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働く“キラキラ女子”はかっこいい――Web業界のお仕事事情を描く“ITきゅんきゅん系”漫画「彼女のいる彼氏」(1/4 ページ)

» 2015年12月25日 14時00分 公開
[山崎春奈ITmedia]

 キラキラ女子とオラオラ男子に囲まれて――雑誌「ROLA」(新潮社)デジタル版で連載されている漫画「彼女のいる彼氏」がじわじわ話題を集めている。“キラキラ女子”が多いことで有名な大手Web系企業「サイダーエイジ ジャパン」で働く入社4年目のUIデザイナー・小泉咲を主人公に、業界のお仕事事情を描く“ITきゅんきゅん系”漫画だ。

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 「仕事の描写が妙に生々しい」「全然違う業界だけど『分かる』と思ってしまう」「こんな華やかな世界、自分の知ってるWeb業界と違う!」――デザイナーとエンジニアの小さな衝突、社内調整を繰り返してクライアントの要望に応える広告プランナーの葛藤、日々チームを鼓舞しながら目標を追いかけ続ける自社サービスプロデューサーの奮闘など、さまざまな立場から描かれる仕事の描写のリアルさが好評だ。

 もう1つの要素は、咲を取り巻く恋愛模様。女性に優しくチャラい広告制作プランナー・徳永靖太郎、年下の才能あふれるデザイナー・佐倉直己の2人の男性の間で揺れ動く。読者の間では「徳永派」「佐倉派」がまっぷたつ。「こじらせている」と自称する咲を叱咤激励する“キラキラ女子”の同僚たちもストーリーを彩る。

photo 主人公・咲の同期の徳永靖太郎
photo 年下のデザイナー・佐倉直己

 作者の矢島光さんは、Web系企業でエンジニアとして働いた経験を持つ経歴の持ち主だ。「正直、キラキラ女子が怖いんですよ。だからこそその憧れを描きたい」と話す矢島さんがこの作品に込める思いは。

内定辞退するつもりが……? Web企業でフロントエンジニアを

――やはり読者の皆さんが気になるのは「これって、あの会社だよね?」ってところだと思うんですが……。

 あはは、いきなりですね(笑)。そうです、私が新卒入社した会社、サイバーエージェントで働いていた時の経験があの漫画の元にあります。2012年に入社し、アメーバピグのフロントエンジニアをしていました。当時書いていたのは、漫画でもイラストでもなくActionScriptです。

――不思議な経歴ですが、漫画はいつくらいから描いていたんですか。

 在社中は出勤前と帰宅後にひたすら描いていましたね……大学時代は山中俊治先生の研究室でメディアアートやプロダクトデザインを学んでいて、絵は独学です。

 「漫画家になる!」と決めたのは、小学生のころに「りぼん」で種村有菜先生の「イ・オ・ン」の見開きの表紙を見た瞬間です。そこから将来の夢はずっと漫画家と言い続けてきたのですが、手を動かしていたわけではなくあくまで「夢」でした。中高6年間はバトン部に捧げ、毎日部活部活。本格的に漫画を描き始めたのは結構遅くて、大学2年ですね。

 研究室の先輩に「光ちゃん、漫画家目指してるんだって? 絵見せてよ〜」って言われて「そうだ、描こう」となって。……軽口を叩きながらこの後も何度も私を励ましてくれたこの先輩が、何を隠そう徳永のモデルの1人です。

――徳永にモデルが! 最初から描きたい漫画の方向性は決まっていたんですか。

photo 矢島光さん

 いやいや全然! むしろ「恋愛漫画は無理」くらいに思っていました。「りぼん」を愛読してきたけど私にはあの世界は無理だぞ! って。とか言いながら、最初に描き上げた漫画は「ハチミツとクローバー」の二番煎じみたいなもので――今思い返すと恥ずかしくて死にそうなんですけど――「マーガレット」の編集部に持ち込んでボロボロに言われた覚えがあります。

 そこからいくつか描き上げたものの、どうしても自分が何を描きたいのかしっくりこなくて悶々と悩んでいました。4年生になった時にもうこれで崖っぷちだと思って、高校バトン部を舞台にした作品をモーニングの新人賞「MANGA OPEN」に応募しました。経験も思い入れも十二分にある絶対に描きたいテーマ、これでダメならダメだ、と背水の陣でしたね……。その作品で、佳作を受賞したと連絡が来たのが卒業間際の1月です。研究室で泣きながら電話に出たのでよく覚えてます。

 サイバーエージェントには大学3年からインターンでお世話になっていて、肌が合ったのでそのまま新卒として就活もして。でも保険というか、当時の自分としては漫画家になることの優先順位の方がずっと高いわけですよね。受賞連絡の電話を受けて、やった! これで漫画家になれる! と先走って、当時の担当さんに「私、今決まってる内定辞退しますんで!」って意気揚々と連絡したら、絶対やめるな! って怒られました。「サイバーエージェントに内定決まってる漫画家なんていないから! 経験は武器になる、1回社会を見てこい」――まぁそう言うなら……と、当時はしぶしぶ決めました。今振り返るとすごく感謝してます、そう言ってもらえてよかったです。

“キラキラ女子”はかっこいい

――ということは「いつか自分の仕事を題材に漫画を描こう」と決めていたんでしょうか。

 いえ、そんなネタ探しのような気持ちではなくて(笑)、全力で仕事した日々がシンプルにすごく楽しかったからです。

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