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N極かS極のどちらかだけの磁石「モノポール」を地球上で作れる──首都大学東京の研究者ら示す

» 2012年02月27日 19時05分 公開
[ITmedia]

 N極かS極のどちらかだけを持つ理論上の磁石「磁気モノポール」を、普通の磁石と白金を組み合わせた簡単な構造で作れることを理論的に示したという論文が、日本物理学会の英文誌に掲載される。モノポールはいまだに発見されていない理論上の存在だが、もし作ることができればレアアース不要で高密度デバイスを作成したり、新たなメモリなどにつながる可能性もあるとしている。

photo 「相対論的効果(スピン軌道相互作用)と磁石中の磁化の運動から生成される磁気モノポール(スピンダンピングモノポール)の概念図」=ニュースリリースより

 論文を発表するのは、首都大学東京 大学院理工学研究科の多々良源准教授と、日本学術振興会の竹内祥人研究員。日本物理学会が発行する英文誌「Journal of the Physical Society of Japan」の3月号に注目論文として掲載される。

 磁石には必ずN極とS極の両方があり、棒磁石を真ん中で切断してもN極だけ・S極だけになったりはせず、それぞれN極とS極を持つ磁石になる。ところがモノポールはどちらかの極だけを持つ素粒子であり、1931年、量子力学を確立したポール・ディラックが存在の可能性を示した。

 その後、宇宙が生まれたビッグバン直後に生成された可能性が理論的に示され(大統一理論)、日本のスーパーカミオカンデなどが発見にチャレンジしているものの、実際には見つかっていない。

 論文では、物質中では対称性の法則が真空や空気中と異なることに着目。白金のもつ強い量子力学・相対性理論に基づく効果により、普通の磁石を構成しているスピンの運動を電子の運動に変換するという。磁石の向きを変化させると電子の運動が起き、この過程でモノポールが生成されることを理論的に明らかにしているという。

 これまではモノポール生成には宇宙初期のような超高エネルギー状態が必要とされてきたが、地球上で比較的簡単に作成できる可能性があるということになる。

 磁気記録では、電流を流すと磁場が生まれるというアンペールの法則を利用しているが、モノポールの作成が実現すれば、磁気モノポールの流れから電気的な力を作ることができるようになる。「磁場と電場を対等に操作することができるようになり、これまでの動作原理を超えた新しい情報伝達や情報記録が可能になる」という。

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