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» 2014年12月09日 13時10分 UPDATE

デジタル化、小型化の次は? 時代に求められる文字を提案する 「AXIS Font」、15年目の挑戦

デジタル化やデバイスの小型化を見据えて開発され、発売から10年以上経っても愛され続ける「AXIS Font」。次の50年を見据える今、フォント制作に対する思いを聞いた。

[山崎春奈,ITmedia]

 Appleの日本向けWebサイトなど、企業サイトなどで多く採用されている「AXIS Font」が、リリースから15年を前に大幅アップデートされた。文字を取り巻く環境やデバイスが大きく変化するなか、「時代の流れを先読みして社会に必要となるフォントを提案するのがフォントデザイナーの仕事」――タイププロジェクトの鈴木功社長とデザイナーの両見英世さんに話を聞いた。

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「AXIS Font」、10年目のアップデート

photo AXIS Fontが初めて使用されたAXIS誌93号 (2001年9,10月号)

 「AXIS Font」はデザイン雑誌「AXIS」の専用フォントとして2001年に誕生した。日英併記の横組みの同誌に合わせ、和文・欧文の統一感を重視したバイリンガルフォントであることが特徴だ。採用当時から読者や企業から利用したいという問い合わせが多く、03年に一般向けに発売。発売から10年以上経つ今も人気が高い。

 Appleやポーラ、カンペール・ジャパンなどデザイン志向の強い企業を中心にブランディングツールとしてWebサイトやカタログなどに採用されてきた。紙媒体だけではなく、NTTドコモの携帯電話や「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」などのゲームやアプリ、デバイスへの組み込み、Webフォントへの対応など活用の場面を広げている。

 初めての大幅アップデートとなる今回、収録文字数をこれまでの9354文字から1万5525文字に大幅に拡張。個人名や特殊な用語などにも対応し、コーポレートフォントとしての利用やデバイスへの組み込みなどを一層促進していきたいという。

少し先の未来をもっと快適に

 鈴木社長は「もっと早く文字拡張に取り組む手もあったが、あらゆる場面で利用できるようファミリーを増やすことをまず優先したかった」とここまでの歩みを振り返る。

photo アニメ「アルドノア・ゼロ」のアートワークに使われた「TP明朝」

 極細書体「ウルトラライト」、横幅を狭めた長体「コンデンス」、超長体「コンプレス」を和文フォントとして初めて実現したのが同フォントだ。AXIS Fontと統一感のある“デジタルデバイスで使える明朝体”として、今年初めには横組みに特化した「TP明朝」も発表し、さらに幅広い用途に対応可能になった。

 特に長体は、デバイスの小型化、デジタル化を見据え、小さなディスプレイに多く文字を表示する効率化と見やすさを両立させたこだわりの字形。アルファベットではポピュラーな形だが、日本語では本格的なものがなく、世にあふれるディスプレイやデバイスでの表示に違和感があるのがどうしても見過ごせなかったという。

photo 長体フォントを使うと小さな画面に効率よく情報を表示できる
photo 正体との比較。鈴木社長はコンプレスの「か」が1番気に入っている字だという

 06年に「コンデンス」、09年に「コンプレス」を発売後、スマートフォンなどの普及に合わせてニーズは拡大している。「いずれ必ず社会に必要になるフォントだという信念で作ったので、この2、3年で明らかに目にする機会が増えてきてうれしい」と鈴木社長は話す。

 “雑誌専用フォント”というと紙媒体に特化したイメージがあるが、デジタルへの対応は開発当初から大きなテーマだったという。「誌面の余白を残しつつ、写真を最大限に活かした雑誌『AXIS』自体が、今考えるとある意味タブレットのような見た目。読者の視線移動を邪魔しないこと、存在感がありながら空気のように溶け込むことを意識し、数年後どんな環境で使われるかを考えて作ってきた」(鈴木社長)

「面白い」を引き出す「都市フォント」

 同社が手がける事業のもう1つが、地域の文化や歴史、イメージを調査し、文字に反映させようという「都市フォント」プロジェクトだ。現在、横浜と名古屋の2都市で「濱明朝体(仮)」「金シャチフォント」の制作や普及に取り組んでいる。「普段東京に住んでいても、地元に戻ると方言が出る人が多いはず。言葉づかいや感情表現は変わるのに文字はそのままでいいの? というのが出発点」(鈴木社長)

photo 濱明朝体(仮)と金シャチフォント

 「濱明朝体」ではモダンで国際的な雰囲気を、「金シャチフォント」ではシャチホコの反りや名古屋城の屋根の形を取り入れるなど、普段フォントに興味がない人にも「面白い」「使いたい」と声をかけてもらえる機会が多いのも、このプロジェクトを続ける大きな意義になっているという。

 「すべての人の目に四六時中目に入っているのに文字の存在価値が世の中で低すぎる、というもどかしさがずっとある。まずは『面白いね』と思ってもらう機会を増やしていきたい。デジタルフォントの作り手が増え、盛り上がっている今の状況はとてもうれしい」(鈴木社長)

次の50年を見据えて

 未来を見据えてフォントを作る――小型デバイスの登場を予期して長体化に取り組んだように、タイププロジェクトが今意識しているキーワードの1つは、ウェアラブル端末だ。

 ニュートラルで読みやすく機能的な汎用性を高めたフォントだけでなく、都市フォントのような独特の個性やニュアンスがありユーザーに寄り添う方向性にも力を入れているのは、よりプライベートな空間で個人の嗜好に合わせて文字を選ぶ時代を思い描いているからだという。

photo 鈴木功社長(右)と両見英世さん。「和文フォントは欧文に比べてフィニッシュのさせ方に幅があるところが魅力」と話す両見さんのお気に入りは漢字の「おんなへん」。「余白の使い方を考えるのが気持ちいい」

 Monotypeが運営するフォント販売データベース「fonts.com」の売り上げトップ100のうち唯一の和文フォントとなり、日本企業の製品/アプリのグローバル展開、欧米企業の日本語ローカライズの際の採用など世界的にも注目を集めるAXIS Font。開発から約15年、活用の場所や可能性を広げているが目標は高い。

 「始めた頃はここまで続くとは正直思っていなかったが、同サイトで常に人気上位の『Helvetica』『Universe』などはもう50年以上愛されている字体なので、比較するとまだまだ。そこに続くような、少しでも近づけるような長く愛されるフォントにこれからも進化させていきたい」(鈴木社長)

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