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HP、2012年からすべてのPCにwebOSを搭載――Bloombergが報じる

» 2011年03月11日 11時30分 公開
[Michelle Maisto,eWEEK]
eWEEK

 米Hewlett-Packard(HP)が2012年から出荷するすべてのPCに、webOSを実行する機能が搭載される予定だ。webOSは、HPが米Palmを12億ドルで昨年買収したのに伴って獲得したモバイルOSだ。しかしHPは米Microsoftから離れるつもりもないようだ。同社は今後も、MicrosoftのWindows OSに加え、Officeなどのプロダクティビティツールを提供する方針だ。

 Bloomberg Business Weekの報道によると、これはHPの新CEO、レオ・アポテカー氏が進めようとしている改革の1つにすぎない。

 マーク・ハード前CEOがHPを率いていたころは、研究開発やソフトウェア事業の拡大よりもコスト削減の方が優先された。ハード氏は、HPの契約社員との不適切な関係をめぐる調査の結果、業務上の行動指針に違反したとされ、2010年8月に辞任した

 アポテカー氏は「webOSを自社のPCに組み込むことによって“がっしりとしたプラットフォーム”を構築し、アプリケーション開発者を同OSに引き付けたい」とBloombergに語った。HPがPalm買収を機に参入したスマートフォン市場において、米AppleのiPhoneやAndroid搭載携帯と有効な戦いを展開するためには、開発者を引き付けることが不可欠なのだ。

 AppleのApp Storeには現在、35万本以上のアプリケーションが登録されており、米GoogleのAndroid Marketも25万本のアプリケーションという規模に成長したのに対し、webOS用のアプリケーションの数は約6000本にすぎない。

 アポテカー氏は、製品品質改善への取り組みの強化、各製品グループ間のコミュニケーションの新たなチャネルの作成、HPのソフトウェア資産の拡大といった改革も目指す。同氏がBloombergに語ったところによると、製品品質の改善は顧客満足を高めるだけでなく、サービスと保証にかかわるコストの削減にもつながるという。

 HPは2月14日(現地時間)、米Verticaを買収した。アポテカー氏によると、端末のセキュリティを改善するとともに、ユーザーが大量のデータを分析できるようにするために、今後もソフトウェア企業の買収を進める方針だとしている。ただし、同氏が2010年2月までCEOを務めていた独SAPは対象外だと同氏は付け加えている。米salesforce.comの買収も考えていないという。

 アポテカー氏はさらに、HPの従業員を自社のリソースとして明確に位置付けるとともに、同社が数千人のスタッフを抱えるインドについては、単に低コストの労働力の供給源としてではなく、本格的な市場と見なす考えだという。

 「HPの精神が失われている」とアポテカー氏はBloombergに語った。「私がHPに入って最初にやりたかったのは、従業員の話を聞くことだった。多くの場合、すべての問題を把握しているのは一般従業員だからだ」

 アポテカー氏と経営陣の目の前には仕事が山積している。停滞感のあるPC市場だけでなく、競合がひしめくスマートフォン市場、そして主要な携帯電話メーカーとPCメーカー各社が参入した(あるいは参入を計画している)タブレット市場で競争しなければならないからだ。HPは2月、9.7インチのディスプレイを搭載したタブレット「TouchPad」を発表した。重さは約680グラムで、1.2GHzのSnapdragonを搭載し、webOSで動作する。

 HPは単に競争するだけでなく、市場のリーダーになることを目指している。アポテカー氏は今年、BBCのインタビューで「人々がいつか、“これはAppleのようにクールだ”ではなく、“HPのようにクールだ”と言うようになってほしいと思っている」と述べた。

 クールという点に関しても、アポテカー氏は新たなアプローチで臨む考えだ。その独特のビジネススタイルのせいで、同氏はSAPフランスの元同僚から「シロクマ」というニックネームで呼ばれていたらしい(「孤独で大人しそうに見えるが、近づくと危険」とBloombergは説明している)。同氏は最近、カリフォルニア州に家を購入した。シリコンバレーにあるHPの本社から数マイルの場所だ。パリの自宅は残しているが、アポテカー氏によると、HPをグローバル企業と見なし、オフィスに閉じ込もるつもりはないという。

 「今は自分をカリフォルニア住民だと思っている。“スゴイ”とか“クール”といったせりふも言えるようになった」とアポテカー氏はBloombergに語っている。

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