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「Amazon Goより日本に合う」――レジ待ちゼロ「ローソンスマホペイ」の先の未来(2/2 ページ)

» 2018年08月31日 12時00分 公開
[本宮学ITmedia]
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 RFIDはバーコードと違い、1つ1つの商品に固有のIDを振る。そのため、客が店舗の出入口に設置されたゲートを商品を持ってくぐると、事前に登録したスマホアプリで自動決済する――といったことを実現できる。

photo 研究施設の様子。客は電子タグが付いた商品を持ってゲートをくぐれば決済できる(公式サイトより)

 商品スキャンの必要がないという点では、店内のカメラとセンサーで商品を自動認識するAmazon Goをほうふつとさせる。だが谷田さんは、日本ではAmazon Goのようなシステムは「フィットしないと考えている」という。

 「Amazon Goは店内のカメラとセンサーで商品を認識している都合上、同時に入店できる人数に40〜50人程度と制限を設けているが、日本のコンビニのピーク時はそれ以上になる。商品をAIに学習させる必要があるため、頻繁な商品の入れ替えにも対応しづらい。店舗の新設に約5億円かかるという話もあり、日本でそのまま展開するのは難しいのではないか。RFIDを用いた自動決済なら入店者数の制限もなく、毎週入れ替わる新商品にもすぐ対応できる。少なくとも日本では、こちらの仕組みのほうがAmazon Goより全然いい」

 RFIDを用いた商品データベースを活用すれば、これまでになかった新サービスを生み出せる可能性もある。例えば、客がスマホアプリで近くにある店舗の商品在庫を確認できるようにしたり、店舗が賞味期限の近くなった商品だけを値引きしたりといった具合だ。

 「現在、RFIDのタグは平均13〜15円するため、安価な商品に貼ると採算が取れない課題がある。ローソンは経産省やコンビニ各社とともに、世界に数社あるタグ製造会社と直接交渉しており、1枚当たり1.5円程度まで安くできるめどが立っている。商品にタグを貼る機械も率先して準備を進めている。電子タグ構想の実現目標は2025年だが、個人的にはもう少し早く始められるのではないかと思う」(谷田さん)

小売業から「プラットフォーマー」へ

 「人手不足や人件費上昇、消費者の価値観の多様化といった課題は、ローソンだけのものではない」と谷田さんは危機感をあらわにする。そこで重視するのが「テクノロジーの活用」。ローソンスマホペイやRFIDの活用もその一環だ。

photo 谷田さん

 「今は実はどのコンビニも、正確な入店者数すら把握できていない」と谷田さん。POSシステムを通じて「レジの通過数」は分かるものの、同じ人が1日に何度も商品を買った場合や、商品を買わずに退店した人などはカウントできていないという。

 そこでローソンは、カメラとセンサーで店舗への出入りを把握するシステムの導入を検討。さらにRFIDタグの位置情報に基づき、客が買おうと思ってからやめた(棚に戻した)商品を把握したり、3Dセンサーで客の細かい行動データ(入店率、棚前通過率、棚立ち寄り率、手伸ばし率、購入率)を取得したりする実験も進めている。

 「例えば、ある商品のテレビCMを実施したとしても、これまで店舗は売上の増減でしか効果を判断できなかった。しかし『その商品の売上は変わっていないが入店者は増えている』といったことが分かれば、商品の陳列の仕方が悪かったのではないか、在庫が切れていたのではないかといった分析ができる。こうしたデータ分析を通じ、さらに効果的な店舗運営ができるはずだし、広告代理店などにデータを売る新ビジネスもできるかもしれない」

 谷田さんは、GoogleやApple、Facebook、Amazon.comといったIT企業を引き合いに、「コンビニは今からでもプラットフォーマーになれる可能性がある」と展望する。

 「時価総額ランキング上位を占めるプラットフォーマーに共通しているのは、ユーザーのデータから収益を上げていること。ローソンは約1万4000店舗を持ち、1店舗当たり1日800人、つまり全国で1日当たり約1000万人もの利用者がいる。プライバシーをしっかりと確保しつつ、店舗で得られるデータをうまく生かせれば、プラットフォーマーになれる可能性もあると考えている」

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