ITmedia NEWS > STUDIO >

建設業界にも「複合現実」の波 HoloLensを前に、現場は「とんでもない時代になった」

» 2017年04月20日 15時00分 公開
[山口恵祐ITmedia]

 日本マイクロソフトと小柳建設(新潟県三条市)は4月20日、現実世界に3D映像を重ねて表示できるMR HMD(複合現実ヘッドマウントディスプレイ)「HoloLens」を建設業で活用するプロジェクトを共同で実施すると発表した。狙いは「二次元の図面を頭の中で立体化する」といった“職人技”を、誰もが簡単に行えるようにすることだ。

photo 日本マイクロソフトの平野拓也社長(中央左)と、小柳建設の小柳社長(中央右)

 プロジェクト名は「Holostruction」(ホロストラクション)。建設計画や工事、建築後の検査を効率化するために、設計図や検査に必要な文書をデジタル化し、MRによる3D表現によって作業員の負担を軽減したり、あらゆる作業のシミュレーションを安全に実施したりするのが目的という。継続的に研究開発を進め、実用化を目指す。

 小柳建設は2017年1月の国内向けHoloLens発売前から、同プロジェクトのコンセプトモデルを日本マイクロソフトおよび米Microsoftのコンサルティングサービスを通して開発してきたという。公開された国内事例では日本航空(JAL)に続いて2例目となる。

photo
photo

担い手不足と業界不透明なイメージを払拭したい

 小柳建設がHoloLensに目を付けた理由は、業界の「担い手不足」や「不透明さ」にあると小柳社長は語る。

photo 小柳建設の小柳社長

 「2020年の東京オリンピック/パラリンピックや、東北や九州の災害などによって建設業界の活躍の場が広がっている。一方、高齢化や『きつい』『汚い』『危険』の“3K”というマイナスイメージによって担い手不足も年々加速している。さらにデータの改ざんや耐震偽造といった事件によって、業界全体が不透明というレッテルも貼られている」(小柳社長)

 同社はこうした業界全体の課題を解決するべく、「事業の透明性」「安全性」「現場効率」の3つを高めることを目的として、このプロジェクトに取り組むことを決めたという。

 「現場で働いている社員をもっと楽にしてあげるために、建設業界のトランスフォームが求められる時代になっている。従来の『仕方ない』といった風潮を壊したい。HoloLensによって新潟から世界に向けてそうした思いを実現できるという確信から、日本マイクロソフトとの”共働“を決めた」(小柳社長)

「HoloLens」活用 その魅力は

 プロジェクトに携わった社員は挙手制で集めたという。高齢の職人はHoloLensについて懐疑的な反応を見せていたが、実際にできたものを体験してもらうと「とんでもない時代になっていたのですね」という驚きの声を得られたという。

photo

 「2次元の図面を見て、頭の中で3次元化する──数年がかりでできるようになる職人技を、(HoloLensを使えば)誰でも一人前にできる。お客さまにも(イメージしやすい)同じもの共有でき、遠隔地でも見られる。ここに一番の魅力と価値がある」(小柳社長)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.