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Googleの法務責任者、“忘れられる権利”について欧主要メディアに寄稿

» 2014年07月14日 08時58分 公開
[佐藤由紀子,ITmedia]

 英Guardianは7月10日(現地時間)、米Googleの企業開発担当上級副社長兼最高法務責任者(CLO)、デビッド・ドラモンド氏が寄稿した「忘れられる権利について話す必要がある」と題したコンテンツを掲載した。ドラモンド氏はこの寄稿文で、この問題の現状と問題点、対策について述べた。

 forgotten

 Googleは同日、このコンテンツを独Frankfurter Allgemeine Zeitung、仏Le Figaro、スペインEl Paisにも掲載したと発表した。

 忘れられる権利(right to be forgotten)とは、欧州連合が2012年に提出した個人データ保護に関する法案で提示した、一般人がWebサービスに対してデータの削除を要求するための権利。欧州司法裁判所は5月、Googleはユーザーから要請があった場合、検索結果から個人情報を含むWebサイトへのリンクを削除する責任を負うという裁定を下し、この権利を認めた。

 Googleはこの裁定を受けて5月末から欧州で検索結果削除のリクエストフォームを公開し、既にリンクの削除を開始しているが、Guardianの記事へのリンクを削除した後復活させるなど、裁定順守の難しさが課題になっている。

 forgotten 2 デビッド・ドラモンドCLO

 Googleは従来、1948年に国連総会で採択された「世界人権宣言」の19条(すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む)を尊重し、誹謗中傷やマルウェアなど、最低限のコンテンツのリンクについてのみ削除してきたが、現在既に25万以上のWebページが関連する7万件以上の削除申請を受けているという。同社は専門のチームを結成し、すべてのケースを個別にレビューしているという。

 この裁定の問題点として、具体的な基準が示されていないために個別のケースの判断が難しいことや、検索エンジンには報道を例外として扱う権利がないことを挙げている。後者はつまり、例えばGuardianのようなメディアは個人名を含む記事を掲載できるが、検索エンジンは(削除要請があった場合は)その個人名で検索した結果ページにその記事へのリンクを表示してはいけないことを意味する。ドラモンド氏は「これは図書館に書籍を置けても、その書籍を図書目録に記載できないのと同じだ」と言う。

 ドラモンド氏は判断が難しい申請の例として、元政治家が在職中のポリシーを批判する投稿の削除を求めたものや、暴力犯罪の犯罪者が事件の記事の削除を求めたもの、建築家や教師などが自分に対する批判的な評価の削除を求めたもの、投稿したことを後悔している自分のコメントの削除を求めたものなどを挙げた。こうしたコンテンツに対しては公開し続けるべきだという意見もあり、個人のプライバシーの権利と知る権利のバランスが非常に難しいという。

 同氏はまた、この問題に取り組むために結成した社外の専門家を含む審議会のメンバーを発表した。Googleからはエリック・シュミット会長とドラモンド氏が参加し、Wikipedia創設者のジミー・ウェールズ氏や人権専門の大学教授など10人で構成されている。

 この審議会のページでは、この問題に対する一般からの意見も求めている。

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