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もう「原作と違う」と言わせない──2Dイラストをそのまま立体アニメにする「Live2D」 世界標準目指す(1/2 ページ)

» 2015年02月02日 11時00分 公開
[山崎春奈,ITmedia]

 「描いたイラストがこのまま動けば楽しいのに!」 そんなすべての絵描きの夢を叶える技術「Live2D」の新バージョン「Live2D Euclid」が発表された。2Dイラストを原画のまま上下左右360度に立体的に動かすことが可能になり、映画やアニメなど活用の場はさらに広がりそうだ。この「目指してきた1つの到達点」で世界標準を目指す――創業から9年目、中城哲也社長にこれまでの歩みと今後の展望を聞いた。

photo 2Dイラストを原画のまま上下左右に動かせる(Live2D Euclid)

「原作と違う!」ともう言わせない

 Live2Dは、2次元イラストを原画のまま用いて、立体的なアニメーションを付けられる技術だ。描画ソフトで描いたイラストを同ソフトに取り込み、キャラクターの画像を髪や眉毛、目や口など複数のパーツに分割。それぞれに編集用の平面ポリゴンをはりつけることで立体的な2次元モデルに再構築する仕組みになっている。まばたきや微妙な表情変化をパーツごとの角度や動きで調整できるほか、方向ごとに輪郭やパーツの位置などを変更すれば、どの角度から見てもナチュラルな見せ方を追求できる。

photo パーツごとに動きを調整する
photo 左のパラメータで角度や位置を細かく指定

 一時は漫画家を目指した時期もあるという中城社長が「描いたイラストをなんとかこのまま動かせないか」という気持ちで開発を始めたのがLive2Dの原型となった。「3Dの勉強もしたが、描画と造形はまったく概念が違う別の技術。Flashや手描きアニメとも違う、2Dを2Dのまま立体的に動かせるツールがほしかった」と話す。

 最も大きな特徴は表現力の高さだ。原画をそのままに動きを付けられるので「アニメと原作が違う」「キャラ設定ではかわいいのに3Dになるとイメージが……」ということが当然なくなり、細かいディティールや表情を描き手の思うように再現できる。従来の技術では難しかった水彩タッチや半透明の色合いのイラスト、墨絵などを動かすのも難しくない。

photo イラストを取り込んでテンプレートと重ねるとすぐに動き出す

 2Dイラストを3Dモデルとして再構築するには、ゼロからモデルを作成する必要がある上、独特の制約にぶつかる。「例えば『鉄腕アトム』の髪型を思い浮かべると、前から見た時と横から見た時では形が違うように、異なる方向からの見え方をまったく別物として描けるのは2D表現ならでは。3Dモデルはどこからでも見られるよう整合性を付けなくてはいけないので、どうしても妥協案になったり、複数の3D形状を作成してブレンドする必要が出てくる」(中城社長)

 とはいえ、「3Dとは出発点や発想が異なり、競合するものではない」と説明する。「動きをよりダイナミックに緻密にしたい時は3D、表現力を追求したい時はLive2Dと使い分けることで動画表現はもっと進化できるはず。同じ切る用途であってもハサミとナイフが別のシーンで使われるように、映像やゲームの世界で当たり前のように使い分けされる1つの手段になってほしい」(中城社長)

上下左右360度動かせるように 「Live2D Euclid」で世界を狙う

 昨年12月に発表した開発中の新バージョン「Live2D Euclid」は「これまで磨き上げてきたものの1つの到達点」(中城社長)であり、活用の幅を大幅に広げる可能性のあるプロダクトだ。

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