確認してきます!」と返信して実際に見に行ったりする。

 1000人以上にフォローされる@koenjilookの人気の秘密は、そのフットワークの軽さと公式アカウントっぽくない“ゆるさ”だろうか。つぶやく商店街の裏側をのぞいてみよう。

「おそらく日本初」のTwitter商店街

画像 高円寺ルック商店街。休日に高円寺の外から来る客が多く、平日の昼間はすいている

 高円寺ルック商店街は、高円寺駅南口に広がるアーケード街「高円寺パル商店街」を抜けた先にある。500メートルほど続くの道の両側に約200店舗が並ぶ。日用品のほか、若者向けの古着や雑貨を扱う店もあり、高円寺の外から来る客が多いという。

 以前からネットを積極的に活用してきた。2000年に、商店街の公式サイトをPCと携帯電話向けに開設。iモードが始まったばかりのころで、商店街の携帯サイトは珍しく、テレビや新聞でも取り上げられた。運営を続ける人手が足りず、携帯サイトはすでに閉鎖したが、「もう一度再開しようかと計画中」だ。

 Twitterは昨年11月に始めた。@koenjilookは、高円寺ルック商店街の店主らで組織する「新高円寺通商店街振興組合」で理事を務める中澤さんが、「何かのときのために」と個人的に取得しておいたアカウントだった。

画像 高円寺ルック商店街の公式サイト

 最初につぶやいたのは、高円寺ルック商店街で開いた落語イベントの現場だ。チケット係をしていた中澤さんは、試しにその場で携帯電話から、当日券の情報をつぶやいてみた。すると、その様子を見ていた客から「Twitterをやってるんですか?」と声をかけられたという。

 その客が@koenjilookについてTwitterでつぶやいたことがきっかけで、フォロワーが徐々に増加。「読んでくれる人がいる以上はやめられない」と、本格的にTwitterを使うことを決めた。「おそらく日本初の商店街の公式Twitterアカウント」だ。

「バイトの女の子がかわいい」――タレコミに即反応

 Twitterでは、割引情報などをつぶやいて客を増やすことより、「商店街」や「高円寺」の話題を盛り上げることを意識しているという。店のPRにこだわりすぎず、“ゆるい”切り口でフォロワーを巻き込み、商店街のファンを増やすことが目的だ。「例えば『店主の息子が大学に受かりました』とつぶやけば、『おめでとう』と伝えに店に行きたくなるフォロワーもいるかもしれない」とアイデアを語る。

 投稿しているのは、中澤さんが商店街の店を訪れた際のリポートや、ラーメン店のスープ切れ情報、周辺の天気、電車の運行状況など。Twitterの検索機能を使って、「高円寺」「商店街」といった言葉を含むつぶやきを常にチェックしており、「高円寺なう」などと投稿しているユーザーには「ようこそ!」と返信して積極的に交流している。

 「高円寺BECK'S(カフェ)のバイトの女の子がめちゃめちゃ可愛い。正統派可愛い子と小顔メガネで可愛い子。いいぞ高円寺!」――フォロワーからのこんなタレコミに、「今度確認してきます!」「ええ、好きですよかわいい女の子」などとノリノリで返信。その後、中澤さんが実際に現場へ行き、「かわいい女の子が多いことは間違いない」と報告したことも。一連のやりとりをまとめたページが作られるほどフォロワーと盛り上がった。


画像 「高円寺BECK'Sのバイトの女の子がめちゃめちゃ可愛い」というタレコミに反応したことも
画像 実際にBECK'Sに行き、「かわいい女の子が多いことは間違いない」と報告

 大晦日にはオフ会も開いた。10人ほどのフォロワーが集まり、除夜の鐘をつきに行ったり、熱燗を飲んだり――と、年越しを楽しんだという。

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