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» 2015年03月31日 15時00分 UPDATE

熊本・わいた温泉郷の地熱発電、狙いは地方と都市を直につなぐ地方創生システム

熊本県阿蘇郡に、日本で16年ぶりとなる地熱発電所が誕生する。この発電所を足掛かりとして、都市部にエネルギーだけでなく、農産物や特産品をダイレクトに届ける仕組みを地元で築こうとしている。新しい地方創生のプロジェクトについて、発電所の建設・運営の業務委託を請け負った中央電力ふるさと熱電に話を聞いた。

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 熊本県阿蘇郡小国町のわいた温泉郷(写真1、写真2)に、日本で16年ぶりとなる地熱発電所が誕生する。出力は約2MW(1995kW)。既に試運転に入っており、2015年4月の商業運転開始を目指している。事業主体は、地元の地権者26人で設立した合同会社わいた会。都市部の大資本が地方の土地を購入して事業を展開するのではなく、地元が主体で「おらが村の発電所」を建てた。発電所は、周辺環境や温泉資源に配慮し、温泉旅館1棟分程度(200m2以内)の規模にとどめ、温泉郷の川向うの崖を切り拓いて建設した。

yh20150309denryoku_mountain_590px.jpg 写真1 涌蓋山(わいたさん、小国富士)の手前に広がるわいた温泉郷
yh20150309denryoku_vapor_590px.jpg 写真2 町中では温泉の蒸気が珍しくない

 地熱発電事業ではフラッシュ発電方式を採用しており、セパレータ(気水分離器)で蒸気と熱水を分け、蒸気をタービンへ流して発電する(写真3)。1時間当たり130度の蒸気をおよそ20トン使う。井戸の深さは約600m(海抜0m前後)である。

yh20150309denryoku_plant_590px.jpg 写真3 発電所施設 左はタービン建屋、右はセパレータと井戸。敷地面積は約200m2

 事業の目的は、地域の活性化。単なる電力会社への売電に終わらせることなく、地域の思いがこもった電力を、消費者が選んで買う仕組みを構築する。それによって地方(供給側)と都市(需要側)を直接結び付けたい。

地熱発電とマンション一括受電の意外な共通点

 この事業を受託したのが、中央電力ふるさと熱電だ。マンション一括受電サービスで国内シェア首位の中央電力の傘下の企業である。公共施設開発などにみられるBOO(Build Own Operate)に似た形で建設前の調整から建設、運営までを担い、開発・運営コストや事業リスクを引き受ける(図1)。

yh20150309denryoku_scheme_590px.jpg 図1 事業全体の枠組み

 同社によれば、地熱発電とマンション一括受電には共通点があるという。「地熱は太陽光や風力とは異なり、熱水や冷却水など地域の資源を使いますが、これらの資源は、地域の中に権利関係者が多く、合意形成が重要となります。中央電力は既存マンションへ一括受電サービスを導入する際、住民全員の合意形成で数多くの実績を持っており、その知見を生かすことができました」(中央電力ふるさと熱電)。

 実際に、わいた温泉郷では、過去に大手電力供給会社が地熱発電の立ち上げに向けて数多く試験井戸を掘削しながら、反対者が出て計画が頓挫したことがあった。このため「金銭的なメリットを提示するといった、開発を無理強いするのではなく、事業主(地元の地権者)が抱く夢を地域で共有するという心構えで、時間をかけて合意を形成する」という姿勢が大切となる(写真4)。このため、わいた会と同社の打ち合わせは100回以上に及んだという。

yh20150309denryoku_confidence_590px.jpg 写真4 地元の方と築く信頼関係 わいた会江藤義民会長(右)と。

 地元では温泉資源の枯渇を心配する向きもあった。利用する熱水の量を温泉旅館1棟分ほどの規模に抑えて、資源のごく一部を使う「おらが村発電計画」に全員が納得した。試運転中ではあるが、地熱発電の副産物として得られる熱水(温泉)を周辺の旅館などに分湯し、好評を博している。今後は、熱水を利用した野菜のハウス栽培なども行う予定である。

マルシェに見学ツアー、地元と都市のマンションをつなぎ続ける

 中央電力はマンション一括受電サービスで都市部にマンション1600棟、13万世帯(約40万人)の顧客を持つ。今回のプロジェクトでは、その顧客基盤をエネルギーや農産物といった地方の資源の販売先として考えている。「毎月、各戸に投函している検針票(電気使用量)の裏面に、わいた周辺地域の物産プレゼント・通販のお知らせを掲載することができます。例えば当社顧客の約5%の人が購入した場合、約2万人の顧客を得ることになります。もちろん、当社で請求管理も可能です」。商用運転開始後には、JA阿蘇の物産キャンペーンを予定しており、毎月、定額分の地元産食材を届けるサービスなども検討中だ。

 地元で共有できる夢はさらに広がる。「例えば、マンションで最近ブームとなっているリノベーションにも、地元の杉を選んで使うことを考えております。地元の林業を盛り上げながら、木材に『ストーリー』が生まれることでマンションの付加価値アップにもつながります。また地域の農産物をマンションの敷地内で販売するマルシェを開催することもできます」。一般的に、マルシェは生産者が直接販売するため、付加価値を付けて売ることができる。中央電力には約1600棟のマンションがあるので、これを順番に巡回開催すれば、「レア」なイベントとして住民にも喜ばれそうだ。

 地元では、全国から発電所の見学に訪れる人向けに、観光も兼ねたプランを用意しているという。見学者には必ず前泊してもらい、旅館に宿泊して温泉を堪能し、翌朝に発電所を見学する。その後には小国町の観光スポットを巡り、名物のせいろ蒸し料理「地獄蒸し」を味わって、特産品をお土産に持ち帰るといったコースを構想している(写真5)。

yh20150309denryoku_dish_400px.jpg 写真5 名物料理「地獄蒸し」

 「地方の思いは『子どもたちに地元へ帰ってきてほしい。そのための雇用が地元に生まれなければ』ということです。当社は、それを実現する仕組みをつくりたいのです」。

地方創生の仕掛けをほかの地域にも

 中央電力ふるさと熱電には、熊本県や大分県、鹿児島県、秋田県、岩手県などの温泉組合、旅館業の方々などから、わいた地熱発電のような引き合いがあるという。同社は地熱発電や小水力、木質バイオマスなど、その地域の資源を生かして、わいたの地域活性化モデルを今後広げていく方針だ。

 「地域活性化と一口にいっても、補助金を使ってハコモノ(公共施設など)を作る方法では、継続的な地域の発展は望めません。収益の核として発電事業を立ち上げ、それを足掛かりに次の展開を図ることで、継続的な地域振興が可能になるのです」。

 中央電力の地熱発電に取り組む理由が、この言葉によく表されているといえよう。

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提供:中央電力株式会社
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2015年4月30日