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2017年01月20日 08時00分 UPDATE

“中の人”が明かすパソコン裏話:将来、“パソコン”は姿を消すのが当たり前!? 働き方とPCの未来を予測してみた (1/2)

メーカーの中の人だからこそ知っている“PCづくりの裏話”を明かすこの連載。今回は、PCと働き方の未来を考えます。

[白木智幸(日本HP),ITmedia]

 こんにちは、日本HPでPCの製品企画を担当している白木智幸です。この連載では、PCの周辺機器やPCパーツ、機構の仕組みなど、普段は脇役ともいえる部分に光を当て、それらの素晴らしさや製品を選ぶときに気を付けたいポイントを紹介してきました。

 今回は、PCと働き方の未来に目を向けてみたいと思います。スマートフォンやタブレットの普及に押され、「将来はPCがなくなるのでは」という話題が取り沙汰されているようになってしばらくたちますが、実際のところいかがでしょうか。皆さんはPCの利用シーンが少なくなったという実感がありますか?

 振り返ると、タブレットの普及は2010年の「iPad」発表が大きな起点となったと思います。当初は、“スマートフォンの画面を大きくしたもの”といった位置付けからスタートしたように思います。

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 その後、便利さと先進性を感じるスタイリングから、さまざまな用途にタブレットが普及しました。「ソファに寝転んでWebを参照する」「立った姿勢で電子書籍を読む」というように、従来のPCでは難しかった利用シーンで活躍が目立つようになりました。

 しかし、アプリでコンテンツを閲覧することは快適でも、何かをタブレットのみで“創りあげる”のは難しいということに気が付きます。

 動画編集やフォトレタッチ、DTM(音楽制作)、文書やプレゼンテーションの作成機能などを提供するアプリもありますが、多くの場合はPCを使うことの一部を担う限定的な作りになっており、本格的な作業や仕上げはPCで、という場面がまだまだ多いはずです。

 タッチ操作よりも、キーボードショートカットやマウスを利用するほうが素早く作業できる人のほうが多いというのも要因の1つでしょう。

photo キーボードのショートカットとマウスを駆使することで非常に素早い作業が可能

 テキストを音声入力についても可能性を感じましたが、例えば会社でプレゼン資料を作成するといった場面で、音声入力でスムーズに物事をまとめることは難しいと思います。なにより、ぶつぶつ独り言を唱えていたら、となりの人に「うるさい」といわれてしまうかもしれませんね。

 このように、まだ活躍の場はありそうな“パソコン”ですが、どのように無くなってしまうのでしょうか。

リサーチデータで未来を予測できる?

 PC市場の予測を見ると、マイナス成長と予測されることがあります。前回も触れましたが、「ホラーストーリー」を駆使してセンセーショナルに「パソコンは無くなる、マイナス成長」と危機を煽るほうが、予測データを欲するニーズが生まれるかもしれません。

 実は、この場合の顧客は私たちメーカーの担当者であり、例に漏れず私たちもそういったデータを利用しています。

 しかし、予測データは参考にはなりますが、「予言書」ではありませんので、未来のことを正確に予測できるわけではありません。これまで起きていたことを振り返り、分析することで、ある程度堅実な結果を導くことに有効な場合もありますが、最終的には自分たちで考え、意思決定し、行動しなくてはなりません。

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 仮にリサーチデータをもとにして大量に在庫を抱え、結果的に予測が外れてしまったとしても、「リサーチに書いてあったので……」という説明で無罪放免になることはないでしょう。

 何より、自分が信じたことに従って行動した結果として失敗し、「自責」の念から次への成功に向け行動を起こして行くことのほうが、健全な失敗であると思うのです。

 私は、身の回りで起きていることを見るようにします。落ち着いて考えてみれば、ここまでPCの普及率が高まれば、市場の成長率は低くなります。技術の進歩により利用できる年数が延長したことも、買い替えの機会を減らす要因です。リユース(中古PC)という市場もあるでしょう。

 メーカーとしては新しい商品がどんどん売れたほうが良いかもしれませんが、まだ使えるPCはリユースしたほうが環境には優しいはずです。

 私たちよりもずっと成熟した産業である「自動車」の例を見ると、学ぶことが多くあります。自動ブレーキ、レーンキープアシスト、ブラインドスポットアラート、自動駐車、そして自動運転など、新たな利便性や価値を提供し続けています。

 新たな価値の創造により、新たな需要を創出するのが私たちメーカーの目指すべき方向性です。

 さらに周りを見渡せば、プログラミングの授業を小学校の義務教育に取り入れて国際的な競争力を高めていく動きや、少子高齢化や景気への対策として政府の推進する「働き方の改革」も今後の需要に影響を与えることでしょう。

 いずれの場合もテクノロジーとの関係が密接であることを考えると、PCが無くなるというのはいささか大げさであり、年間の出荷数という観点では「緩やかな減少が見込まれるかも?」というレベルに落ち着くのではないでしょうか。

 しかし、実はもっとも影響が大きいのは「定義」です。

 デバイスの定義が変われば、それはPCとしてはカウントされませんので、PCと変わらない事ができていても、「PCは減少した」ということになります。

 PCが今のままの商品構成(デスクトップPC、ノートPC、タブレットや2-in-1タブレット)でずっと変わらないのかというと、そこには変化があるかもしれません。ここを読み違えば、全く異なる未来となるでしょう。

未来のPCとは?

 これまでPCが利用するプロセッサは、インテル製のプロセッサを採用するものが中心でした。しかし、ここにスマートフォンやタブレットで利用されるARM系のプロセッサを利用する「スマートフォン型のPC」という新種が登場しました。

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