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» 2018年06月01日 12時00分 公開

ひっそり成長「合成声優」ヒカリちゃん(21) 「声優さんの仕事を代替したい」――VoiceText開発者の挑戦 (1/2)

音声合成キャラクターが静かな進化を遂げている。「あと数年後には、現実のアナウンサーや声優の仕事が合成音声に置き換わる可能性がある」と開発者は話す。

[本宮学,ITmedia]

 「本当に分かってますか? 非常に困っています」

 制服姿の彼女にそう言われたとき、思わずどきりとしてしまった。

 彼女の名はヒカリ(21)。この世には実在しない、“音声合成の声優”だ。

photo 音声合成キャラクターのヒカリ。21歳なのに女子高生ルックなのは“コスプレ”だという

 ヒカリが登場したのは2016年のこと。それから2年たった今年1月、ディープラーニングを取り入れて大きな進化を遂げた。過去と現在、それぞれの彼女の声を聞き比べると、その成長ぶりに息をのむ。


Before




After

 彼女の声を聞けるのは、Webサイト「音声合成の声優事務所」。そこではヒカリをはじめ、音声合成技術「VoiceText」を用いた複数のキャラクターの合成音声を聞くことができる。

photo

 「ディープラーニング版を出したのに、ちっとも反応してもらえなくて」――VoiceTextを開発しているHOYAの金田隆志さんと立花綱治さんは苦笑いする。同社が事業承継した旧ペンタックス時代から音声合成分野に取り組んできた2人は「あと数年後には、現実のアナウンサーや声優の仕事がある程度、合成音声に置き換わる可能性がある」と話す。

 「サイトを立ち上げた2016年の時点で、音声合成がいずれ人間のレベルに到達することは分かっていました。VoiceTextも今はまだそのレベルではないが、将来は日本の声優さんの代わりになることを目指している」(金田さん)

ロボット、テレビのナレーション……活躍する“合成声優”

 VoiceTextは、テキストデータを音声にして読み上げるText to Speechソフト。元となった声優やアナウンサーの声質を生かしつつ、さまざまなテキストを読み上げられる。

 日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語など15言語に対応。フラットな読み上げのほか、「喜び」「怒り」「悲しみ」の感情を込めた読み上げ方も可能だ。

 特徴の1つは、さまざまな声質のキャラクターを「声優」としてラインアップしていること。音声合成の声優事務所にはアイドルキャラのヒカリのほか、男性執事キャラのタケル、優しい男の子キャラのコウタなど15人が“所属”(2018年5月現在)。キャラクターごとに対応言語・感情があり、用途やシーンに応じてさまざまな声を表現できる。

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 例えば、NTTドコモらが開発したクマ型ミュニケーションロボット「ここくま」は、男の子キャラのコウタが声を担当。さらにテレビ東京系列「モヤモヤさまぁ〜ず」でナレーションを担当しているのはショウというキャラクターだ。ショウの場合、番組制作会社からのリクエストで、あえて“機械っぽい”読み上げ方を残しているという。

 既存のキャラクターボイスだけでなく、新たに声を吹き込んで「オリジナルボイス」を作り出すことも可能。これまでに日本だけで約1300社が、自動応答システム、家電製品の読み上げ機能、ロボットの声などにVoiceTextを活用しているという。シャープのロボット型携帯電話「RoBoHoN」(ロボホン)も、VoiceTextのオリジナルボイスが声の主だ。

 話し言葉だけでなく、メロディーに合わせた「歌声合成」も行える。「従来の一音一音をつなぎ合わせる方式ではなく、統計モデルを用いた新しい方式により、滑らかで明瞭な歌唱を実現した」(公式サイト)といい、その表現力はかなりのものだ。「歌詞とメロディーのみを入力しており、発音補正やピッチ、リズム、ビブラートなどの調整は一切行っていない」という。


※歌詞とメロディーのみを入力しており、ピッチ、リズム、ビブラートの調整は行っていないという。BGMとなじませるためのイコライザー、コンプレッサー、リバーブなど一般的なエフェクトは使用している

旧ペンタックス時代に開発スタート 進化にかけた15年

photo HOYAの金田隆志さん(HOYA SPEECH 技術グループ マネジャー)

 VoiceTextの開発が始まったのは2003年のこと。カメラや光学機器の製造を手がけていたペンタックス(当時)が、新規事業として始めた語学学習サービスがきっかけだ。

 「その語学学習サービスは数年で撤退してしまいましたが、『むしろ、サービスに付属させていた文章読み上げソフトのほうが面白いんじゃないか』と社長の目にとまって」と金田さんは振り返る。当時の付属ソフトは海外製のシンプルなものだったが、将来の市場拡大を見据えて自社開発をスタートした。

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