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「スメハラ」してませんか? 体臭が“見える”スマホ連携デバイス 開発の裏側

» 2017年07月13日 16時40分 公開
[山口恵祐ITmedia]

 「そろそろ夏だから、体臭が気になるよね……」──40代を中心とする開発メンバーの一言が、商品を生んだ。

 コニカミノルタは7月13日、人の体臭を数値化するスマートフォン連携デバイス「kunkun body」(クンクンボディー)の先行販売をクラウドファンディングサイト「Makuake」でスタートした。臭いの種類を判別するセンサーは「世界初」(2016年12月時点、同社調べ)。出資額は2万2500円(税込)から。初回申し込み分の出荷は10月を予定している。

photo 「kunkun body」(クンクンボディー)

 人の頭、脇、耳の後ろ、足にデバイスを約20秒間近づけると、汗臭や加齢臭、30代以降に気になるという“ミドル脂臭”を判別。Bluetoothで接続したスマートフォン上の専用アプリ(iOS/Android、無料)に、臭いの種類と強度、臭い対策のアドバイスを表示する。従来の臭いセンサーは“臭いの強さ”しか測れなかったという。

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 臭いを判別する技術は、コーヒーやワインの香り判別を研究していた大阪工業大の大松繁客員教授(ロボティクス&デザイン工学部)と共同開発。複数の気体センサーから得られた臭い成分の特徴を、ニューラルネットワークを用いた機械学習によって学習し、判別できるシステムを構築したという。

 これらの技術は臭い検出プラットフォーム「HANA」(High Accuracy Nose Assist)として体系化し、今後も臭いに関する関連商品の開発を目指す。現時点では、空間の臭い検出や食品の腐敗検査といったビジネス向けの用途を想定している。

 まずはクラウドファンディングによるユーザーの反応を見てから、一般販売の実施を確定するという。一般販売価格は3万円(税込)で、発売時期は未定だ。

 ちなみにクラウドファンディングのスタートから5時間弱(13日15時時点)で、既に目標金額の225万円を達成済みだ。

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開発のきっかけは 40代「体臭気になる……」

 体臭によって周囲の人を不快にさせる一方で、周りは気まずくて指摘できない──そんな状況を表す「スメルハラスメント」という言葉が世間で認知され始めていることもあり、「臭いを客観的に計測できるデバイスがあれば、ビジネスになると考えた」と、同社の甲田大介さん(BIC Japan インキュベーションリード)は説明する。

photo コニカミノルタ BIC Japanの甲田大介さん(インキュベーションリード)

 「40代の開発メンバーが発した『夏の体臭が気になる』という一言が開発のヒントになった。臭い対策として、人ならデオドラントスプレー、空間なら消臭スプレーといった対策があるが、“臭いを測定できるツール”が無いなと」(甲田さん)

 人間の嗅覚は、同じ臭いに慣れてしまう順応性や好き嫌いがあるため、臭いを客観的に見ることが難しい。同社は、人間の嗅覚と同様の臭い定量化システムを実現できれば、臭いに対して絶対的な評価基準を作ることができると考えたという。

 「新しい身だしなみの習慣として臭いを可視化することで、周りの人に対する気遣いができるようなデバイスを提供したい」(甲田さん)

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苦戦する複合機メーカー 「ペーパーレス」時代に生き残るには

photo コニカミノルタ BIC Japanの波木井卓所長

 コニカミノルタは、複合機や業務用印刷機を主力事業とする電気機器メーカー。そもそも、なぜ体臭の測定デバイス開発に取り組んだのか。同社新規事業の立ち上げ部門であるBusiness Innovation Center(BIC) Japanの波木井卓所長は、「ペーパーレスの流れに逆らえなかった」と話す。

 「BIC Japanは2014年春に設立した。今のメインビジネス以外で、何か事業の柱になるようなものを立ち上げるのが目的だった」(波木井所長)

 kunkun bodyの開発期間は約2年。自社に豊富な技術力を持っているわけではなく、さまざまなパートナーがいたからこそ、これまでにない製品が生まれたと波木井所長は強調する。

photo kunkun bodyの開発パートナー企業

 「新規事業はベンチャーや大学、専門機関と協力しながら新しいビジネスを作る『オープンイノベーション』に取り組まないと実現しない。いずれの事業でも、結果的にわれわれの技術が使われなくてもいいと考えている」(波木井所長)

【訂正:2017年7月14日14時45分 甲田さんと波木井所長の写真位置を誤っていたため、修正しました。】

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