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ビジネスPCと個人向けPCって何が違うの?“中の人”が明かすパソコン裏話(1/2 ページ)

» 2018年05月09日 07時00分 公開

 こんにちは、日本HPでPCの製品企画を担当している白木智幸です。今回は「コンシューマー(個人)向けPCとビジネス向けのPCは何が違うの?」という素朴な疑問に切り込んでみたいと思います。

 皆さんが今お使いのPCはコンシューマー向けPCでしょうか? それともビジネス向けPCでしょうか? プライベート利用にもかかわらず、ビジネスPCを使っているという方もいるかもしれません。私はビジネス向けのタブレット、ノートPCの製品企画を担当していますので、「自宅でビジネスPCを使っているよ!」とお声をかけて頂けると、個人的にはとてもうれしく思います。

 さて、ここに2枚の写真があります。どちらがコンシューマーPCか分かりますか?

photophoto

 正解は、左側がビジネス向けPC、右側がコンシューマー向けPCです。しかし、多くの方が「どちらがコンシューマー向けPCなのか分からない」と思うかもしれません。実は“とある理由”によって、どちらの用途でも外観は似ています。その理由は追って説明しましょう。

 コンシューマー向けPCにはカラーバリエーションが用意されていることも多く、自身のライフスタイルや感性に合うPCを選ぶのも1つの楽しみです。さらに凝ったデザイン演出があることも。例えば、ボディーのフチ部分がキラキラ反射するダイヤモンドカット加工、外側から機構が見えないようにしたヒンジ、特殊な塗装処理、スピーカーのデザインなど、細部のデザインまでこだわっているモデルも増えてきました。

photophoto ローズゴールド色(写真=左)とアッシュブラック(写真=右)
photophoto ダイヤモンドカット加工(写真=左)、外からみえないヒンジ(写真=右)

 一方、ビジネス向けPCにおいては製品自体が魅力的であることに越したことはありませんが、なるべくコストを削減するという観点も重要です。さらに毎日使っても故障しない耐久性も当然求められます。そんな理由から、ビジネスPCは頑丈だけど武骨で分厚く、デザイン性は二の次、という傾向がありました。

 ところが最近はコンシューマー向けPCにみられるような、デザインを重視したビジネス向けPCも増えつつあります。これにはどういった背景があるのでしょうか。

ビジネスPCがコンシューマー向けPCに似てきた理由

 2008年にAppleの「MacBook Air」が登場してから10年。最近はおしゃれなカフェでノートPCを開く人を当たり前のように見かけます。従来は営業職やデザイナー、ライターなど、時間を比較的自由に使える人がそういった現場の中心でしたが、現在は「働き方改革」によって、さまざまな業種の人々がリモートワークを行う機会が増えています。

 一部では、おしゃれカフェでリモートワークする女子を「リモワ女子」と呼ぶそうです。その呼び方が定着しているかどうかは別として、ステキだと思います。

 実はワールドワイドでもこのトレンドが急速に進んでいます。ある調査では、すでに62%ものビジネスパーソンがオフィス、自宅、リモートオフィスなど、複数の場所を使い分けて働いているようです。Skypeやハングアウト、Slack、Teams、Googleドライブのようなツールを駆使することで、チームメンバーといつでもどこでもコラボレーションしています。そのようなフレキシブルな働き方をしていると、仕事にイノベーションも起きやすいようです。

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 こうしたトレンドの中、いつでもどこでもネットにアクセスできる持ち運びに適したモバイル向けノートPCの需要が高まり、ビジネス向けでもデザインの方向性が「薄型・軽量」「スタイリッシュ」に傾いています。

 製造コストの削減という観点でも、コンシューマー向けPCとビジネス向けPCで共通化できる部品を増やし、開発や部品のコスト削減につなげられるメリットは大きいでしょう。結果として、魅力的なコストパフォーマンスの高い商品を顧客に届けることにつながります。

 さらに効率化によって得られた予算を研究開発費として投下することで、過酷に使われるビジネス向けPCならではの耐久性や便利機能をコンシューマー向けPCに提供できるようになります。

 例えば、のぞき見を防止する内蔵プライバシースクリーン機能は、当初ビジネス向けPCに開発され、その後コンシューマー向けPCにも展開しました。

 最新のビジネスPCでは、360度どの方向からも集音できる全方位マイクを搭載したノートPCも登場しています。こういった機能があると、少人数でテーブルを囲んでオンライン会議をするような場面でも、専用機を必要とせずにクリアな音を拾えます。

photo 背面にもマイクロフォンを搭載することで、360度の全方位の声を拾える

 さらに、一見すると外観はコンシューマー向けPCと同じように見えるビジネスPCですが、セキュリティの設計においては中身が大きく異なります。

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