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なぜ今、「転売NO」と訴えたのか――チケット高額転売問題、音楽業界の“本音”(4/5 ページ)

» 2016年10月14日 14時31分 公開
[岡田有花ITmedia]

 ライブは生身の人間が自らをすり減らしながらやっているため、むやみに回数を増やせない。大きな会場を借りられればいいが、そのためにはリスクを張れる大きな資本が必要。日本の音楽業界は資本が小さいため難しい。首都圏ではホールや劇場が多数、改修工事に入り、ライブ会場が不足する「2016年問題」も起きている。フェスを開拓するなど機会を増やす努力はしているが、限界がある。

チケット価格含め、変えていかなくては

――市場価値を反映しない「一律低価格」のチケットは、時代に合わなくなっている。

 多様な選択肢を求めるユーザーニーズが確かに存在し、チケットキャンプのような転売サイトがそれを満たしていたことは認めなくてはいけない。価格が極端に高騰しない、“健全な”2次流通マーケットの必要性はすごく感じている。

 それ以前に、1次販売のあり方も考えなくてはならない。「チケットぴあ」などで一部始まっているが、一度購入したチケットを定価以下で再販できる仕組みなど、ライブに行けなくなった人の救済は急務だ。その後、チケットの価格にメスを入れることも始めざるを得ないだろう。

 チケットの価格設定も含めて「変えていかなくては」という認識は、音楽業界にも広がりつつある。今回、「転売NO」のキャンペーンをきっかけに、ファンのマインドも、多様な価格のチケットを受け入れる方向に変わりつつあると感じている。寄せられたマーケットの声を、業界やアーティストと共有しながら考えていきたい。

「本人確認で転売対策」には限界も

――転売を防ぐため、チケットを購入した本人しか来場できないよう、本人認証を厳格化する手段もある。

 チケット購入時にスマートフォンのSMSで端末を認証して本人確認し、スマホ1台あたり1回しか買えないようにする仕組みは今後、メインストリームになってくるだろう。

 チケット購入者が顔写真を登録しておき、ライブ会場で係員が照合する顔認証システムを導入しているアーティストもいるが、導入コストが大きく、チケット価格にコストが反映されてしまう。認証の厳格化にも限界がある。

画像 顔認証システムを提供しているテイパーズの公式サイトより。同社は「ももいろクローバーZ」など多くのアーティストのイベントにシステムを提供している

――ネットダフ屋を規制するための法改正も訴えていくのか。

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