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総務省が募集する「変な人」ってどんな人? 「異能vation」(いのうべーション)担当者に聞く(2/3 ページ)

» 2014年07月07日 08時11分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「失敗を奨励する」と打ち出したことも画期的だ。国費による研究支援は基本的に、失敗の可能性の少ない“堅い”研究が対象。「失敗するかもしれないが、チャレンジングで革新的な研究」を支援できる枠組みはなかったという。

 推奨するのは「ゴールへの道筋が明確になる価値ある“良い失敗”」だ。厳密な仮説を立て、科学的に検証できれば、結果が失敗だったとしても「仮説のAの部分が間違っていて、Bに変えれば成功する可能性が高い」など成功に近づくためのデータが得られる。

 「変な人」枠には繰り返し申請可能。最初の1年間の研究が「良い失敗」に終わった場合、翌年にもう一度同枠に申請し、成功の確度を上げていく――という使い方も想定する。

 「これまでの研究支援は採用の仕組みが保守的で、提案側も保守的。“王道的”な研究にしか資金が回らなかったが、『変な人』は失敗あるべし、まずは挑戦をしようと」――高村氏は意図を説明する。

 支給される研究費は最大で年間300万円。「大規模投資が必要となる前の段階の“研究の目鼻”が付くまで、0を1にする課程をサポートする」という。研究の筋道が見え、確度が高まれば、「変な人」枠から「卒業」。別の研究支援プログラムに引き継いだり支援企業を探すなど、次のステップに向かう。

書類が苦手な「変な人」もOK

 個人の応募は7月14日から受け付ける予定。書類を書くのが苦手な“変な人”も応募しやすいよう、応募フォーマットを工夫する。「日本語でしっかりした応募書類が書ける人もいるだろうが、イラスト1枚で表現する人、単語でしか説明できない人もいるかもしれない。入り口でキャラクターの多様性を失いたくないので、バリエーションを用意する検討をしている」と高村氏は言う。

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 応募課題を審査するのは、「スーパーバイザー」と呼ばれる著名な実業家や研究者など。彼らにキラリと光るイノベーションの種を見つけてもらい、10件ほど採択。早ければ10月にもキックオフを行う。スーパーバイザーは、採択した“変な人”に技術的な助言を行うなど、採択後の支援も担当する。

 外国人著名講師によるサマースクールや学会イベントなど学習・発表の場を用意するほか、契約書などの書類作りや物品管理を事務局が代行するなど、“変な人”の事務処理をサポートする仕組みを整えた。知財の専門家や弁護士も参加し、開発した技術の特許取得や、法的問題への対策も支援する。広報・宣伝なども事務局がサポート。事務局は角川アスキー総合研究所が担当する。

Winny開発者・金子氏のような人を

 応募者として想定しているのは、研究に没頭するあまり社会性が欠如し、入社試験で不採用になったり、問題行動で大学に残れなくなってしまったような“異能”の技術者だ。

 高村氏は筆者の胸元のネックレスを指して言う。「そのネックレスをいきなりつかみ、『成分はなんですか? 裏はどうなっているのですか?』と聞くような人」。ネックレスの成分が気になるあまり、「女性が着けているネックレスをいきなりつかむことは、社会的に許されない」とは考えも及ばない人――というイメージだ。

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