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2016年11月14日 20時58分 UPDATE

「ロボットは東大に入れるか」成果報告会(1):“東大断念”も「近未来AIとしての結果に驚き」──人工頭脳「東ロボくん」、今年は535大学が合格圏内に

大学入試問題でAIの進化を測る「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトが2016年の成果を報告。昨年を大きく上回る成績を記録したという。

[山口恵祐,ITmedia]

 東京大学合格を目標に開発が進められている人工知能(AI)「東ロボくん」が、東大入試を断念した――先日、こんなニュースが話題になった。同プロジェクトを主導している国立情報学研究所(NII)は11月14日、東ロボくんに関する2016年の成果報告会を実施。「センター試験を『人間と同じように』解く取り組みは今年度で凍結する」(NIIの新井紀子教授)としつつ、これまでの成果と今後の展望を明かした。

photo 実際に答案用紙へ答えを記入する「東ロボくん」のロボットアーム

 「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトは、NIIが2011年にスタート。大学入試問題を指標にAIの進化を客観的に測ることを目的とし、16年までにセンター試験で高得点を獲得、21年春までに東大の入試を突破できる人工頭脳の開発を目指してきた。

 だがこのほど、東大合格を断念する方針を発表。新井教授は「(AIの進化を客観的に測る)プロジェクト自体は成功した」としつつ、「東大を(人間と同じように)目指そうとすると、全ての分野を強化しなくてはいけない。AIにとって難しい『意味を理解する』という分野を突き詰めようとすると、膨大な時間とコストがかかる」と話す。

 今後は税金で運営される国立機関として「選択と集中」を行い、AIが得意なことや得意そうなことを伸ばして産業応用への道を目指すとしている。

東大プレに挑戦、数学では偏差値76.1を記録 「この結果に驚いている」

 東ロボくんは13年からセンター試験模試に毎年挑戦。今年は、センター試験模試「進研模試」(ベネッセ)に加え、東大の2次試験を想定した論述式模試「東大入試プレ」(代々木ゼミナール)の地理歴史(世界史)と理系数学をそれぞれ受験した。

 その結果、センター試験模試では5教科8科目の合計で525点を獲得し、全国平均の454.8点を上回る結果に。偏差値は57.1を記録した。ベネッセが算出している「合格可能性」をみると、国公立・私立を合わせて756大学2329学部6405学科のうち535大学1373学部3046学科で80%以上となる。これらの中には「MARCH」「関関同立」と総称される難関私立大学も含まれていたという。昨年の合格可能性80%以上は474大学1094学部で、61大学増えたことになる。

photo 東ロボくんが合格できる大学は?
photo 東大2次試験に向けた模試(数学)の偏差値推移

 さらに東大入試プレでは、理系数学で偏差値76.2と高い結果を記録。「プロジェクト開始当初は、ここまでの結果にたどり着く可能性は五分五分、メンバーにも『新井先生、無理です……』とまで言われていた。しかし、ここまでこれたのは関係各所のおかげ。近未来AIの可能性としてこの結果に驚いている」と新井教授は話す。

「大学入試問題はAIのベンチマークに最適」

photo NIIの新井紀子教授

 同プロジェクトは13年以降、大学入試の問題に挑戦して研究成果を評価検証し、AIの技術課題を抽出してきたという。「問題文を読んで理解し、答えを導き出す大学入試問題は、自然言語処理といったさまざまな技術が求められる統合的な課題。AIの進化を客観的に測るベンチマークとして最適」(新井教授)としている。

 今回の結果では特に、論述式の理系数学で6問中4問に完全正答し、偏差値76.2という高成績を記録した。名古屋大学、NII、富士通研究所を中心とする東ロボ数学チームによれば、従来は問題文を言語処理してから計算可能な形式へ変換し、数式処理プログラムを適用する――といったプロセスの自動化に課題があったが、日本語辞書の拡充と構文解析技術の改良によって改善できたという。

photo

 「今後は、構文解析や文間関係認識といった言語処理技術の高精度化や、言語処理と数式処理のさらなる融合で『考えながら読む』技術の研究開発を進める」(東ロボ数学チーム)としている。

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