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ボブ・ディランからスティーブ・ジョブズは何を学んだのか(プレイリストつき)立ちどまるよふりむくよ(1/3 ページ)

» 2016年10月15日 13時26分 公開
[松尾公也ITmedia]

 ちょっと驚いた。ボブ・ディランがノーベル「文学」賞を受賞したのだ。平和賞ではなく。びっくりして、AP通信の記事を急いで翻訳した。選定にあたったスウェーデン・アカデミーのサラ・ダニウス事務次官はディランについて「常に自分を再発明している」と評している。

 「再発明」と言えばAppleの創設者の1人、故スティーブ・ジョブズ。

 再発明つながりの2人の関係については2011年、ジョブズが亡くなった後にブログで書いたことがあるのだが、幾つかの追加情報を入れてまとめてみた。

Macintoshで時代は変る

 ジョブズはディランの大ファンだ。公式伝記によれば、スティーブ・ウォズニアックもマニアで、2人はディランのブートレッグ盤をあさりに遠出したりしていた。集めたブートレッグは100時間分以上、1965年と66年のツアーはすべて持っていた。ちょうどギターをエレキに持ち替えた時代の熱気を知りたかったのだろうか。当時ジョブズは15歳、ウォズは20歳。ジョブズは詩の意味を追い求めることに、ウォズはテープの使用量をいかに切り詰めるかに夢中だった。

 当時のブートレッグ集めは通販で買うわけではなく、収集家と交渉してオープンリールのリールからリールへコピーするという方法だった。ウォズはテープを半速でダビングして使用量を節約するという、後の「ソフトウェアの工夫でチップの数を減らす」的なことをやっていた。

 ジョブズはヘッドフォンを使って何時間もその演奏を聴き、歌詞の意味を探っていたという。

 もっともウォズの記憶はちょっと違っていて、ジョブズと最初に会ったとき既にウォズはディランの全アルバムとブートレッグもいくつか持っていて、ジョブズは"Like A Rolling Stone"の歌詞を一部覚えているくらいだった。ジョブズにディランを教えたのは自分だし、コンサートチケットを買って一緒に行ったのも自分だとGoogle+の投稿で主張している

 ともあれ、ディランが2人のスティーブをより結びつけたのは確かだろう。

 6年後、スティーブズはApple Computerを設立。会社を経営するようになってもジョブズのディランマニアっぷりは変わらない。

 1984年のApple Computer年次株主総会の冒頭で、ジョブズはこんな「詩」を読み上げる。「車輪はまだ回っている。敗者は後の勝者に、なぜなら時代は変わっていくものだから」

photo 若きジョブズが"The Times They Are A-Changin''"と朗読する
photo 「時代は変る」の歌詞はディランの公式サイト

 ボブ・ディラン「時代は変る」の一節だ。その38分後、リドリー・スコット監督のCM「1984」が上映され、Macintoshが初めて披露される。

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 IBMをビッグブラザーに見立て、「ジョージ・オーウェルは正しかったのか?」と煽るジョブズだが、その32年後には歌詞を全て記憶したというWatsonと対話するディランのCMが登場するという皮肉。

photo Watsonの歌を聞いて退出するディラン
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