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ぼくのMZ-80が小さくなって帰ってくる! 「PasocomMini MZ-80C」とは何なのか立ちどまるよふりむくよ

» 2017年05月11日 14時04分 公開
[松尾公也ITmedia]

 「往年の名機を小さくして互換性持たせたら当時のユーザーがポンポン買っていくんじゃね?」

 その通りじゃよ。

 ハル研究所から「PasocomMini MZ-80C」という新製品がでる。6月1日予約受付が開始され、発売は10月中旬。数量限定で、レトロガジェットショップのBEEP秋葉原のみで取り扱われる。1万9800円(税別)。

photo PasocomMini MZ-80C

 シャープの8ビット時代のマイコン(当時はパソコンとは言ってなかった)であるMZシリーズの中でも名機と言われているMZ-80Cを手のひらに乗る4分の1サイズに縮小したミニ版だが、ハードウェアエミュレーション機能を備えており、マシン語プログラムが動作するという。

 KORG MS-20 miniもNINTENDOクラシックミニも買った自分としては何としても手に入れなければならない。

 思い出の品なのだ。

 MZ-80についてはこの連載でこんなふうに書いている

この年(1981年)、新入生のカノジョができた自分は、寂しいだろうからもう1年学校に残るねと宣言し、「マイコンを買って勉強しよう。そうすれば就職できるはず」と謎の決意をするのだった。

 そのカノジョ(もちろん後の妻である)といっしょに行った、五反田のTOC(東京流通センター)で開かれた大学生協のマイコン展示即売会には、高価なApple ][、当時ですら古臭い感じがしたTandy TRS-80、どでかいコモドールCBM、さらに大きい沖電気工業if-800、そして最新のNEC PC-8801などが並んでいた。

 選択肢はなかった。シャープのMZ-80K2E。ディスプレイやカセットデータレコーダー、キーボードなどが一体化していて14万8000円という手頃なお値段。カセットテープを入れ替えればBASIC以外のプログラミング言語にも入れ替えができる「クリーンコンピュータ」というのも気にいった。

 電源を入れればすぐにROMに焼かれたBASICが使えるPC-8001/8801/6001などとは違い、MZシリーズはカセットテープでロードしないとBASICも使えない。しかし、そこに別の言語やゲームを入れれば、メモリをフルに使えるというメリットがあった。

 そういうわけで、マイコン(今で言うところパーソナルコンピュータ)が手に入った。10インチCRTディスプレイということは、9.7インチのiPadとほぼ同じってことか。

 Oh! MZ、マイコン、RAM、i/O、アスキーなどのコンピュータ雑誌を買ってはゲームプログラムを入力していたその頃、我が下宿はゲーセンと化していた。入れ替わり立ち替わり友人たちがやってきて、窓から勝手に家に侵入して、粗いグラフィックスでインベーダーゲームやスタートレックゲームを遊んだりしていた。

 ぼくが買ったのはMZ-80CではなくK2Eという廉価モデル。外装の色が赤ではなく深緑で、キーボードはタイプライター型ではなく、縦横がマス目のように並んでいるチャチなものだった。しかし、ソフトウェアの互換性はあり、当時のプログラムはMZ-80K/C対応と書かれていた。

photo いまも家に残る唯一のMZ-80K/C対応ソフト

 MZ-80シリーズで最初に出たのは組み立てキットのKで、キーボードをやカラーをリフレッシュした完成品のC、次にKの廉価版としてK2、その後ででたのがさらに安いK2Eだった。

 なので、キーボードと色は後で変更しなければならない。

 ぼくのリアルMZ-80K2Eは義弟に譲った後、行方がわからないので、現存する写真を使い、MZでコントロールしたコンピュータミュージックの動画を置いておこう。

 ここではAMDEK(現在のローランド ディー.ジー.)が作っていた音源付きデジタルシーケンサーCMU-800で演奏したものにぼくと妻の歌声を重ねている。

 このときは学園祭のためにリヤカーにMZとシンセサイザー一式を積んで下宿から演奏会場まで移動していたのだった。

 それがこの新しいMZ-80Cならば手で持っていける。もちろんCMU-800のミニチュア版も作っていただきたい。

photo 筆者がMZ-80K2Eを操作しようとしているところ
photo MZ-80K2Eが制御するコンピュータミュージックに合わせて歌う妻

 MZはコンピュータミュージックだけに使ったわけではなく、GAME、LISPといった言語を入力して使えるようにし、これからは人工知能だぜ、LISP勉強するぜ、と取り組んだものだった。アルファベット小文字も漢字も使えないし、グラフィック性能はほぼゼロだったけど、無限の可能性を感じさせてくれた。

 ゲームもたくさん打ち込んだ。当時のコンピュータ雑誌にはプログラムリストで多くのページが割かれており、BASIC文やマシン語を1つ1つ入力したのだ。

 このタイニーMZ-80Cの互換性はどうなのだろう。機械語プログラムの互換性はあるらしいけど、当時のプログラムをSmileBASICでそのまま動かすことはできるのだろうか? 何かコンバータみたいなものは用意されているのだろうか? 疑問は尽きない。

 手元には月刊ASCIIの縮刷版が何冊かあるが、当時のコンピュータ雑誌を集めて、当時打ち込んでいたゲームを、この小さなMZに入れて再現してみたい。

 妻が一番気に入っていたゲームがある。

 ネコが画面にどんどん現れて、そのネコの喉を横にスッとなでてZZZと眠らせるゲームだ。妻の喉を同じようにスッとなでるとZZZと眠るふりをする。名前は金魚すくいだっけ。

 この突然のMZ-80ブームに乗っかって、このプログラムを収録していた雑誌が電子書籍で再発されたら、ぼくはそのゲームを打ち込んで、「そういえば、あの後で拾ってきたパモ(ネコの名前)の喉をこのゲームと同じように撫でてたよね」と、この世とあの世の境界に構築したお二人様インスタンスで妻にトゥートしようと思うのだ。

photo

 とても待てないという方は、オリジナルMZ-80の開発チームを率いていた方のブログを読んで、シャープのGALAPAGOS STOREで無料公開されているシャープ純正BASIC、アセンブラなどのマニュアルやカタログも読んでおこう。

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