オフィスがもし東京にあったら「今の小説家になろうはなかっただろう」とも。創業当時は来客もほとんどなく「サイトの開発・運営に全力で当たれた」ためだ。今でも、東京にオフィスを構えるメリットは思いつかない。「東京にいても、連絡にはメールや電話を使うのだから京都でも同じ。東京に出張することはあるが、行きたい時に行ければいい」
サービスの広告を出したことは一度もなく、口コミだけで成長してきた。現在、サイトの月間ページビュー(PV)は約9億5000万、ユニークユーザーは約400万を数える。
今年1月ごろはPCのPVがスマートフォンの倍ほどあったが、10月にはPC・スマホがほぼ並んだという。ユーザーは6割超が男性で、年齢層は20代が5割・10代が2割と、10〜20代で7割を占める。書籍を購入する人は30〜40代が多いという。
サイトからの収入の90%を広告から得ている。年間売上高はオープン当初から成長を続けており、現在は「億は超えている」という。残り10%は、出版社と協力して展開する作品募集コンテストなどタイアップ企画からの収入だ。
広告はトップページや小説本文ページなどに掲載しているが、本文を邪魔する場所には貼らないなど読みやすさを妨げないよう配慮。投稿・閲覧とも有料化は考えていない。梅崎さん自身がもともとネット小説を読んでおり、「金銭が絡むとユーザーとしてはあまり喜べなかった」ためだ。
同サイト発で発行された単行本は優に100冊を超えた。ベストセラー作品も多数生まれており、最大級のヒットとなった「魔法科高校の劣等生」(電撃文庫)はシリーズ累計560万部発行され、アニメやゲームなどマルチメディアに展開した。
今後も、投稿作品がいろいろなメディアや端末で楽しめるようにしていきたいという。人気を得た投稿小説が書籍化され、その後、アニメ化などマルチメディアに展開する――という流れが今は一般的だが、「Web小説から直接ゲームやアニメになってもいい」と梅崎さんは言う。
同社自ら書籍レーベルを立ち上げて出版することもできそうだが、その予定はないという。「当社はIT企業。出版のノウハウはない。自ら出版することも不可能ではないかもしれないが、それによって既存の出版社との関係を悪化させてしまうと、かえって書籍化の道を閉ざす可能性もある、あくまで投稿のプラットフォームでありたい」
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