コラム
» 2004年12月28日 02時00分 UPDATE

ITソリューションフロンティア:トピックス今後、普及が予想されるリッチクライアント

リッチクライアントは、Webシステムとクライアントサーバーシステム双方の利点を兼ね備えた次世代のクライアント技術として、注目されている。野村総合研究所(以後、NRI)はこのほど、「リッチクライアントに関するユーザー意識調査」を行ったが、現時点において、リッチクライアントは、どのように受け止められているのであろうか。

[田中達雄,野村総合研究所]

注目を集めるリッチクライアント

 昨年あたりから、IT関連の各種メディアで、「リッチクライアント」という言葉が頻繁に使われるようになってきた。最近では、多くのベンダーから“リッチクライアント製品”なるものも提供されはじめている。

 しかし、リッチクライアントという概念は、まだ一般に定着してはいない。なかには、リッチクライアントと聞いて、従来型の“クライアントサーバーシステム”のクライアントをイメージする人もいる。

 そこでまず、リッチクライアントの定義を明確にしておく。本稿で「リッチクライアント」と言った場合、(1)高い表現力を備える、(2)高い操作性を容易に実現できる、(3)容易に配布することができる、(4)クライアント側のリソースを有効に活用できる、という4つの特徴を備えた「Webアプリケーション用のクライアント(あるいは技術)」を指すものとする。

 近年、開発されているシステムは、Web ブラウザベースのアプリケーションシステムが中心である。これは、配布やインストールの手間がほとんどかからず、コスト的にも優れているというメリットがあるからである。

 しかし、従来、この方式(以後、リッチクライアントと区別するため、従来のものを「HTMLクライアント」と呼ぶ)では、ユーザビリティを高めることができなかった。

 Webブラウザが登場する以前、主流だったクライアント技術は、「VisualBasicなどを開発言語としたクライアントサーバーシステムのクライアント(以後、「ファットクライアント」)」である。こちらは、高度なユーザビリティを実現することができるものの、配布やインストールといった運用コスト面に難を抱えている。

 このように、これまでの、HTMLクライアント、ファットクライアントには、それぞれ一長一短があった。この点、リッチクライアントは、HTMLクライアントと同じWeb アプリケーション用のクライアントであるが、「配布を含む運用容易性」を損なうことなく、ファットクライアントなみの「高度なユーザビリティ」を実現できる。このため、大いに注目を集めているのである。

普及が予想されるリッチクライアント

 このように大いに注目されるリッチクライアントであるが、現時点における評価、市場ニーズはどうなっているのであろうか。

 NRIでは、2004年3月15日から4月2日にかけて「リッチクライアントに関する市場アンケート調査」を実施した。アンケートは、無作為に抽出した国内企業約2,000社に郵送で調査票を送付し、275社から回答を得ることができた。

 この調査結果により、まず、現在のクライアント方式は、「リッチクライアント」が14.4%、「HTMLクライアント」が30.5%、「ファットクライアント」が39.4%、その他が15.7%の利用率であることがわかった。

 「リッチクライアント」の内訳は、「HTML クライアントから移行したもの」が12.9%、「ファットクライアントから移行したもの」が24.0%、「新規開発されたもの」が50.6%、その他が12.5%となっていた。

 ファットクライアントからの移行実績がHTMLクライアントからの移行実績と比べて高いのは、生産性低下の懸念から、HTML クライアントへの移行を決断できなかった企業が多かったためと推察される。

 また、リッチクライアントへの移行を検討中の企業をあわせて考えれば、リッチクライアントは、1〜2年後現在の2 倍程度の規模(全体の約28%)に拡大しているものと予想される。現在、移行を検討中のものは、社内基幹系業務の非Webシステムが38.1%と最も高い。Web化が進む昨今、ユーザビリティを落とせないため、いまだクライアントサーバーシステムを使用している企業は多い。これらの企業が、リッチクライアントの登場によって、ようやくWeb化に踏み切ろうとしているということであろう。

懸念材料は開発に関わる部分の未成熟

 リッチクライアントにメリットがあることは明らかであるが、いかなる点が懸念材料となるのであろうか。

 今回の調査結果をみる限りでは、「開発環境」、「設計手法」、「人材」といった、開発に関わる部分で未成熟であることをあげる企業が多かった。これまで有望視されながら消えていった多くの技術がそうであったように、開発に関わる部分が未成熟では、なかなか普及しない。メリットだけに目を奪われるのではなく、デメリットとされる部分に対して、各技術やソフトウェア製品が、リッチクライアントにいかに対応していくかを見極めることが大切であると言える。

 この点、今後登場する「MXML」、「XAML」といったマークアップ開発言語は、XMLをベースとしている。従来からWeb画面作成の主流であったHTMLもXMLの一種であることから、これらの言語がリッチクライアントの開発を容易にしてくれることが予想される。こうした技術やソフトウェア製品の普及が、人材不足や開発環境の未成熟といった問題を解決してくれると期待している。

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