ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >
ITmedia AI+ AI活用のいまが分かる

月面探査機「玉兔2」による月の裏側の調査報告 暗い緑色に光るゲル状物質を発見Innovative Tech(2/3 ページ)

» 2022年01月26日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

クレーターや岩石などの調査

 25日間で玉兔2の経路から50m以内の範囲に、直径4.68?61.83m(平均値11.89m)の88個の衝突クレーターが定量的に確認できた。そのうち60%以上が直径10m以下で、20m以上のクレーターはまれであった。

 より詳細なパノラマステレオ画像からは、玉兔2から10m以内の距離にある20個のクレーターを計測して、いずれも深さは0.6m以下、深さ/直径比(d/D)は0.04〜0.12、平均値は0.07であり、比較的新しいクレーターであることが示唆された。

 劣化の激しいクレーターは、地面との境目に緩やかな傾斜と平たんなエッジがあり、長い期間の風化作用を受けたことを示している。一方、その他のクレーターは、さまざまな粒径の噴出物(微粒子から塊まで)があり、壁や底が粗かった。また噴出物の分布の違いにより、さらに2つのカテゴリー(均等に分布しているものと、片側に偏った分布をしているもの)に分類できた。

 この2年間の活動の中で印象に残ったクレーターは、上述した9日目に遭遇したクレーターだ。クレーター内に暗い緑色に光っている高反射でゲル状の物質を確認したからだ。周囲の物質とは異なる形や色、質感をしていた。

 この物質の外観は、アポロ15号および17号ミッションで得た月のサンプルと類似していることから、衝撃で発生したセメントや、月の表面を覆う堆積物「レゴリス」、角礫岩などの凝集の可能性があると示唆された。分かりにくいが、下の画像のAで確認できる。

(A)9日目に遭遇した高反射物質、(B)クレーターの直径に関する統計結果(C、D)比較的長い期間、風化作用を受けた古いクレーター(E、F)片側または周囲に噴出物がある新鮮なクレーター

 いくつかの岩石も確認したが、CE-3ミッションに比べると少なく、また40mm以下の小さなスケールで孤立して存在するものが多かった。大きいものでも、23日にNavcamで捉えた、周囲から孤立した中程度の大きさ(直径約300mm)の角張ったもの程度だった。

CE-4ミッションで確認された岩石
CE-4ミッション以外のミッションで確認した大きめの岩石

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.