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「鉄人28号」が抱える脆弱性とは? ロボット悪用を防ぐ”認証”を考える架空世界で「認証」を知る(1/3 ページ)

» 2019年01月15日 07時00分 公開
[朽木海ITmedia]

この記事は認証セキュリティ情報サイト「せぐなべ」に掲載された「架空世界 認証セキュリティセミナー 第7回『鉄人28号の操縦器(リモコン)認証』」(2017年10月12日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。当時未発売だった製品やサービスの記述などは、本記事掲載時の状況に合わせて編集しています。

1つの架空世界に絞って認証を考える

 ……それでは講義を始める。

 前回は1つの架空世界に絞って認証の考察を行うということで「ミッション:インポッシブル」シリーズを見ていった。さすがスパイモノ、多要素認証の事例も出てきて非常に興味深かったかと思う。また、さまざまな生体認証の事例も紹介した。

 さて、今回も引き続き1つの架空世界に絞って認証の考察を行いたい。舞台となるのは鉄人28号だ。

多数のメディアミックスが存在する鉄人

 まずは基本データから。1956年に月刊「少年」で連載開始された横山光輝の漫画作品で、その後アニメ化が繰り返され、実写映画にもなっている。

 オリジナルのストーリーは、太平洋戦争末期に大日本帝国軍が起死回生の秘密兵器として製作していた巨大ロボット「鉄人28号」と、操縦者の少年「金田正太郎」を巡る物語だ。

 多数のメディアミックス作品が存在し、設定もバラバラな「鉄人28号」だが、今回は整理して3つの作品について見ていきたい。まずは2004年に今川泰宏監督がアニメ化して大好評だった「鉄人28号」、そして1980年に今沢哲男監督がアニメ化した「太陽の使者 鉄人28号」、最後に1992年に横山光輝も関与して制作された「超電動ロボ 鉄人28号FX」。この順番で紹介していきたいと思う。

「いいも悪いもリモコン次第」

 2004年版「鉄人28号」、通称「今川版鉄人」は、「ジャイアントロボ THE ANIMATION 〜地球が静止する日〜」などを監督した今川泰宏監督のテレビアニメ。今川監督は「鉄人28号とガロを好む少年だった」と言うだけあり、「今川版鉄人」は原作の雰囲気を最大限に再現した作品となっている。

 第二次大戦末期、大日本帝国軍は決定的な兵士不足に悩まされていた。そこで考えられたのが不死身の兵士を作り出す「鉄人計画」。天才科学者「金田博士」が南洋の陸軍秘密研究所で鉄人たちを作り上げていた。そんな中、秘密研究所は米軍の空襲を受け壊滅。鉄人も全て壊滅したかと思われていたが……。

 その10年後、南方から巨大な砲弾が東京に落下。少年探偵として成長していた金田博士の息子「正太郎」はギャング「村雨一家」を追い詰めていたが、そこに砲弾が落下してくる。しかしそれは「鉄人28号」だった……。というのがおおむねのストーリーだ。

 昭和30年代、「もはや戦後ではない」と言われた高度成長期の最中に突然現れる戦争の闇と、時代に取り残されたものたちの戦いが見どころの1作だ。

 さて、「今川版鉄人」に登場する「鉄人28号」だが、おおむね原作を踏襲している。つまり、操縦は操縦器(※1)で行うようになっている。鉄人はある程度の自律思考も行えるが、多様な判断が必要な任務中は操縦者の操作を必要とする。操縦器からは目視で見える範囲でなくてはならないという制約も存在する。

 この操縦器だが、認証方法はあったのだろうか。

 ……結論からいえば、全く存在しない。鉄人システム全体から見れば、操縦器が所有物認証ではあるのだが、操縦器には認証がかけられていないので、オープニングテーマ曲の歌詞にもあるような「いいも悪いもリモコン次第」が発生しうる。つまり、操縦器が悪い人間の手に渡ってしまうと、鉄人はたちまち悪のロボットになってしまうのだ。

 作品中にもそうしたエピソードは存在する。第6回「奪われた操縦機」では敵であるスリルサスペンスと村雨健次の計略にハマり、正太郎は操縦器を奪われてしまう。第7回「悪の手先鉄人暴れる」では実際にスリルサスペンスたちが鉄人を操り、悪の限りを尽くすのだが……。どうやって正太郎が取り戻すのかが見どころだ。

※1:リモコンの表記には作品ごとにブレが存在するが、本稿では基本的に「操縦器」としていく。

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