コラム
» 2004年11月05日 00時00分 UPDATE

特集:IT投資マネジメントの視点IT組織が直面する“13の壁”

多くの企業では、いわゆる失われた10年を取り戻すことを目指して、積極的に成長戦略への再スタートを切ろうとしている。しかし、社内やグループ内のIT組織ではさまざまな問題を抱えており、企業成長を阻害するリスク要因となるケースも増えつつある。本稿では、企業のIT組織評価の指針とすべく、IT組織が克服すべき問題点を明らかにする。

[水野満,野村総合研究所]

IT部門・グループIT企業への要請

 グループ経営が進む状況のなかで、社内のIT部門やグループIT企業に対して、より付加価値の高いサービスの提供やコスト削減が強く求められている。この要請に応えようと、IT部門やグループIT企業では次のような3つの価値を追求しようとしている。

(1)オンリーワンバリュー

組織内やグループの強みを活かした、課題への早期対応、戦略的業務革新の提案、システム開発や活用支援時の密着サポートなど(他社が提供できないような付加価値の提供)。

(2)マネジメントエクセレンス

自律的な経営管理・業務管理の確立。

(3)オペレーショナルエクセレンス

システムのQCD(品質・コスト・納期)のあくなき追求。自主事業(外販)実施により経営的自立を図るケースも少なくない。

克服すべき“13の壁”

経営からの上記のような要請に応えようとするIT部門やグループIT企業にとって、じつは乗り越えなくてはならないさまざまな壁がある。これは、以下のような13の壁としてまとめられる。

(1)社内IT部門にとっての壁

(1)労務費の壁

高年齢化によって右肩上がりの労務費構造が深刻化し、コスト革新の障害になる。

(2)技術の壁

オープン化に対応したスキル移転が滞り、技術変化や技術多様化に対応しきれない。

(3)業務の壁

業務現場での経験や、ユーザーとのローテーションなどがなくなり、システムを通じてしか現場業務に接しないため、業務とのギャップを埋めるすべがほとんどない。また、業務経験をもたない世代が大多数を占め、さらにギャップが拡大する。

(4)設計・開発業務の空洞化の壁

高年齢化や外部委託比率の増大などにより、若年層のSE(システムエンジニア)、プロジェクトマネージャーも協力会社の管理、調達手配に追われるため、設計・開発の実践が乏しくなり空洞化が進む。

(5)組織の壁

キャリア養成を目的とした計画的で柔軟な人事が行われず、縦割り組織が固定化し、視野の狭いプロが多くなってしまう。また、これが保守業務への要員の張り付けにより一層深刻化する。

(6)要員構成の壁

業績の悪化により新規採用が滞ることで、要員の年齢構成が中堅・若年層不在のいびつな形になる。そしてノウハウの継承を怠る結果、システムの維持に支障をきたす。

(7)成長経験の壁

第3次オンライン世代(基幹系を全面構築した世代)より後の世代は、大規模システム構築の経験がなく、事業を全体的にとらえる考え方や、全体的な設計思想を身に付けることができない。

(8)成長機会の壁

基幹系再構築への投資が一巡し、当面は新規システム構築の機会がないため、要員が技術を獲得する機会がほとんどなくなる。

(9)職種・職能の壁

組織や機能のスリム化を進める企業で、SEの専門性が高まった結果、他職種、他部門・他企業への配置転換が困難になっている(SEとしてのプロパー採用者が多い場合は一層顕著である)。

(2)グループIT企業にとっての壁

(10)モチベーションの壁

機能分社ゆえに、言われたことだけを言われたとおりにやればよいという、いわゆる業者化が進む。品質や生産性に関するPDCA (Plan−Do−Check−Action)サイクルも機能せず、力量・意欲ともに低下する。

(11)コミュニケーションの壁

機能分社化、プロパー採用によって技術志向が強まり、作り手の主張やビジネス意識が過度に高まる。そのため顧客起点という姿勢が薄れ、ユーザー部門からの反感が強まる。

(12)発注削減の壁

親会社によって、短期的にグループIT企業の生命維持ライン(固定費)をはるかに上回るコスト削減が実施されてしまう。

(13)外販の壁

経営的自立を目指して外販に力を入れるが、内販を主体としていた組織が外部への依存度を高めることは短期的には困難である。

企業成長戦略の足枷とならないために

 上記の壁を克服できない場合、ITによる業務・サービス改革効果の低下や業務改革実現スピードの低下、生産性・コスト革新の遅滞、システムの安定維持への支障など、さまざまな問題が一層顕在化する。これは、IT の組織・ヒトが、グループ全体の成長戦略や事業継続性そのものを阻害する大きなリスク要因となることにほかならない。

 成人病と同様に、自覚症状がないまま問題が深刻化していく可能性が高いため、「うちは大丈夫」と思っている企業も早期に客観的な分析・診断を行い、壁の数や高さ、克服の可能性を評価することが求められる。

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